
interview
<事例紹介:株式会社grooves Crowd Agent(クラウドエージェント)事業責任者 根来 啓輔様>
新規事業のグロースフェーズにおいて営業・マーケ組織の内製化とアウトソーシングのハイブリッド体制を採用した狙いとその成果

新規事業の急成長期には、マーケティングやセールスの投資に対する効果が従来通りの水準とならないことがあります。また、事業規模が大きくなることに伴いマーケット変化の影響も受けやすくなります。そういった不透明な要素のある急成長期において、従来通りの水準を前提に、マーケティング・セールス体制を内製してしまうと、期待通りの受注率が出なかった場合や大きなマーケット環境変化が生じた場合、軌道修正を図る難易度が高くなってしまうというリスクがあるとも言えます。
株式会社grooves(グルーヴス)の手がけるCrowd Agent(クラウドエージェント)は、8,000件以上の求人を今すぐ使える人材紹介会社向けクラウドサービスです。サービスは順調に成長を続け、更なる急成長を目指すフェーズにて、環境変化への対応や外部知見を活用して営業組織強化をすることを目的にプロセルトラクションにフィールドセールスのご相談をいただき、さらにその後はアウトバウンドマーケティング業務にも拡大して依頼をいただきました。
セールス・マーケティングのアウトソーシングを決断した経緯と、その取り組みの成果について事業責任者の根来様に、プロセルトラクションの代表・長谷川裕樹が伺いました。
1.内外の環境変化への対応力強化と営業力標準化を目的にアウトソーシングの活用を選択
- 長谷川:
- お忙しい中、貴重なお時間をありがとうございます。まず簡単に御社の事業内容をご紹介いただけますか。
- 根来:
- はい、私どもGroovesは「はたらくヒトと、 未来を拓く。」をビジョンに、全国の人材紹介会社と求人企業をつなぐクラウドサービス「Crowd Agent(クラウドエージェント)」とITエンジニアに特化した、スキルアップ・キャリアアップ支援プラットフォーム「Forkwell(フォークウェル)」の2つの事業を展開しております。私は、クラウドエージェントの事業責任者をしております。全国の人材紹介会社様のネットワーク化と求人のデータベース化を加速し、現在では、求人数・導入数においてNo.1のクラウドサービスまで成長しました。
- 長谷川:
- ありがとうございます。最初弊社にご依頼いただいたのは、フィールドセールスでした。その後アウトバウンドでコールドリストに対するBDRから、セミナーに参加された方へのSDRなど幅広く担当させていただきましたが、もともとどのような課題感がきっかけでご依頼いただいたのでしょうか。
- 根来:
-
私たちはSaaSとして月額利用料などをいただいているのですが、そのカスタマーエクイティ、LTVが一定水準以上の見通しが立ったフェーズで、更に新規導入社数を伸ばしてMRRをグロースしていこうという段階でした。新規導入社数拡大に向けて、マーケティングの投資を増やしてリード数・商談数を増やしていくわけなのですが、そのリード・商談数の増加と比例して、受注数も拡大できるかでいうと、確証を持ててはいませんでした。理由としては、まだ商談の勝ち筋というのが明確に確立できていなかったためです。したがって、商談機会をどんどん増やして、それに対応するセールス社員を新規採用して増やすという手段はリスクが大きいと判断しました。
そこで、事業の状況に応じて機動的に事業判断をできるようアウトソーシングして変動費化する選択肢がよいだろうと考えました。
ただし、単純にフィールドセールスを変動費化すればいいと考えたわけではありません。商談の勝ち筋を一緒に考えてくれ、それを標準化に向けて共に言語化してくれるパートナーを探しておりました。

2.営業組織構築の専門性と汎用性あるセリングスキルを持ち合わせたプロセルトラクションを選択
- 長谷川:
- ありがとうございます。そういった背景、課題感があるなかで、弊社を選んでいただいた理由はどのあたりになりますでしょうか。
- 根来:
-
いくつか選択肢があるなかで貴社を選んだ理由としては、大きく3つあります。
一つは、プロセルさんは新規事業の営業支援実績が豊富で、ディスカッションを通じて、営業体制や営業手法構築の専門性、ノウハウが豊富にあると感じました。そのノウハウをもとに、当社の営業を客観的に見てもらい、汎用性のあるやり方を構築できるのではと思いました。
二つ目は、アサイン候補者の営業の方が、経験豊富で業界や商材を問わない汎用性のあるセリングスキルを持った方だと感じておりました。当時の当社は、汎用性ある営業業務を定義できていなかったので、汎用性あるスキルを持った方でないと立ち上がりまでのスピードが長くかかってしまうという懸念がありましたが、その方であればこの懸念は少ないと感じたためです。
