BtoB企業が生き残るためには、適切なBtoBマーケティングの実践が不可欠です。

BtoB企業では、BtoCほどにはマーケティングが重要視されていなかった時期もありますが、今は多くの人がBtoBマーケティングの重要性を認識しているでしょう。しかし、最新のマーケティング手法を理解し、自社のビジネスに効果的に活用できている企業は、今も多くありません。

この記事では、BtoBマーケティングの基本や、実践のために必要な手順やフレームワークについて解説します。さらには、BtoBマーケティングの実践事例についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

BtoBマーケティングとは

BtoBマーケティングとは、企業間での商品・サービス販売に特化したマーケティングのことです。マーケティング自体は古くから存在する概念ですが、その手法やトレンドは時代とともに変化しています。

この章では、現代におけるBtoBマーケティングの目的・役割と、BtoCマーケティングとの違いについて解説します。

BtoBマーケティングの目的と役割

非常に有名な用語であるにもかかわらず、「マーケティング」には決まった定義がありません。しかし、その根本的な概念を一言に要約すれば「モノやサービスを販売するための施策・考え方」です。

BtoBマーケティングは、顧客が企業に限定されるので、ターゲットとなる顧客は企業です。

販売し利益を得ることは、企業の発展に不可欠であり、BtoBマーケティングはBtoB型の企業が成功するための土台であるともいえます。

BtoCマーケティングとの違い

BtoBマーケティングは、個人を対象としたBtoCマーケティングといくつか異なる特徴があります。

一般的にBtoBの購買は、BtoCと比較して、以下の特徴があると言われます。

  • 商品・サービスの単価が高い
  • 購入選定までに関わる人数が多い
  • 意思決定までの時間が長い
  • 商品選定にあたり、感情よりも論理や合理性が優先される

BtoBマーケティングの実践には、こうした特徴を踏まえた戦略が必要です。例えば、顧客の購買意欲を少しずつ高める施策が、BtoBマーケティングの場合、年単位で行われることも珍しくありません。逆に、商品を認知してもらい直ちに購入までたどり着くケースは少ないでしょう。

BtoBマーケティングが注目されている理由

BtoBにおいても、マーケティングの考え方は古くから存在したものの、重要視されていなかった時期もあります。ただ近年その存在意義が高まっています。この章では、BtoBマーケティングが注目されている理由を2点紹介します。

顧客側の意思決定手法の変化

顧客が新たな製品・サービスを導入するまでの意思決定方法が変わってきたためです。

従来、日本の企業は取引先との関係性を重視する傾向がありました。一度受注すれば、良好な関係性を維持するだけで新規契約や継続受注を勝ち取れる可能性が高かったのです。

また、多くの企業が新規案件の受注よりも既存顧客の継続受注を重視していたこともあり、関係性がいったん構築できればしばらく安泰だったという点もあります。

しかし、近年は顧客側が商品選定をする際に、より合理的な判断基準を求めるようになりました。経済のグローバル化やIT化などを背景に、パイの奪い合いが起こりやすい状況もあり、関係性さえ構築できれば安泰という状況ではなくなりました。

顧客側の情報収集が容易になった

インターネットやSNSの発展により、今や顧客は商品・サービスの情報をいつでも入手できます。

従来、商品やサービスに関して売り手側が、買い手側よりも圧倒的に情報量を持っていたため、訪問営業の際のトークが大きな役割をもっていました。この構図が変わってきたのです。

こうした状況で販売を成功させるには、自社商品がニーズを満たせる顧客に対して、他社商品・サービスとの違い・利点をわかりやすく顧客に伝えることが大きな意味をもちます。

BtoBマーケティングの具体的な手順・プロセス

BtoBマーケティングを意識して実践してこなかった方・企業にとっては、重要性がわかってもどこからどのように着手すればよいかわかりづらい部分があるでしょう。

この章では、BtoBマーケティングの具体的な手順・プロセスを解説します。

調査・分析

BtoBマーケティングの出発点は、調査・分析です。

自社商品・競合他社商品・市場・将来性について正しく理解することで、どのような戦略を立てるのかを明確化できます。逆に言えば、正しい分析・調査ができなければ、効果的なBtoBマーケティングはできません。

