最終更新: 2026年7月
正しい手順で新規事業開発を進めたはずなのに、いざ営業を開始すると思うように売れない。獲得コストが計画を上回り、一部の顧客には響くものの、それ以外の顧客に広がらず、スケールの目処が立たない。BtoB新規事業の現場では、こうした相談が年々増えています。この記事では、売れないBtoB新規事業に共通する3つの構造的課題を整理し、PSF検証段階で取り組むべき「買い手の意思決定構造の理解」と「課題解決ストーリーの設計」を、5ステップの実装フレームワークとして解説します。
この記事の目次
なぜ「正しい手順」を踏んでも売れないのか──新規事業開発の構造的課題
普及した5ステップ方法論と「形式化」の罠
BtoB新規事業の開発プロセスは、現在ではある程度の型として共有されています。一般的には次の5ステップに整理されます。
- ビジネスプラン仮説立案
- PSF検証(顧客課題と提供価値の検証)
- PMF検証(受容性とマネタイズの検証)
- ユニットエコノミクス検証
- スケーラビリティ検証
書籍や記事を通じてこの方法論が広く流通したことで、明らかに誤った手順で事業開発を進めてしまうケースは少なくなりました。しかしその一方で、「手順通りに検証ステップを進めること」が目的化し、形式的な確認作業として処理されてしまっているケースが増えています。本来の目的である「企業に継続的に購入いただき、持続的に収益を上げる」という出口が見えなくなったまま、各ステップを順番に消化していくと、検証は通っているのに営業段階で売れないという状態に陥ります。
営業段階で表面化する3つの構造的課題
正しい手順を踏んだはずの新規事業が営業段階でつまずく要因は、PSF検証、PMF検証、ユニットエコノミクス検証のそれぞれに潜んでいます。プロセルトラクションが新規事業の営業現場で多数の事業に伴走してきた経験から見ると、次の3つの構造的課題が繰り返し現れます。
- PSF検証での課題:商品の提供価値が顧客の経済合理的価値に結びついていない。あるいは、結びつけるための課題解決ストーリーが設計できていない
- PMF検証での課題:提供価値に対して顧客側のコストや運用負荷がアンバランスである。提供価値を高く評価する顧客セグメントを見極められていない
- ユニットエコノミクス検証での課題:ユニットエコノミクスを意識した顧客開拓の設計図と推進体制が描けていない
この記事ではこのうち、最も上流に位置するPSF検証段階の課題と解決方法を取り上げます。なぜなら、PSF段階で経済合理的価値への接続が設計されていない事業は、PMF検証以降のどの工程でも構造的に売れにくくなるためです。
「売れる事業」と「売れない事業」を分ける一点
売れる事業と売れない事業の差は、プロダクトの優劣以上に、「買い手企業が稟議や会議で意思決定者を説得できる根拠を提供できているか」という一点に集約されます。BtoB商材の購入は、ほぼ例外なく組織的な意思決定の結果として行われます。そのため、現場担当者が「いい商品だ」と評価しても、決裁者を説得する材料が欠けていれば失注に至ります。
買い手の意思決定構造を理解し、そこに接続する課題解決ストーリーを設計できているか。これが事業の売れ行きを左右する分岐点になります。
買い手の意思決定構造(DMU)を理解する
企業が購入を決める唯一の判断軸は「経済合理性」
BtoB事業の前提として押さえておくべきは、「企業」という存在の定義です。企業とは、営利を目的に継続的・計画的に同種の経済行為を行う組織体であり、その本質は持続的に収益を上げ続けることにあります。
この前提に立つと、企業が費用を払って何かのサービスを導入する行為は、必ず「持続的な経済活動への寄与」を期待した投資として位置付けられます。すなわち、サービスを導入する企業は、自社の経済合理的価値に繋がるものだけを購入するということです。
経済合理的価値は、次の3つに分類できます。
- 収益貢献その1:売上アップ
- 収益貢献その2:コスト削減
- 持続性の担保:リスクヘッジ