三つ目は、更なる事業成長に向けて、新たな顧客セグメントの開拓や高LTV・高受注率の相性の良い顧客セグメントの開拓には、アウトバウンドマーケティングをやっていく必要性を感じておりました。プロセルさんは、アウトバウンドマーケティングのソリューションもあり、次の展開としてアウトバウンドマーケティングを試みるときにもご対応いただけるということも大きな選択理由となりました。
3.営業力標準化に向けて、実際の営業活動を通じて得たTipsや課題からプロセスの再設計とプロセスごとの業務設計を実施
- 長谷川:
- 非常に有難いお言葉、痛み入ります。そのような背景とご期待に対して、まず取り組んだことは、弊社営業メンバーが営業活動を通じて、プロセスにおける課題感や商談におけるTipsなどを抽出して、あるべきプロセスや商談での必ず押さえなけれけないポイントや注意ポイントを言語化して、貴社営業チームの方々とともに整理、汎用化していくことに取り組みました。
- 根来:
- この取り組みは大変有難いものでした。当時、社内のセールスチームには、人材業界で営業経験のあるメンバーが中心で、人材業界に対する知見は豊富でも、クラウドサービスの性質とマッチしたセリングスキルを持ち合わせたメンバーが揃っていたかというと決してそういうわけではありませんでした。そういったチーム編成のなかで、貴社のようにSaaS製品を中心に多くの業界で様々な商材の営業経験に基づいた知見、見解によるご意見は、営業力の標準化に向けて非常に重要なものだったと思います。
- 長谷川:
- ありがとうございます。当時、個人で圧倒的に成績を上げているセールスパーソンがいらっしゃったと記憶しています。その方はハイパフォーマンスでも、プロセスやセールスTipsなどを言語化したり、他のセールスメンバーに落とし込めなければ強い組織は作れないとお考えだったのですよね。
- 根来:
- おっしゃる通りです。営業行為は属人化してしまう部分もあるとは思いますが、個人で成果をあげても、他のメンバーが再現できるように標準化、ナレッジマネジメントができなければ、なかなか事業全体のグロースは困難です。プロセルさんは、スタートアップや新規事業立ち上げフェーズにおける営業体制構築から、商品のPMF検証も含めて経験・知見が豊富でした。私たちは人材業界の顧客課題には詳しく、商習慣にも精通していましたが、その分「業界の常識に囚われやすい」というデメリットも持っていました。ここにどんなBtoBプロダクトにも共通するような汎用的ナレッジやスキルを注入してもらえたのが大変助かりました。
- 長谷川:
- 最初にフィールドセールスとして弊社がアサインしたメンバーは、多くの業界で多様な商材の営業経験が豊富で、かつ営業コンサルティングの経験もある人材でしたので、業界を問わず汎用性のある営業スキルが有効だろうと期待して送り出しました。実際に御社の期待にもお応えできたのではないでしょうか。
- 根来:
-
結果は素晴らしいの一言でした。セールスパーソンとして、営業プロセスや成果に取り組む姿勢から吸収できることは本当に多かったです。導入決定いただくまでの商談期間が長い商材なのですが、導入にいたるまでコンサルティングという姿勢でやっていらっしゃいました。BtoB営業の基本とも言えるBANTを徹底することや、決済フローのチェック、把握しておくべき情報の取捨選択、意思決定に向けたサポートや顧客ナーチャリングの大切さを見せていただいた思いです。
ある意味で、業界の知識や商習慣よりも、やるべきことを自身またはチームマネジメントで管理すればこれだけ成果が変わると分かったのは本当にありがたかったです。
- 長谷川:
- お褒めいただきありがとうございます。根来様がお感じになった通り、セールスのプロフェッショナルとして、受注、失注の結果に対して「なぜその結果が出たのか、原因を徹底的に追求し、効果的な打ち手に繋げる」セールスパーソンが揃っているのも弊社の強みだと思っています。

4.アウトバウンドマーケティングを強化する判断材料として、プロセルトラクションがエコノミクスを証明
- 長谷川:
- その後、弊社にコールドリストへのBDRと、一部SDRのご依頼も新たにいただきました。それ以前はインバウンドマーケティングによって獲得したリードへのSDRのみ自社で行われていたのでしょうか。
- 根来:
- そうですね。当時はデジタルマーケティングや広告プロモーションを駆使して、インバウンドリードの獲得は順調にいっておりました。しかし、さらなる導入社数の獲得やターゲティング企業へのアプローチを考えると、インバウンドリードだけでは不十分な状態ではありました。そこで御社に相談して、ターゲティング企業へのアウトバウンドコールをスタートさせて、リードジェネレーションをより活性化させていく方針にしました。御社がターゲティング企業をリストアップして、すぐにアウトバウンドコール(BDR)を開始してくれましたよね。
