最終更新: 2026年6月

スイートタイム活用とは、架電先が電話に出やすい時間帯を特定し、その時間帯に集中して架電することで接続率を最大化する営業手法です。

医療機関(クリニック・診療所)向けのサービスを販売する営業には、他の業界にはない特有の接続の難しさがあります。診察時間中は電話が繋がらない・休憩時間は留守電に切り替わる・決裁者である院長への取り次ぎが難しい──これらの構造的な課題によって、コンタクト率が他業界より低くなりやすい状況があります。KPI設計・仮説検証からPDCA実行まで一気通貫で支援する株式会社プロセルトラクションにて特別賞を受賞した担当者の実践事例から、直接営業(DS)での接続率向上と、代理店経由(PS)でのトスアップ数増加の両面から商談数を確保する手法を解説します(プロセルトラクション実績, 2024年度)。

1. 「受注率が高い」のに受注数が足りない状態の構造

受注率50%超でもビハインドが続く理由

某クリニック向けサービスの営業において、受注率が50%以上という高い水準を維持しているにもかかわらず、受注数目標に対して大きなビハインドが続く状態がありました。

この状況の根本的な原因は「商談数の絶対的な不足」です。受注率が高い場合でも、商談数が目標を下回ると受注数は目標に届きません。「受注率50%で月20件受注するためには40件の商談が必要」という逆算をした時に、実際の商談数が25件しかない状態では、受注率がいくら高くても12〜13件の受注にしかなりません。

この状態を打破するためには、「受注率をさらに上げる」よりも「商談数を増やす」という方向性で取り組む必要があります。商談数を増やすためには、DS(直接営業)とPS(代理店経由)の両面でアポイント獲得数を大幅にアップさせる設計が必要です。

2. DS(直接営業)のアポイント獲得──架電時間の最適化

医療機関特有の「繋がらない時間帯」の構造

医療機関への架電で最も難しいのは、「どの時間に架電すれば担当者(院長)と繋がれるか」という接続タイミングの問題です。

時間帯院長の状況接続の難易度
診察時間中診察に入っており電話に出られない。受付スタッフも対応中で取り次ぎ困難高(繋がりにくい)
休憩時間留守電に切り替わるケースが多い高(繋がりにくい)
診療終了後事務処理・次の診察準備で多忙

この構造の中で、「いつ架電すれば院長に繋がりやすいか」を把握した上で架電時間を設計することが、接続率を上げるための最重要課題です。

スイートタイム設計──接続可能な時間帯に集中して架電する

医療機関への架電で接続率を上げるために、アイドルタイムとスイートタイムを分離して設計します。

  • アイドルタイム(架電しても繋がりにくい時間):架電先リストの抽出・整理・情報確認に充てる
  • スイートタイム(繋がりやすい時間):集中して架電を実施する

この2つを分けて設計することで、「繋がらない時間帯に架電を続けて架電効率が下がる」という無駄を防げます。

固定電話への架電タイミング:

クリニックの固定電話は、診察時間中は受付が対応しているため院長への取り次ぎが難しくなります。狙い目は「診察時間の直前」と「診察終了ギリギリのタイミング」です。

  • 診察時間直前:診察が始まる前の準備時間で、院長が受付付近にいる可能性が高い
  • 診察終了ギリギリ:最後の患者への対応が終わり、少し余裕が生まれるタイミング

直通番号(携帯)への架電タイミング:

院長の直通番号がある場合は、休憩時間(昼休み)や診療後の時間帯が比較的繋がりやすいです。休憩時間は留守電に切り替わるクリニックもあるため、「診療終了直後」のタイミングを優先します。

新規リードへの即日アプローチと複数チャネルの活用

問い合わせや資料請求など、新規で入ってきたリードへは即日アプローチが原則です。「温度感が高いうちに」コンタクトすることで、商談化率が大幅に上がります。リードが入った当日中に少なくとも架電を1回行い、繋がらなかった場合もメールでアプローチします。

電話で繋がらない・折り返しがない場合は、メールでのアプローチに切り替えます。「電話が繋がらない先はアウト」という判断をせず、電話に出ない場合の次のアクションとしてメールを設計しておくことで、取りこぼしが減ります。

受注率が高い状態では「商談数を増やすことが受注数増加につながる」ため、商談のハードルを下げてアポイントを取りやすくすることを優先します。「詳しく説明させてください」という高い商談ハードルではなく、「15分ほどお時間いただけますか」という形で商談のハードルを低く設定します。

3. PS(代理店経由)のアポイント獲得──信頼構築でトスアップを増やす

「待っていてもアポは入らない」という前提を持つ

代理店経由(PS)での商談獲得において重要な前提は、「待っていても代理店からアポイントは入ってこない」という認識です。代理店担当者は自社の業務を抱えながら、複数のサービスを扱っています。「良いサービスだから積極的に紹介してくれる」という期待は、自発的な関係構築なしには成立しません。「待っていても入ってこないなら自分から取りにいく」という姿勢が、代理店からのアポイント獲得を増やす出発点です。