導入を検討するBtoB商材から得られる価値が、直接的または間接的にこのいずれかに繋がっていることを買い手企業に理解させられなければ、社内稟議は通りません。「面白い」「新しい」「便利になる」といった訴求では、最終的な意思決定の説得材料には届かないのです。
DMUという概念──意思決定は「複数人」で行われる
BtoBの購買では、商材の導入を判断する主体は単一の担当者ではなく、関与する複数の人物の集合体です。これをDMU(Decision Making Unit/意思決定関与者群)と呼びます。
DMUの規模は、商材の特徴によって変動します。一般的には次の傾向が見られます。
- 導入費用が高価になるほど、関与する人数が増える
- 導入によるリスクが大きいほど、関与する役職階層が広がる
- 部門横断的な業務支援系サービスの場合、複数部門の責任者が意思決定者として加わる
このDMUの全員に「この商材は当社の経済合理的価値に繋がる」と判断してもらわなければ、稟議は前に進みません。窓口担当者が前のめりでも、決裁者が定量根拠の不足を理由に差し戻すケース、利用部門の責任者が運用負荷を懸念して反対するケースは、BtoB営業の現場で日常的に起こっています。
「投資対効果×根拠」の提示こそが営業の核心
立場の異なるDMU全員を納得させる方法は、ひとつしかありません。それは、商材導入の投資対効果を定量で明示し、さらにその根拠を合わせて提示することです。
たとえば次のような表現が、稟議資料に耐える説得材料の典型です。
- このサービスの導入で、年間の売上が約〇〇円増える
- 既存業務にかかっているコストが約〇〇%削減できる
- 取引停止リスクが顕在化する確率が約〇〇%低下する
これらを根拠付きで明示できる事業が、結果として「売れる事業」になります。逆に、定量根拠を提示しないまま「業界初の機能」「使いやすいUI」といった訴求にとどまる事業は、DMU内で誰かを説得できず、商談が止まります。
「課題解決ストーリー」で経済合理的価値を訴求する
直接的価値モデルと間接的価値モデルの違い
すべてのBtoB事業が、投資対効果を直接的・定量的に提示しやすいわけではありません。提供価値と顧客の経済合理的価値との繋がり方によって、事業は大きく2タイプに分かれます。
直接的価値モデルは、提供価値そのものが売上・コスト・リスクのいずれかと直接結びつくタイプです。代表例として、集客や採用のためのマッチングプラットフォームが挙げられます。「送客」という提供価値が、買い手の売上アップに直接繋がるため、投資対効果の試算が容易です。さらにそのプラットフォームがオープン型で自社運用可能であれば、特定の媒体への依存を避けるリスクヘッジ価値も同時に提供できます。
間接的価値モデルは、業務支援系SaaSや改善コンサルティングのように、提供価値が顧客の経済合理的価値に対して間接的・複合的に作用するタイプです。たとえばCRMツールの導入は、それ自体が直接売上を生むわけではなく、「顧客情報の精度向上→接客品質の向上→リピート率の向上→売上アップ」という連鎖を経て経済合理的価値に至ります。この場合、買い手企業に「導入によって自社の経済合理的価値がどう改善されるか」を構造的に理解させる必要があります。
業務支援系SaaSが背負う構造的ハンディキャップ
間接的価値モデルの事業は、構造的に売りにくいハンディキャップを抱えています。
- 投資対効果を定量で明示する難易度が高い
- 効果が出るまでに時間差があるため、契約後の検証も難しい
- 顧客側に運用工数が発生するため、コスト評価が膨らみがちである
このハンディキャップを乗り越える唯一の方法が、課題解決ストーリーの設計です。
課題解決ストーリーとは、「顧客企業が、この商材を導入することで、経済合理的価値に繋がる課題を解決できる、やりたいことができるようになる、やるべきことをより高いレベルで遂行できるようになる」という筋道を、買い手の経済活動の文脈で説明するものです。
サービスの提供価値そのものを語るのではなく、買い手の事業構造に当てはめて「この導入がどの経済合理的価値に、どの経路で、どれくらいの規模で結びつくのか」を見えるようにすることが、間接的価値モデルの事業を売れる事業に変える鍵になります。
