潜在ニーズの掘り起こしとは、課題を自覚していない相手が自ら気づくよう判断材料を渡す営業手法です。電話をかけても「今のところ困っていない」と断られる。商談で丁寧にサービスを説明したのに「良いお話でした」で終わってしまう──以前は受注できていた訴求が、急に通用しなくなったと感じる営業組織は少なくありません。その原因の多くは、相対する相手が「課題を自覚している層」から「課題を自覚していない層」へ移っていることにあります。本記事では、不動産仲介会社向けの反響対応支援を題材に、①テレアポで「話を聞く価値がある」と思わせる3つのフック、②新規商談でサービス説明の前に約17分を投資する6つの手順、③「困っていない」「内製でいい」「他社で足りている」への返し方を、トーク例を交えて解説します。

最終更新: 2026年10月

この記事の目次

なぜ今、潜在ニーズ層へのアプローチが必要なのか──3つの理由

まずは、なぜ従来の営業が通用しにくくなっているのかを整理します。原因は営業担当者の力量ではなく、相手の状態が変わったことにあります。

理由1:顕在ニーズ層への提案が一巡すると、サービス説明が刺さらなくなる

新しい商材を市場に投入した直後は、課題をすでに自覚している企業が一定数存在します。不動産仲介会社向けの反響対応支援を例にとると、次のような声を持つ企業です。

  • 「問い合わせに対応できる人がいない」
  • 「対応が遅れて競合に取られている」
  • 「追客が回らず、契約率が落ちている」

こうした顕在ニーズ層は課題を自覚しているため、サービスの内容を分かりやすく説明するだけで受注につながります。しかし、この層への提案が一巡すると、残るのは次のような企業です。

  • 「今のところ自分たちで回せている」
  • 「そこまで急いで対応する必要は感じない」
  • 「外に出すより、営業に頑張ってもらった方がいい」

課題を自覚していない相手に、課題の解決策であるサービスを説明しても刺さりません。顕在ニーズ層と同じトークを続けている限り、反応率は下がり続けます。

比較軸顕在ニーズ層潜在ニーズ層
課題の自覚ある(解決策を探している)ない(「今のところ回せている」)
典型的な声「対応できる人がいない」「競合に取られている」「急ぐ必要は感じない」「営業に頑張ってもらいたい」
有効な営業サービス内容を分かりやすく説明する業界の事実・他社の実態・相手自身の数字を渡し、自分で気づいてもらう
通用しない営業(説明だけで受注につながりやすい)サービス説明から入る、「お困りではないですか」と聞く

理由2:「困っていない」の正体は、3つの「知らない」

潜在ニーズ層が「困っていない」と答えるのは、嘘をついているからでも、見栄を張っているからでもありません。多くの場合、判断材料を持っていないだけです。先ほどの例でいえば、次の3つを知らない状態にあります。

  1. 機会損失が見えていない:問い合わせの件数自体は減っていないため、取りこぼしている実感がない
  2. 競合の動きを知らない:売主が複数社に同時に査定を依頼し、他社が数分で連絡している前提が抜けている
  3. 採用できる前提に立っている:業界全体で離職者が入職者を上回り、増員で対応力を上げることが難しくなっている事実を知らない(不動産業・物品賃貸業の2024年の離職者は12.2万人で、入職者11.3万人を上回る。出典: 厚生労働省「令和6年雇用動向調査」)

つまり相手の「困っていない」は、現状を正しく把握したうえでの結論ではなく、材料がないまま下された判断です。だからこそ、否定ではなく情報提供によって判断を揺らすことができます。

理由3:潜在層は「説得」ではなく「自分で気づいたとき」に動く

判断材料を持たない相手に対して、営業側が「御社は対応が遅いはずです」「困っているはずです」と主張しても、反発を招くだけです。人は他人から指摘された課題よりも、自分で気づいた課題に対して行動を起こします。

そのため、潜在ニーズ層に対して営業がやるべきことは説得ではありません。相手が自分で気づくための材料を渡すことです。

  • 業界の事実:市場・競合・採用環境の変化
  • 他社の実態:同じように「回せている」と考えていた会社で起きていたこと
  • 相手自身の数字:初動の時間、訪問査定率、契約率など