調査・分析の際には、さまざまなフレームワークを用います。3C分析、4P分析などは第一歩です。

自社が集めた情報や予測値などを活用して、ペルソナ(顧客イメージ)設定や、カスタマージャーニー(顧客が購入に至る過程)設定などをイメージします。

戦略設定

調査・分析結果にもとづいて、以下の戦略設定をおこないます。

  • ターゲティング戦略 … どのような顧客に対して商品・サービスを販売するか
  • コスト戦略 … 商品の単価をどのように設定するか。キャンペーン・割引など
  • 差別化戦略 … 競合他社の製品と比較して、どのような点を強みとするか

戦略設定しても販売のイメージが持てない場合には、商材の選定や商品力自体に問題があることもあります。その場合には、商品開発やマーケティングを考えなおす必要性が生じます。

マーケティング施策の実践

戦略に基づいたマーケティング施策を実践します。

広告出稿・DM配信、セミナー開催など、商材・目的・タイミングなどに合致した施策を展開します。

PDCAを回す

マーケティング施策を実践したら、さまざまな指標においてPDCAを回します。

例えば、Web広告という1つの施策だけをとっても数多くの数字を把握する必要があります。

  • 広告の表示回数
  • 広告がクリックされた回数・割合
  • クリックから、次のステップ(資料の請求や無料会員登録など)につながった割合

マーケティング施策は、費用対効果が非常に重要であるため、条件を変更しまたPDCAをまわして、施策の精度を高められます。

同じくWeb広告の場合は、変更すべき条件として以下が考えられます。

  • 広告を配信する媒体の変更
  • 広告の文面やイラストの変更
  • 広告を配信する地域や時間帯の変更

当然ながら、これらの条件は調査・分析のデータや仮説にもとづいて設定します。

プロセルトラクションがBtoBマーケティングの実践をサポート

この記事でBtoBマーケティングの概要は説明していますが、それを自社に当てはめることはかんたんではありません。そこでプロセルトラクションではあなたの会社にマッチしたテストマーケティングのプランニングから実践までサポートしています。

まずは話を聞いてみる

BtoBマーケティングのトレンド・基本を知るために押さえておきたい用語

BtoBマーケティングを実践するためには、押さえておきたい用語があります。

この章では、今さら聞けない基礎的なBtoBマーケティングに使われる用語を4つ紹介します。

ペルソナ

ペルソナは商品やサービスを購入してくれる、顧客の姿をイメージしたものです。

BtoBマーケティングにてペルソナを設定する場合、現場担当者(サービスを実際に利用する人)・窓口担当者(商談の窓口となる人)・意思決定者が、それぞれ異なる点に注意しなくてはなりません。まず企業そのものをイメージし、次に複数の立場のペルソナを設定するのがおすすめです。

ファネル

ファネルとは、顧客が商品・サービスを購入するまでの段階を表したものです。

認知→興味・関心→比較検討→購買

ファネルの考え方をマーケティングに応用すると、売上目標から逆算してそれぞれのフェーズに必要な母数を推測できます。

<<10社の購買が必要な場合>>

  • それならクロージングして、検討段階の企業が20社必要
  • それなら興味・関心を持った企業が100社必要
  • それなら自社を新たに認知した企業が500社必要

では500社にアプローチする手法、必要な予算は?などと考察します。

結果として段階ごとに必要な施策や母数を導き出せます。

カスタマージャーニー

カスタマージャーニーとは、商品・サービス購買までのプロセスを顧客目線で洗い出して、まとめたものです。

それぞれのフェーズに、顧客が何を考え、どのような行動をとるか、モデルを表すものです。精度の高いカスタマージャーニーマップが作成できれば、顧客の心情や行動にぴったりマッチした顧客目線の施策を展開できます。