接触頻度と報告内容を充実させる3つの施策

代理店担当者との信頼関係を構築するための最も効果的な取り組みは、「接触頻度の向上」と「報告内容の充実」です。

  1. 紹介案件の進捗をタイムリーに報告する:代理店担当者が紹介してくれた案件の商談進捗を、こちらから定期的に報告します。「紹介したきり、その後どうなったか分からない」という状態が続くと、代理店担当者は「紹介しても手応えがない」と感じ、次の紹介が減ります
  2. 即レスと折り返しの徹底:代理店担当者から連絡が来た際に「電話に出る・すぐ折り返す・アフターフォローを意識する」という基本的な対応の徹底が、信頼関係の土台になります。「連絡しても返ってこない」という経験が1回でもあると、代理店担当者がこちらへの連絡を減らします
  3. 欲しい情報を適切なタイミングで提供する:代理店担当者が「この情報が欲しい」と感じるタイミングを予測して、先回りで情報を提供します。新機能のリリース・事例の追加・価格改定など、代理店担当者の営業活動に役立つ情報はいち早く提供します

「この人と繋がっているとメリットがある」という状態を作ることで、代理店担当者が積極的に関与してくれるようになります。

「布教活動」で代理店内での認知を広げる

代理店担当者との個別の関係を深めるだけでなく、代理店組織内への認知拡大が、トスアップ数を増やすための効果的な手法です。

代理店の営業所内での勉強会・朝礼に参加して商品説明を行うことで、1人の担当者経由ではなく複数の担当者に商品を知ってもらう機会を作ります。1人の担当者が紹介してくれる案件数に限界があっても、複数の担当者が商品を理解していれば、トスアップの総数が増えます。

「小さいことでも気軽に連絡ください」というメッセージを代理店担当者に伝えることで、「これくらいの案件は連絡してもいいかな」という心理的ハードルを下げます。「この人になら連絡しやすい」という感覚が、日常的なコミュニケーション量を増やし、紹介案件の増加につながります。

4. 実践成果──自アポ数増加と代理店紹介数7件達成

某クリニック向けサービスの営業での実践成果は以下の通りです(プロセルトラクション実績, 2024年度)。

DS(直接営業)の成果:

  • 担当者(院長)接続率が向上
  • 電話に出ない場合のメールへの切り替えにより、折り返し(メール返信率)が上昇
  • 自アポ数:4月12件→5月10件→6月15件(増加傾向)

PS(代理店経由)の成果:

自アポ数代理店紹介数合計商談数
4月12件1件13件
5月10件1件11件
6月15件7件22件

コツコツと代理店担当者の信用構築を重ねた結果、6月には代理店からの自発的な紹介が急増しました。代理店担当者から同僚担当者への紹介も発生するようになり、コミュニケーション量の増加により代理店から勉強会の依頼をいただけました。6月には自アポ15件・トスアップ12件の合計27件の商談を確保し、自アポ率55%を達成しました。

よくある質問

医療機関向けの架電でスイートタイムはどう見つければよいですか?

まずクリニックごとの診察時間をホームページで確認し、「診察開始前」と「診察終了ギリギリ」の2つの時間帯を候補としてリストアップします。固定電話と院長直通番号で繋がりやすい時間帯が異なるため、架電先ごとに接続実績を記録し、1〜2週間のデータでパターンを把握することを推奨します。

代理店からのトスアップが増えるまでにどれくらいの期間がかかりますか?

本事例では、4月・5月は各1件のみでしたが、信頼構築を継続した結果、6月に7件まで急増しました。即効性のある施策ではなく、2〜3ヶ月の接触頻度の積み上げが必要です。紹介案件の進捗報告・即レス・先回りの情報提供をコツコツ続けることで、代理店担当者の「この人に紹介しよう」という判断基準に入れます。

受注率が高いのに商談数が足りない場合、受注率向上と商談数増加のどちらを優先すべきですか?

受注率50%を超えている場合は、商談数の増加を優先します。受注率を50%から60%に引き上げるよりも、商談数を25件から40件に増やす方が受注数への貢献が大きくなります。ただし、受注率が30%以下の場合はスクリプト構築や提案改善による受注率向上が先決です。自チームの受注率水準に応じて判断してください。

まとめ──医療機関向け営業で商談数を増やすDS・PS両面の設計

受注率は高いのに商談数が不足して受注数目標に届かない状態を脱するための実践手法をまとめます。

DS(直接営業)での接続率向上:

  • アイドルタイムに架電先抽出・スイートタイムに集中架電するタイムマネジメントを設計する
  • クリニックの診察時間を調べ、固定電話への架電は診察直前・終了ギリギリを狙う
  • 直通番号への架電は診療終了後を優先する
  • 新規リードへは即日アプローチを徹底する
  • 電話に出ない場合のメールアプローチを設計しておく
  • 商談ハードルを低く設定し、母数(商談数)を優先する

PS(代理店経由)でのトスアップ数増加:

  • 紹介案件の進捗をタイムリーに代理店担当者に報告する
  • 即レス・すぐ折り返し・アフターフォローを徹底して信頼関係の土台を作る
  • 代理店担当者が欲しい情報を先回りして提供し「繋がっているメリット」を作る
  • 代理店の勉強会・朝礼に参加して組織内での認知を広げる
  • 「小さいことでも気軽に連絡を」という環境を作り、コミュニケーション量を増やす

この2つを組み合わせることで、受注率は高いのに商談数が足りないという状態から脱却し、受注数目標達成への道が開けます。標準化・再現性のあるスイートタイム設計とVOCに基づく代理店関係構築が、属人的な営業力に頼らない商談獲得の仕組みを作ります。

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この記事の執筆者

長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役

リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。100を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。