その先の判断は、あくまで相手に委ねます。この姿勢が、潜在ニーズの掘り起こしのすべての土台になります。

テレアポと新規商談では「戦い方」を分ける──SPINの4ステップで役割を分担する

同じ「潜在ニーズの喚起」でも、テレアポと新規商談では持ち時間がまったく違います。同じトークを両方で使うと、どちらも失敗します。

持ち時間とゴールが違えば、やることも違う

テレアポと新規商談の違いは、次のように整理できます。

比較軸テレアポ新規商談
持ち時間30秒〜1分30〜45分
ゴール「一度話を聞いてみるか」と思わせる「これは変えないとまずい」と思ってもらう
やること興味のフック1つと質問1つ事実共有、問題提起、示唆、打ち手の比較
SPINの担当範囲S(状況)とP(問題)の入口までS〜N。I(示唆)に最も時間を使う
やってはいけないことサービス説明を始める、情報を詰め込む(電話が長くなって切られる)いきなりサービスを説明する、必要性が伝わる前に価格を提示する
場の位置づけ入口をつくる場必要性をつくる場

よくある失敗は、テレアポで商談の役割まで背負おうとすることです。電話口で必要性を納得させようとして説明が長くなり、相手が身構えて断られる。あるいは、アポイントを取ることに集中しすぎて、商談の冒頭でも電話と同じ浅い話を繰り返してしまう。どちらも、場面ごとのゴールが曖昧なことが原因です。テレアポは「入口をつくる場」、商談は「必要性をつくる場」と明確に分けることで、それぞれのトークが短く、鋭くなります。

人が「変えよう」と思うまでの4ステップ

潜在ニーズ層が行動を変えるまでには、段階があります。ここでは、営業手法として知られるSPINの考え方に沿って4つのステップで整理します。

  1. S(状況)事実を知る:市場・競合・採用の変化を伝え、「そんなに変わっているのか」と感じてもらう
  2. P(問題)自分事になる:自社に当てはめて考えてもらい、「うちはどうなんだろう」と思ってもらう
  3. I(示唆)損失を認識する:放置した場合の金額やリスクを示し、「これは放っておけない」と感じてもらう
  4. N(解決)打ち手を比べる:増員・ツール導入・外部委託を比較し、「では何をすべきか」を整理する

この4ステップを、テレアポと商談で分担します。テレアポでやるのはSとPの入口だけです。「そんな状況なんだ」から「うちはどうだろう」まで持っていければ十分です。一方、商談ではIに最も時間を使います。SPINの4つの質問それぞれの役割と基本的な使い方は、顧客の課題を引き出す「SPIN営業」を知り業績向上につなげようで詳しく解説しています。

潜在層を動かすのは「示唆(I)」の段階

4つのステップのうち、潜在ニーズ層を動かす決め手になるのはIです。多くの商談がうまくいかないのは、Sで市場の話をした後、Iを飛ばしてNのサービス説明に進んでしまうからです。

Iを飛ばすと、相手の中では「良い話を聞いた」で終わり、自社の課題として認識されません。放置した場合に何をどれだけ失うのかを相手が自分で認識して、はじめて解決策としてのサービス説明に耳を傾けてもらえます。「このままだとどうなるか」を相手自身に考えてもらう問いかけの具体例は、アナログ業界へのデジタル化提案で示唆質問とリスト優先順位付けによりアポ獲得率35%を実現した設計術も参考になります。

テレアポ編──30秒で「話を聞く価値がある」と思わせる3原則と3つのフック

ここからは、テレアポで潜在ニーズ層からアポイントを獲得するための具体的な進め方を解説します。

潜在層に刺すための3原則

テレアポで潜在ニーズ層に向き合う際は、次の3原則を守ります。

  1. 売り込みではなく「状況確認」で入る:「サービスのご案内です」と言った瞬間に断られます。「問い合わせ対応のご状況を伺っています」という情報収集の立場で入ります
  2. 相手の困りごとを先に言わない:「お困りではないですか」と聞けば「困っていません」で終わります。困りごとは「他社で起きていること」として提示し、相手自身に当てはめてもらいます
  3. 情報を詰め込まず、質問で終える:電話で必要性をすべて作ろうとしないことです。「うちはどうだろう」と思わせたら、その先は商談に委ねます

テレアポのゴールは、必要性を理解させることではなく、必要性を考えてみたいと思わせることです。ここを取り違えると、電話が長くなり、途中で切られてしまいます。

「今のところ困っていない」に返す3つのフック

潜在ニーズ層からほぼ確実に返ってくる「今のところ困っていない」という反応に対しては、3つのフックが有効です。

フック①:業界の変化を伝える(S)