売り手と買い手の思考は別だからこそです。カスタマージャーニーを実践するには、ペルソナの作成が欠かせません。

KPI

KPI(Key Performance Indicator)は、重要業績評価指標と訳されます。簡単にいえば、最終目標(KGI)を実現するための中間目標を意味します。

BtoBマーケティングを成功させるには、適切なKPIを設定することが不可欠です。ファネルやカスタマージャーニーと組み合わせてKPIを設定することで、適切なポイントに適切な役割を設定できます。

BtoBマーケティング実行に役立つフレームワーク

マーケティング分析の際に、利用できるフレームワークについて理解を深めておくことも重要です。

フレームワークは数多く存在し、代表的な理論から派生したものも合わせると数え切れません。中でも実践的かつ代表的なフレームワークを4つ紹介します。

3C分析

3Cは、顧客・自社・市場を分析するために用いるフレームワークです。

  • 自社(Company)…自社の強み・弱み・ビジョンなど
  • 競合他社(Competitor)…他社の強み・弱み・特徴・今後予想される動きなど
  • 市場(Customer)…市場規模・将来性など

自社の立ち位置を明確にすることで、広告の内容やタイミング、ターゲットなどを明確にできます。

4P分析

4P分析では、以下の4項目について自社商品の展開を検討します。

  • 製品(Product)
  • 価格(Price)
  • 流通(Place)
  • 販促(プロモーション)

4P分析は、「どの商品を」「いくらで」「どこで」「どのように」売るかを決定するのに役立ちます。また、他社商品についても4P分析して比較すると、それぞれの強みと弱みを発見するのに役立ちます。

SAVE

SAVEは、おもにデジタルマーケティングにて4Pに代わって利用されているフレームワークです。

  • Solution(解決策)
  • Access(アクセス・接点)
  • Value(バリュー・価値)
  • Education(教育)

販売側が顧客に解決策を提供することで、インターネット検索などにより顧客に見つけてもらい、価値を提供したうえで継続的に教育していくというモデルです。コンテンツマーケティングなどを実践する際に、役立つでしょう。

BtoBマーケティングのトレンド

重要性が強く認識されてから歴史が浅いにも関わらず、BtoBマーケティングの世界ではすでにトレンドが何度も入れ替わっています。

この章では、2021年におけるBtoBマーケティングのトレンドについて解説します。

SNSマーケティング

企業がホームページをもち、ブログ、オウンドメディアなどコンテンツ配信をするのが当たり前になってからSNSマーケティングも注目されています。

SNSマーケティングには、大きく分けて2つのアプローチがあります。

1つ目は、TwitterやYouTubeなどで有益な情報を配信し、顧客と接点を持ち、自社をブランディングするアプローチです。

2点目は、SNSで広告を配信し自社コンテンツに誘導する方法です。もちろん顧客の興味をひく動画や商品を先に用意する必要があります。

動画や写真などの視覚的な情報は情報伝達力が高いです。また、有益な情報はSNS上で容易に拡散されるという利点もあります。

動画マーケティング

SNSマーケティングと親和性が高いアプローチ手法が、動画マーケティングです。動画は、テキストの5,000倍もの情報発信力をもつといわれており、BtoB業界でも積極的に活用が進んでいます。

YouTubeチャンネルを持つだけではなく、自社のWebサイトに動画を埋め込んだり、製品の動画マニュアルを作成したりするなど、動画の活用法はさまざまです。

またセミナーのリアル開催が激減した状況下で、ウェビナーを積極活用する企業も増えています。

サブスクリプション化

BtoCにおいて一般市場に浸透したサブスクは、BtoBの市場でもすでにビジネスモデルとして多く広まっています。例えば、OFFICE365に代表されるソフトウェアやOA機器、カーシェアリングサービスなどが該当します。

ビジネスモデルの変化により、必然的にリピート率が高まるなど、営業の手法・アプローチにも影響が表れはじめています。

また、サブスクリプションサービスの土台にあるのは、カスタマーサクセスの考え方です。

カスタマーサクセスは、顧客が商品やサービスを実際に使用して、成功するために企業側がアプローチをする手法です。例えば、ソフトウェア販売の場合、実際にソフトウェア販売の場合、ただサービスを導入してもらうだけではなく、導入後にどのように活用しビジネスに有効活用してもらうかもサービス提供をおこないます。