課題解決ストーリーを設計する5ステップ
ステップ1:クライアント事業構造分析(KPIツリーとリスク分解)
最初の作業は、買い手企業が「どのように儲かっているか」を構造的に分解することです。これは、買い手企業のKPIツリーを作成する作業と言い換えられます。
たとえば飲食店を買い手と仮定すると、利益構造は次のように分解できます。
- 利益=売上−コスト
- 売上=客数×客単価
- 客数=既存客数+新規客数
- 客単価=商品単価×注文数
- コスト=固定費+変動費
- 変動費=原価+人件費+販促費
ここまで分解することで、買い手企業がどの構成要素を改善・強化したいか、どこに利益貢献の余地があるかを把握できるようになります。同時に、経済合理的価値には「持続性の担保」も含まれるため、内部要因と外部要因に分けたリスクの分解も並行して進めます。
- 内部要因:離職、人災、内部統制の不備
- 外部要因:天災、取引先からの影響、規制変更
利益貢献の構造分解とリスクヘッジの構造分解を揃えて初めて、買い手企業にとって経済合理的価値を構成する全体像が見えてきます。
ステップ2:打ち手・施策の洗い出し
事業構造を分解したら、次は各構成要素を改善・強化するための打ち手、業界内で実際に行われている施策を洗い出します。「儲けるために買い手は何をしているか、何をすべきか」を整理する工程です。
飲食店を例にすれば、次のような施策が想定されます。
- 既存客数を増やすための施策:CRMの導入、サービス品質の改善、ポイントプログラム
- 新規客数を増やすための施策:広告活用、媒体最適化、予約導線の整備
- 客単価を上げるための施策:ハイエンドメニュー開発、アップセル提案、バンドルメニュー設計
- コストを下げるための施策:仕入れ先の交渉、シフト最適化、販促ROI改善
ここで重要なのは、買い手企業がすでに着手している施策と、未着手の打ち手を分けて整理することです。後者には潜在的なニーズが眠っていることが多く、提供価値の差別化余地が現れます。
ステップ3:課題の抽出と優先順位付け
施策を洗い出したら、次はその施策を「やりたくてもできていない原因」「実行しているが上手くいっていない原因」「より良く実行するために必要な条件」を分析します。これが、買い手の現場で実際に発生している課題です。
たとえば、飲食店がCRMに取り組もうとしても、次のような課題に直面していることがあります。
- 顧客情報を紙ノートで管理しており、抜け漏れと属人化が発生する
- システムを導入しても、現場のITリテラシーの差で活用されない
- 営業時間外の予約受け入れに、コストとリスクが見合うチャネルがない
- 新メニュー開発に必要な顧客嗜好データが、POSデータ単独では分析しきれない
- 接客中の発見やクレーム情報が、シフトの違うメンバーに引き継がれずに失われる
業務支援系SaaSの買い手企業を想定する場合も、同様の構造で課題が抽出できます。たとえば中小製造業向けの生産管理SaaSであれば、「現場の作業日報が紙運用のままで、月次の集計に常時1名分の工数が固定されている」「不良品の発生原因が暗黙知化しており、後工程に伝わるまでに数日遅延する」といった課題が、利益貢献やリスクヘッジの起点として浮かび上がります。
抽出した課題はすべてが同じ重みではありません。「解決した場合に経済合理的価値への影響が大きい課題」を優先する観点で、優先順位を付けます。優先順位付けの実務的な目安として、次の3軸で評価する方法が有効です。
- 経済的インパクトの大きさ:解決した場合に売上・コスト・リスクのいずれかにどれだけの規模で寄与するか
- 影響範囲の広さ:その課題を抱える企業が、ターゲット市場の中でどれだけのボリュームを占めるか
- 解決可能性の高さ:自社プロダクトの提供価値で実際に解決できる確度がどれだけあるか
3軸のすべてが高い課題が、最初に攻めるべきコア課題になります。一方、影響範囲は広いが経済的インパクトが小さい課題、インパクトは大きいが解決可能性が低い課題は、優先度を下げて将来的なロードマップとして扱います。
ステップ4:提供価値のマッピング