「そうなんですね、それは良い状態だと思います。ちなみに最近は、売主様が複数の会社に同時に査定を依頼されるのが一般的になっていて、初動のスピードで依頼先が決まってしまうという声を各社様から伺っております。御社では、問い合わせが入ってから最初のお電話まで、だいたいどのくらいでしょうか」

フック②:他社の事例を借りる(SからPへ)

「実は『うちは回せている』とおっしゃっていた会社様でも、数字を出してみたら、電話はつながっているのに訪問査定に結びついていないケースが多くありまして。御社では、問い合わせからの訪問査定率をどのくらいで見ていらっしゃいますか」

フック③:採用や人の話から入る(P)

「問い合わせ対応は営業の方が兼務されている形でしょうか。今は業界全体で入職者より離職者の方が多い状況で、増員して対応力を上げるのが難しくなっています。そのため、対応の仕組みを外部に持つ会社様が増えています」

3つのフックに共通するのは、「御社は遅い」「困っているはず」とは一言も言っていない点です。業界や他社の事実を置き、最後は質問で返しています。相手が自社の数字を口にしたら、そこが商談の入口になります。

フックSPINの段階置く材料最後の質問向いている相手
①業界の変化を伝えるS売主の同時査定依頼と、初動の速さで依頼先が決まる実態最初の電話までの時間現場の担当者
②他社の事例を借りるSからPへ「回せている」会社でも訪問査定に結びついていなかった事例訪問査定率現場の担当者
③採用や人の話から入るP離職者が入職者を上回り、増員が難しい採用環境対応体制(兼務かどうか)経営者・責任者

フックは3つすべてを一度の電話で使う必要はありません。相手の反応や役職に応じて、1つを選んで置くのが基本です。

  • 現場の担当者が出た場合:対応時間や訪問査定率など、日々の業務に近いフック①②が答えやすい
  • 経営者や責任者が出た場合:人員計画に関わるフック③の方が関心を引きやすい
  • 一つ目のフックへの反応が薄い場合:無理に深掘りせず、別の角度のフックを一つだけ試す

相手の役職や反応ごとに置くフックを作り分けるという発想は、リードセグメント別スクリプト作成・改善スキームと同じ設計思想にあります。

アポの理由を「情報提供」に置き換えて締める

潜在ニーズ層は、サービス説明を聞く時間には価値を感じません。しかし、自社の判断材料になる情報には時間を使います。そのため、アポイントの理由をサービス説明ではなく情報提供に置き換えて打診します。

「本日は急にご連絡しておりますので、先に資料をメールでお送りします。そのうえで、資料には載せきれない、問い合わせの経路ごとの実測データを担当からお伝えできればと思うのですが、今週か来週で30分ほどお時間をいただけないでしょうか」

アポイントを打診する際は、商談でのシミュレーションの精度を決める次の4項目を必ず確認します。

  1. 現在の問い合わせ件数
  2. 利用中の集客経路
  3. 対象エリア
  4. 決裁権の有無

なお、アポ率や契約率などの実績値は、電話では語りすぎないことです。「そうしたデータがある」に留め、商談で文脈をつけて伝える方が効果的です。架電で得た情報をそのまま商談の設計に引き継ぐ流れは、ABM設計〜テレアポ代行の一気通貫と同じ構造にあります。

テレアポでの潜在層への切り口づくりや、アポイントの質を高める架電設計にお悩みの場合は、プロセルトラクションのBDR代行(ABM設計〜テレアポ代行)にご相談ください。

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新規商談編──サービス説明の前に「約17分」を投資する6つの手順