- 長谷川:
- はい、これまでの受注実績から数多ある人材紹介会社様のなかでも相性の良いセグメント仮説を複数立てて、アプローチしていきました。結果的にコストパフォーマンスの高いセグメントを見つけ出せたので「もっとアウトバウンドを広げていこう」という御社の方針が決まり、継続してご依頼もいただきました。
- 根来:
-
アウトバウンドセールスについても、御社にエコノミクスを検証していただいたのが大きかったと思います。アウトバウンドでセールスした場合の獲得効率がどれほどかも分からない、ビジネスファネルが明確になっていない状況下で、いきなり専門のインサイドセールスチームを組織して内製化するリスクはかなり高いと言わざるを得ません。それにもし、機能しなかったらせっかく採用したチームを解散して、その人材を持て余してしまう可能性さえあります。
しかし、検証するにはそれなりの商談サンプル数が必要ですが、それだけの業務ボリュームを社内で捻出するのも難しかったわけです。なおさら貴社のように実行力と検証力を兼ね備えたパートナーが必要でした。
- 長谷川:
- 結果的には弊社が成果をお示しできたことで内製化にこぎ着けたのですよね。
- 根来:
- はい、おかげさまで内製化しています。アウトバウンドでリーチしたお客様から期待通りの受注を獲得するのは簡単ではありませんが、現在のところうまく回っています。

5.マーケット環境は常に変化する。その環境変化に機動的に対応できる組織力の強化を目的としたアウトソーシングの活用
- 長谷川:
- Grooves様は今後、さらなる成長フェーズに入っていかれるかと思います。そうなると一般的なスタートアップ企業様のようにマーケティング、セールスともに内製化を進める戦略を採用されるのでしょうか。
- 根来:
-
今後も内製する部分と、御社のような外部のパワーをお借りする部分のバランスが重要かなと個人的に思っています。一昔前なら、新しいサービスがある程度PMFして、売れる道筋ができたら体制を内製化して組織を厚くするのは、経済的にも理にかなったオーソドックスなモデルだと思いますが、スケールするフェーズになったから、やみくもに内製化すればいいかと言うと、そこには違和感があります。
順調に事業がグロースハックできても、市場の競争環境や法改正などの外部環境変化が起こったときに、内製のみだとその変化に対応しにくくなる可能性がありますよね。ですから単一のサービスを売る能力のある人材を増員し続ける、雇い続けるよりも、スマートなチーム作りがひとつの答えかなと思っています。ある市場にリーチして飽和時期が来たら、次のマーケット検証に踏み出し、ピボットしなければならないタイミングが必ず来ますので柔軟に対応できなければなりません。
- 長谷川:
- とても重要なご指摘ですね。内製化すれば短期的なコストが安いと思われがちですが、常に環境変化に敏感でなければならないマーケットの場合は、柔軟性や機動力を養う必要があるということですよね。ただし内製化にこだわりすぎると、アジャイルな組織とは言えず肥大化してしまう恐れもあるからこそ、私どものような外の力をうまく利用すると変化対応力につながるということですね。
- 根来:
- それに人材の流動性が高まっていることも、組織としては避けて通れない課題だと思います。今はジョブ型にもなってきていて、組織の都合だけで担当する仕事やサービスを転換するのも難しいです。それで離職となると、採用や育成にかかったコストは無駄になってしまいます。ですから人材の固定化を前提にすること自体がリスクになり得るので、ある程度の流動性や柔軟性を持たせるために、御社のようなパートナーとのお付き合いはこれからも本当に重要だと捉えています。
- 長谷川:
- おっしゃる通りだと思います。今後も御社の変化するニーズに柔軟に対応して参ります。それに、これから新規事業を立ち上げるタイミングでも、ぜひ一緒にスケールさせていただけたら幸いです。
- 根来:
-
こちらこそお願いします。商品やサービスの形は変わっても、弊社のカルチャーやミッションバリューの根幹は変わりません。パートナーとして協力をお願いする際、こうした弊社の理念をご理解いただいている前提があれば、サービスの変更や拡張性があった場合もお互いにやりやすいので、お願いしやすいと思っています。
単純に「アポイント取り」だけお願いをする会社には真似できないポイントですよね。ぜひ、今後もより強いパートナーシップを期待しております!
- 長谷川:
- 貴重なお話と、ありがたいご評価に感謝しております。今後もぜひよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。