優先順位を付けた課題に対して、次は「どのような価値を提供すれば、どの構成要素が改善・強化され、最終的にどの経済合理的価値(売上・コスト・リスク)に繋がるか」をマッピングします。
この工程を経ることで、間接的価値モデルの事業であっても、「顧客情報のデジタル化→属人化の解消と接客時間の捻出→リピート率の改善→売上アップ」のような筋道を、買い手の事業構造の中に位置付けて語れるようになります。
マッピングを丁寧に行うことのもう一つの効果は、複数のDMUに対する説明材料を分解できることです。たとえば飲食店向けCRMの導入を提案する場合、店長に対しては「リピート率の改善による売上アップ」を、本部の経理担当者に対しては「販促コストの最適化」を、経営者に対しては「特定の人材への属人化リスクの軽減」を、それぞれの関心軸に合わせて訴求できます。同じプロダクトでも、伝える相手によって響く経済合理的価値は異なるため、マッピングの段階で誰にどの経路を語るかを設計しておくと、稟議のあらゆる関門で滞らない説得材料が揃います。
ステップ5:対応ソリューションの設計
最後に、マッピングした提供価値を、どのソリューション・機能・サービスで実現するかを設計します。
ここで意識すべき優先順位は、「利益貢献度が高く、かつ他社が提供できていない提供価値」に対応するソリューションから開発・実装に着手することです。リソースが限られた新規事業では、全方位的な機能開発は現実的ではなく、最初に投下する開発リソースの選択がプロダクトの成否を左右します。
このソリューション設計の段階で、課題解決ストーリーは「言葉」から「商品仕様」に翻訳されます。ここまでが、買い手の経済合理的価値に接続する筋の良い課題解決ストーリーの設計プロセスです。
「筋の良い」課題解決ストーリーを構築するための3つの観点
観点1:優先順位は必ず「経済的インパクト」で決める
課題と提供価値をマッピングすると、買い手の課題ややりたいことが大量に可視化されるため、「すべてに対応する商品にしなければ」と感じてしまいます。しかし、すべての課題を解決する商品を一度に作ることは不可能です。
優先順位付けの基準は、「解決した場合に最も大きな経済的インパクトを生む課題はどれか」「そのインパクトに対する実現可能性が高いものはどれか」の2軸です。特に業務支援系のサービスは、対象としている課題が事業収支構造をブレイクダウンした先にある打ち手の課題であることが多く、一見すると経済合理的価値から遠く見えがちです。だからこそ、経済的インパクトの大きさで筋の良し悪しを判断する必要があります。
観点2:顧客の声をストーリー仮説の検証に使う
設計した課題解決ストーリーが筋良く機能しているかは、買い手企業との対話の中で繰り返し検証されます。経済合理的価値に繋がらない課題設定をしてしまった場合、買い手企業からは次のような反応が返ってきます。
- 「確かに困っているし、解決されたら嬉しいけど、お金を払うほど困っていない。無料ならやります」
- 「あったらいいなとは思うが、今期の予算で優先するほどではない」
- 「役員に説明するときに、投資対効果のシナリオが描きにくい」
- 「面白い取り組みだとは思うが、当社の収益構造との繋がりが見えない」
こうした声は、ストーリーの欠陥を教えてくれる早期警報です。「面白い」「使いやすい」と評価されていても、経済合理的価値に接続できていない場合、必ずどこかで「お金を払うほどではない」の壁にぶつかります。逆に、課題解決ストーリーが買い手の事業構造に正しく接続できていれば、「この導入で年間の経費構造がこう変わる」「来期の事業計画にどう組み込めるか」「投資対効果が出るまでの期間を、どの段階指標で確認できるか」といった、より具体的な議論に切り替わっていきます。
商談中のコメントは、ストーリーの精度を測るリトマス試験紙です。失注した商談ほど、どの段階で買い手の経済合理的価値への接続が断たれたかを記録に残しておく価値があります。失注理由を「価格が高い」「タイミングが合わなかった」と一括りにしてしまうと、ストーリー設計の精度を上げる学びが失われます。「どの構成要素への影響シナリオが弱かったか」まで掘り下げて記録することで、次の商談以降のストーリー磨き込みに直結します。