アポイントを獲得したら、次は新規商談で相手に「変えなければ」と感じてもらう段階です。ここでの鍵は、サービス説明に入るまでの時間の使い方にあります。

SPINの順序で時間を配分する6つの手順

潜在ニーズ層との商談では、冒頭からサービスを説明しません。SPINの順序に沿って、次のように時間を配分します。

  1. S:市場は拡大している(約2分):中古物件の流通が拡大し、売り物件も増えていることを伝え、「チャンスは増えている」と感じてもらう
  2. S:選ばれ方が変わった(約2分):売主が依頼先を選ぶ決め手は、査定額よりも対応の質と連絡の早さであることを伝える
  3. P:増員では追いつかない(約2分):離職者が入職者を上回る状況を示し、「人を採ればいい」が通じないことを共有する
  4. P:初動の競争と質問(約3分):初動のスピードで成果に大きな差が出ることを伝え、「御社は何分ですか」と問いかける
  5. I:悪循環と機会損失(約5分):放置した場合に起きる循環と、失っている金額を可視化する
  6. N:打ち手の比較(約3分):増員・ツール導入・外部委託のそれぞれで何が解決するかを整理する
段階伝えること目安時間相手に生まれる感覚
S(状況)市場の拡大、売主の選び方の変化約4分「チャンスは増えている」「そんなに変わっているのか」
P(問題)増員の難しさ、初動の競争と自社の数字約5分「うちはどうなんだろう」
I(示唆)悪循環の構造と機会損失の金額約5分「これは放っておけない」
N(解決)増員・ツール導入・外部委託の比較約3分「では何をすべきか」
合計サービス説明に入るまで約17分サービス説明が「売り込み」ではなく「解決策」として聞かれる

冒頭にこの約17分を投資することで、後半のサービス説明が「売り込み」ではなく「解決策」として聞かれるようになります。SとPで「市場は良い」と安心させたうえで、Iで「でも取り込めていないかもしれない」と揺らす。この落差が、相手が動く動機になります。

問題提起は必ず「問い」で終える

Pの段階で最も大切なのは、事実を伝えた後に必ず問いで終えることです。たとえば初動の競争については、次のように伝えます。

「売主様は複数の会社に同時に査定を依頼されますので、最初のご連絡の早さがそのまま比較のスタートラインになります。目安として見ても、初動の差は大きいと言えます。ちなみに御社では今、問い合わせが入ってから最初のお電話まで、だいたいどのくらいでしょうか」

相手が自社の数字を口にした瞬間に、話は他人事から自分事に変わります。反対に、営業側が話し続けている間は、相手の中では何も動いていません。商談の主導権は、話す量ではなく、問いの質で握るものです。

相手から返ってきた答えは、その場で評価しないことも大切です。「30分くらいですね」と返ってきたときに「それは遅いですね」と言ってしまうと、相手は防御に回ります。「ありがとうございます、では他社様の状況と並べてみますね」と受け止め、後のIの段階で試算の材料として使う方が、相手自身に差を気づいてもらえます。

悪循環の提示と機会損失の金額化が最大の山場

Iの段階では、まず放置した場合に起きる悪循環を提示します。

「よくお聞きするのが、問い合わせを増やしたのに現場が疲弊して、売上が変わらないという状態です。問い合わせが増えると現場の負担が増え、対応の質と速度が落ち、契約率が下がり、また広告費を足す。どこかで断ち切らないと、広告費だけが増えていくことになります」

この悪循環は、次の5段階で回り続けます。

  1. 問い合わせを増やす
  2. 現場の負担が増える
  3. 対応の質と速度が落ちる
  4. 契約率が下がる
  5. 売上を補うために、また広告費を足す

続いて、機会損失を金額で可視化します。たとえば月の問い合わせ件数が同じでも、契約率が30%から45%に上がれば、そこから得られる手数料収入は1.5倍になります。裏を返せば、現状のままでは毎月その差額分を失い続けていることになります。

ここで重要なのは、試算の正確さではありません。「毎月どれだけの機会損失を抱えたまま経営判断をしているか」を相手に見えるようにすることです。そのうえで、相手企業の実際の数字を使った試算を提案すれば、次のステップへ自然に進めます。

「困っていない」「内製でいい」「他社で足りている」──3つの反論への返し方

潜在ニーズ層との会話では、典型的な3つの反論が返ってきます。いずれも否定せず、事実で返すことが基本です。

反論受け止め方返す材料提案するもの
①「今のところ困っていない」「良い状態だと思います」と肯定する接続率・訪問査定率を実際に測ったことがあるか実数を測る手伝い
②「内製で営業に頑張らせたい」営業担当者の努力を否定しない接客中・移動中に5分以内で折り返す難しさ、採用環境営業が商談に集中できる状態をつくる役割としての外部支援
③「他社を使っていて不満はない」乗り換えを迫らない接続率・訪問査定率・契約率の数値セカンドオピニオンとしての数値の見直し

反論①「今のところ困っていない」

この反論は否定せず、まず「良い状態だと思います」と受け止めます。そのうえで、数字で確認したことがあるかを尋ね、感覚と実数のずれに気づいてもらいます。

「電話の接続率や訪問査定率は、実際に測られたことはありますか。測ってみたら思ったより低かった、という会社様が多いんです」

感覚で「回せている」と答えている相手ほど、実数を確かめた経験がないケースが多くあります。測っていないことに気づいてもらうだけでも、検討の入口になります。実数を測る手伝いを申し出れば、相手にとっては売り込みではなく、自社の現状を知るための有益な機会として受け止められます。