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)

ABMとは、自社にとって価値のあるターゲット顧客を選別して、顧客にあわせた最適のアプローチを試みるマーケティング手法です。最近、その精度や質が高まっていることで非常に注目が集まっています。

ABMは、考え方自体は従来から存在しましたが、その理念を実現するだけのデータの収集・分析・活用をすることが困難だとされていました。しかし、SFAやMAなどリアルタイムで大量の情報を扱えるツールの登場や、インサイドセールスをはじめとした顧客を時間をかけて育てる営業手法の流行などにより、ABMを実現できる土台が整いました。ABMは、特定の企業に対して1to1でアプローチをする際に、非常に効果的な手法であると考えられています。

BtoBマーケティングの成功事例

BtoBマーケティングの施策を実践して、成功している企業の事例をいくつかチェックしてみましょう。

コニカミノルタ

コニカミノルタでは、ITやAIを効果的に活用することで、顧客のニーズを効果的に吸い上げて、販売につなげています。

主な施策は、以下のとおりです。

  • データベース化した顧客のプロファイルをAIによって分析して、新規顧客開拓の潜在顧客リストを作成

→データにもとづくことにより、営業の初期段階から顧客のニーズや悩みに対して効果的なアプローチが可能に。

  • 顧客エンゲージメントを科学的に評価検証し、スコアに基づいたフォローの実施

→マーケティング活動を、効果的かつ科学的な営業活動につなげる

また、顧客との接点・窓口であるWebサイトは、顧客目線を徹底することで見込み顧客の数アップに貢献するでしょう。

田中鉄工所

製造業それも町工場と呼ばれるようなものづくり企業は、顧客からのWeb検索数が少なくBtoBマーケティングの実践が難しい業種というのが定説でした。それでも、効果的な打ち手を探る企業は多くあります。

新潟市の田中鉄工所は、営業部門・製造部門との連携強化とスピード感をうまく活用して、BtoBマーケティングに成功している企業です。

  • 展示会の際に、直接ユーザーの疑問・ニーズ・不満をリサーチする
  • ユーザーのもっている悩みを自社商品で解決できるかどうかを、いち早く現場にフィードバック
  • 既存商品で解決できないときには、製造部門にて商品開発を検討

こうしたサイクルをスピーディーに回すことで、製造が難しいとされるレアメタル加工の技術も確立するなど、同社は独自の地位を築くことに成功しています。

山田コンサルティンググループ

山田コンサルティンググループは、M&Aコンサルティングや補助金申請サポートなどを行う企業です。

専門性が高い業界のため、パンフレットには専門用語が並び、難しい資料になりがちです。しかし、同社は顧客目線の資料を作成し新規見込み顧客の獲得につなげています。

その工夫が顕著にみられるのが、同社のホワイトペーパーです。

「マンガでわかるM&Aの落とし穴10選」など初心者にも分かり易そうなキャッチーなタイトルで、ユーザーの興味関心を惹きつけて、リード獲得のフックとして機能させています。定期的なコラム配信や動画資料の配信などの工夫により、見込み顧客を育てる工夫も実践されています。

正しいBtoBマーケティングは売上拡大に直結する

近年はBtoBにおいてもマーケティングの重要性が高まっています。ビジネス環境の激化により、限られたパイを争う中で時代に即した販売戦略を立てるには、適切な販売戦略の実施が不可欠です。

BtoBマーケティングは、BtoCと比較し長期スパンになり関わる関係者も多くなります。より論理性が求められるため、フレームワークを取り入れ科学的かつ効果的な案を考えなくてはなりません。

どのような施策を取れば最大の効果が得られるのかは、業界の状況や扱う商品などによって異なります。

紹介したフレームワークや事例を参考に、マーケティングが得意な専門家に相談するのもよいでしょう。

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IT企業などの取引形式については、こちらの記事で詳しく解説されています。合わせてご確認ください。
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