金融機関のエンタープライズ開拓で、手書きレターを起点に、期待を上回る3割超の反応を獲得
1. 事例サマリー
| クライアント規模 | 大企業 |
|---|---|
| クライアント業種 | IT・通信 / 金融・保険 |
| 事業フェーズ | 新規事業立ち上げ |
| 対象プロダクト | 各社の業務に合わせたAIソリューションを設計・構築するコンサルティングサービス 需要予測、予測分析、機械学習の業務実装などを提供 |
| 提供ソリューション | ABM(キーマンリサーチ/セールスレター/フォローコール) |
| 直面していた課題 | ①ターゲットが上場企業クラスの金融機関に限られ、母数が数十社規模しかない ②電話は受付でブロックされ、フォームは総合窓口で止まる ③AI・DXを管轄する部署とキーマンが、社外からは見えない |
| 実施した施策 | ①1社ごとに管轄部署とキーマンを人的リサーチで特定 ②AI・DX活用の余地がある業務まで踏み込んだ手書きレターを個社別に作成 ③到着後のフォローコールで接点化 ④獲得した直通番号を資産として蓄積 |
| 主要な成果 | ①送付先の3割を超える企業から反応を獲得し、受注にも到達 ②担当者の直通番号を取得し、他案件でも使える接点資産を構築 ③断りの場合でもご連絡いただける関係を構築 |
2. ご依頼の背景:3つのボトルネック
クライアントは、大手グループ企業のなかでAI・DXコンサルティングを展開されている事業部門です。業種を問わず提供できるサービスですが、当時は金融機関での実績が多く、銀行・カード・保険といった金融系の大手企業に向けた開拓を強化したいという状況でした。
選定にあたっては、以下の点をご評価いただきました。
- 電話やフォーム以外の接触手段を、実行まで含めて設計できること
- 部署・キーマン・連絡先の特定を、人的なリサーチ体制で担えること
クライアントの課題としては以下の通りです。
2-1. ターゲットが限られ、母数が数十社規模しかない
対象は上場企業クラスの金融機関です。この条件で絞ると、リストは数十社規模にしかなりません。通常のアウトバウンドであれば「量を当てて確率で拾う」設計が成立しますが、母数そのものが限られているため、1社の取りこぼしが成果に直結する構造がありました。
また、電話でアプローチしても、リストはすぐに一巡してしまいます。
2-2. 電話は受付でブロックされ、フォームは総合窓口で止まる
大手金融機関では、新規営業の電話は受付で一律にお断りされる運用が一般的です。「新規営業のお電話はお断りしております。お問い合わせフォームからお願いします」と案内されますが、そのフォームは総合窓口であり、実際に検討しうる部署へは転送されません。
通常の接触手段が、どちらも構造的に機能しない状態でした。
2-3. AI・DXを管轄する部署とキーマンが、社外からは見えない
大手企業では、AI活用やDX推進を担う部署の名称も位置づけも各社で異なります。情報システム部門にある場合もあれば、経営企画やDX推進室として独立している場合も。
誰に届けるべきかが分からないまま送っても、社内で止まります。まず「誰宛か」を特定するところが最初の関門でした。
3. 実施した4つの営業戦略
3-1. 【戦略①】1社ごとに管轄部署とキーマンを人的リサーチで特定する
母数が限られている以上、1社あたりにかける工数を増やすほうが合理的です。当社グループのリサーチ体制を使い、対象企業を1社ずつ調べました。
- AI活用・DX推進を管轄している部署の特定
- その部署の責任者クラスのキーマンの特定
- 郵送先および連絡先の特定
当時はAIによる調査ツールが十分に普及しておらず、この工程はほぼ人力で行いました。リストを買うのではなく、1社ずつ作るという進め方です。
3-2. 【戦略②】業務に踏み込んだ手書きレターを個社別に作成する
特定したキーマン宛に、手書きのレターをお送りしました。ここで重要だったのは、サービスの説明ではなくその企業の業務のどこにAI・DX活用の余地があるかを書いたことです。
- 対象企業の事業内容から、AI・DXの活用余地がある業務を特定
- その業務がどう改善されうるのかを具体的に記述
- 同様の課題を解決した事例を添えて、イメージを持っていただけるように
「弊社はこういうサービスを提供しています」ではなく、「御社のこの業務は、こう変えられます」という内容にしたことで、受付ではなく検討者本人に読まれる状態をつくりました。
3-3. 【戦略③】到着後のフォローコールで接点化する
レターは送って終わりではありません。到着のタイミングを見てフォローコールを行い、内容についてお話しできる状態をつくりました。
レターがすでに届いている状態での架電は、まったくの新規架電とは受付での扱いが変わります。手紙を接触の口実として使うことで、電話単体では越えられなかった関門を通過できるようになりました。
3-4. 【戦略④】獲得した直通番号を資産として蓄積する
この取り組みの副次的な効果として、担当者の直通番号や、部署につながる本社番号を取得できたことがあります。
- 反応があった企業からは、担当者本人にご連絡をいただけるケースがあった
- 見送りとなった場合でも、その旨のご連絡をいただけることがあった
- 案内に記載したフォームや日程調整のURLから、直接アクションをいただけた
これにより、通常であれば決して手に入らない大手金融機関のキーマンへの直接の接点が、リストとして残りました。この接点は、その後の別案件におけるアプローチでも活用できる資産になっています。
4. 導入効果
4-1. 定量的な成果
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 反応率 | 送付先の3割超から反応を獲得 |
| 受注 | 商談を経て受注にも到達 |
| 副次成果 | 大手金融機関のキーマン直通連絡先を獲得 |
4-2. 定性的な成果
- 電話・フォームが機能しない大手金融機関に対して、接触可能な手段を確立
- サービス説明ではなく「その企業の業務課題」から書くレターの型を構築
- 断りの連絡すらいただける関係性を築き、次の提案機会につながる状態に
- 母数が限られるエンタープライズ開拓において、1社あたりの工数を厚くする設計の有効性を実証
5. よくあるご質問(FAQ)
Q. 大手金融機関のような、電話が通らない相手にはどうアプローチしますか?
A. セールスレター(手紙)を起点にした接触を設計します。受付で一律にブロックされる電話や、担当部署に転送されない総合窓口フォームと違い、キーマン本人宛に届いた手紙は読まれる可能性があります。到着後のフォローコールと組み合わせることで、接点化までを一連の流れとして設計します。
Q. 手紙の内容はどのように作りますか?
A. サービスの説明ではなく、その企業の業務のどこに改善余地があるかを書きます。事業内容を調べたうえで、AI・DXの活用余地がある業務を特定し、どう変わりうるのかと、同様の事例を添えます。1社ごとに内容が異なるため、パーソナライズの精度がそのまま反応率に反映されます。
Q. ターゲットが数十社しかない場合でも支援を受けられますか?
A. むしろセールスレターが最も適した状況です。母数が限られている場合、量で確率を取る設計は成立しません。1社あたりにかける工数を厚くし、部署とキーマンの特定から個社別の文面作成まで丁寧に行うほうが、結果として成果につながります。
Q. キーマンの特定はどのように行いますか?
A. 公開情報を広く調べる、公式サイトを深く読み込む、社員紹介や登壇情報を個別に当たるという複数の系統を同時に走らせます。1本のリサーチ手法では取りこぼす人物や部署を拾うためです。現在はAIによる調査も組み合わせていますが、最終的な精度は人による確認で担保しています。