反論②「内製で営業に頑張らせたい」

この反論に精神論で返すのは逆効果です。営業担当者の努力を否定せず、採用や稼働の事実で返します。外部の支援を営業の代わりではなく、営業が商談に集中できる状態をつくる役割として位置づけます。

「営業の方に頑張っていただくのは大賛成です。ただ、接客中や移動中に5分以内で折り返すのは、仕組みがないと難しいのが実情です。外部の対応窓口は営業の代わりではなく、営業の方が商談に集中できる状態をつくる役割だと考えています」

この位置づけで伝えると、営業組織の責任者にとっては「自分の部下を否定された」という感覚がなくなります。営業担当者を守り、その力を商談に集中させるための選択肢として、外部の支援を検討してもらいやすくなります。

反論③「他社を使っていて不満はない」

すでに他社のサービスを使っている相手には、乗り換えを迫りません。セカンドオピニオンとして、数値を見直す場を提案します。比較の土俵に乗ってもらうことが目的です。

「今の会社様を変える前提ではなく、接続率・訪問査定率・契約率を一度数字で並べてみませんか。続けるべきか、一部だけ補うべきかの判断材料になると思います」

3つの反論に共通する3つのルール

どの反論に対しても、次の3点を守ります。

  1. 相手の判断を否定しない:「困っていない」「内製でいい」という判断を、まず肯定して受け止める
  2. 正論で押さない:「早く対応すべきです」ではなく、事実と数字を置いて相手に判断を委ねる
  3. 必要性が伝わる前に価格を出さない:価格が先に出ると、比較検討の土俵にすら乗れない

反論への返し方を含め、潜在層との商談の進め方を見直したい場合は、プロセルトラクションのSDR代行(インサイドセールス支援)にご相談ください。

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潜在ニーズの掘り起こしを組織の型にする3つの運用

ここまでの手法は、特定の担当者のセンスに依存するものではありません。組織として型にすることで、チーム全体の成果を底上げできます。

効いているサインと、やってはいけないこと

潜在ニーズの掘り起こしがうまくいっているかどうかは、相手の反応で判断できます。

効いているサイン(検討が始まっている)検討を止めてしまう行動
相手が自社の数字を口にし始める相手の現状を否定する
「うちの場合はどうなるのか」と質問が出る「早く対応すべきです」と正論を押しつける
現場の不満や悩みを自ら語り始める必要性が伝わる前に価格を提示する

これらのサインと禁止事項をチームで共有し、商談の振り返りや通話録音の確認で使う観点にすることで、担当者ごとの品質のばらつきを抑えられます。

型を定着させる3つの運用

型を定着させるには、次の3つの運用を組み合わせると効果的です。

  1. 文書化する:テレアポの3つのフックと商談の約17分の流れを、トークスクリプトとして文書化する
  2. 練習する:反論への返し方をロールプレイで繰り返し練習し、とっさに否定しない癖をつける
  3. 記録して振り返る:商談後に「相手が自社の数字を口にしたか」を記録し、効いているサインの出現率を振り返る

3つ目の記録は、どのフックやどの問いが相手の数字を引き出したかを次のスクリプトに反映するための材料になります。現場の反応を記録して次の打ち手に還流させるこの回路は、VOC起点のPDCAそのものです。

数値は「調査に基づく目安」として扱い、業界ごとに差し替える

潜在ニーズの掘り起こしでは、業界の事実や数値が相手の気づきの材料になります。そのため、数値の扱い方を組織として統一しておくことが欠かせません。

  • 数値は「調査では」と前置きし、成果を保証する表現にしない
  • 出典と最新値を定期的に確認し、古い数値を使い続けない
  • 機会損失の試算は、正確さよりも可視化が目的であることを明確にする

また、本記事では不動産仲介会社向けの反響対応支援を題材にしましたが、型そのものは他の商材にも応用できます。業界の変化、他社の実態、採用環境、初動のスピードといった材料を、自社の商材に合わせて差し替えることで、同じ流れのトークを組み立てられます。たとえば業務支援のサービスであれば、業界の人手不足の状況や、同規模の企業が業務にかけている時間などが、相手の気づきを促す材料になります。

経済合理的価値の三つの側面で捉える

潜在ニーズの掘り起こしを型として整えることは、次の三つの観点から営業組織に価値をもたらします。

側面何が変わるか
売上アップ顕在ニーズ層が尽きた後も、潜在ニーズ層から新たなアポイントと商談を生み出し続けられる
コスト削減テレアポと商談の役割を分けることで、電話の長期化や見込みの薄い商談にかける工数を減らせる
リスクヘッジ特定の担当者のセンスに依存せず、チームで再現できる型を持つことで、担当者の異動や退職による成果の落ち込みを防げる

顧客にとっても、機会損失の可視化は売上の取りこぼしを防ぐ判断材料になります。売り手と買い手の双方にとって合理的な対話であることが、この型の強みです。

まとめ:潜在層は「説得」ではなく「気づき」で動く

顕在ニーズ層への提案が一巡した市場では、サービスの説明だけでは受注が生まれません。潜在ニーズ層が「困っていない」と答えるのは、判断材料を持っていないからです。営業がやるべきことは説得ではなく、相手が自分で気づくための材料を渡すことです。本記事のポイントは、次の3点に集約できます。

  1. テレアポと新規商談では持ち時間とゴールが違う──テレアポはSとPの入口まで、商談はIに最も時間を使う
  2. テレアポでは状況確認の立場で入り、業界や他社の事実を1つ置いて質問で終える──アポイントの理由は情報提供に置き換える
  3. 商談ではサービス説明の前に約17分を投資する──悪循環の提示と機会損失の金額化で「変えなければ」と思ってもらう

潜在ニーズ層からの反応が鈍いと感じているのであれば、まずは自社のテレアポのトークから「お困りではないですか」という問いを外し、業界の事実と質問に置き換えるところから始めましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 潜在ニーズの掘り起こしとは何ですか?

潜在ニーズの掘り起こしとは、課題を自覚していない相手が自ら課題に気づくよう、業界の事実や他社の実態、相手自身の数字といった判断材料を渡す営業手法です。潜在ニーズ層の「困っていない」は、現状を正しく把握したうえでの結論ではなく、材料がないまま下された判断であることが多いため、説得ではなく情報提供で判断を揺らします。

Q2. テレアポと新規商談では、潜在ニーズへの向き合い方はどう違いますか?

テレアポは「入口をつくる場」、新規商談は「必要性をつくる場」と役割を分けます。持ち時間30秒〜1分のテレアポでは、興味のフック1つと質問1つで「一度話を聞いてみるか」と思わせることに徹します。30〜45分の新規商談では、事実共有・問題提起・示唆・打ち手の比較を順に行い、「これは変えないとまずい」と思ってもらいます。

Q3. 新規商談でサービス説明に入るまで、どれくらいの時間をかけるべきですか?

潜在ニーズ層との商談では、サービス説明の前に約17分を目安に投資します。内訳は、状況の共有に約4分、問題提起に約5分、示唆(悪循環と機会損失の提示)に約5分、打ち手の比較に約3分です。この時間を先に使うことで、後半のサービス説明が売り込みではなく解決策として聞かれるようになります。

Q4. テレアポでフックを置いても反応が薄い場合はどうすればよいですか?

無理に深掘りせず、別の角度のフックを一つだけ試します。現場の担当者には対応時間や訪問査定率など日々の業務に近い話題が、経営者や責任者には採用や人員計画の話題が響きやすいため、相手の役職に合わせて切り替えます。それでも反応がなければ、資料の送付に留めて関係を残し、次の接点につなげます。

Q5. プロセルトラクションの営業支援の特徴は何ですか?

プロセルトラクションは、300社以上のBtoB営業支援実績(出典: プロセルトラクション、2026年)をもとに、ABM設計〜テレアポ代行の一気通貫から商談〜クロージング支援までを行います。リードセグメント別スクリプト作成・改善スキームで相手の役職や状態に合わせたフックを作り分け、VOC起点のPDCAで「相手が自社の数字を口にしたか」といった現場の反応をトークに還流させます。テレアポから新規商談まで、潜在ニーズ層から成果を生み出す営業の型を一緒に設計する点が特徴です。

テレアポの切り口づくりから、新規商談の時間配分、反論への返し方まで──潜在ニーズを掘り起こすトーク設計や商談の進め方も含め、新規事業や営業でお悩みでしたら、お気軽にお問い合わせください。テレアポから新規商談まで、潜在層から成果を生み出す営業の型を一緒に設計していきます。

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この記事の執筆者

長谷川裕樹

長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役

リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。300を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。