観点3:営業担当者が課題解決ストーリーを語れる状態を作る
課題解決ストーリーを事業として設計しても、最終的に買い手企業に伝えるのは現場の営業担当者です。営業担当者が買い手の事業構造を理解せず、自社プロダクトの機能紹介を繰り返してしまえば、せっかく設計したストーリーは商談の場に届きません。
営業担当者が課題解決ストーリーを語れる状態を作るために、組織として次のような仕組みが有効です。
- 業界別の事業構造分析テンプレートを営業組織で共有する
- 想定される打ち手・施策のリストをカテゴリ別に整備する
- 商談ロープレでKPIツリーへの落とし込みを反復訓練する
- 受注事例の課題解決ストーリーをナレッジとして全社共有する
- 失注理由を「ストーリーのどこが買い手の経済合理的価値に接続しなかったか」で分析する
- 商談録画を定期的にレビューし、ストーリーの語り口がブレていないかチェックする
このような営業組織側の運用設計を併走させることで、課題解決ストーリーは机上の設計から、現場で再現される売れる仕組みに変わっていきます。新規事業の立ち上げ期は、営業担当者の人数も少なく、属人的な勝ち筋に頼りがちな段階ですが、その段階から組織的なストーリー共有の習慣を作っておくことで、人員拡大期に入った際の再現性が大きく変わります。
よくある質問
課題解決ストーリーとは何ですか?通常の営業トークとどう違いますか?
課題解決ストーリーとは、買い手企業の事業構造に当てはめて「この商材を導入することで、どの経済合理的価値(売上アップ・コスト削減・リスクヘッジ)に、どの経路で結びつくのか」を構造的に説明する筋道です。通常の営業トークがプロダクトの機能や特徴を中心に語るのに対し、課題解決ストーリーは買い手の利益構造を起点に語ります。これにより、DMU(意思決定関与者群)の全員が稟議で納得できる定量根拠を提供できるようになります。
DMU(意思決定関与者群)への対応は、具体的にどう進めればよいですか?
まず買い手企業のKPIツリーを分解し、提供価値がどの構成要素に影響するかをマッピングします。その上で、DMUの各メンバーの関心軸に合わせて訴求ポイントを変えます。たとえば現場責任者には「業務効率の改善による売上アップ」を、経理部門には「コスト最適化」を、経営者には「属人化リスクの軽減」を語るといった設計です。同じプロダクトでも、相手ごとに響く経済合理的価値の経路は異なります。
間接的価値モデルの事業で、投資対効果をどのように定量化すればよいですか?
買い手企業の利益構造をKPIツリーで分解し、自社の提供価値がどの構成要素を改善するかを特定します。たとえば「顧客情報のデジタル化→属人化の解消→接客時間の捻出→リピート率の改善→売上アップ」のように、経済合理的価値に至る因果の連鎖を明示します。各ステップの改善幅を業界平均や導入事例のデータで裏付けることで、間接的な価値であっても稟議に耐える定量根拠を構築できます。
まとめ:BtoB新規事業を「売れる事業」に仕立てるために
BtoB新規事業の営業段階で売れない事業に共通するのは、プロダクトの優劣ではなく、買い手企業の意思決定構造に接続する「経済合理的価値への筋道」が設計できていないことです。
買い手企業は、営利を目的に持続的に経済活動を行う組織体であり、その購買行動はすべて経済合理的価値(売上アップ・コスト削減・リスクヘッジ)に繋がるかどうかで判断されます。さらにその判断は、複数のDMUによって行われるため、立場の異なる関与者全員を納得させる定量根拠と筋道が必要になります。
直接的価値モデルの事業であれば、提供価値そのものを定量で示せばよいでしょう。一方、業務支援系SaaSなど間接的価値モデルの事業では、買い手の事業構造に当てはめた「課題解決ストーリー」を設計することが、売れる事業への分岐点になります。本記事で紹介した5ステップは、業界や事業を問わず適用できる汎用フレームワークです。
- ステップ1:クライアント事業構造分析(KPIツリーとリスク分解)
- ステップ2:打ち手・施策の洗い出し
- ステップ3:課題の抽出と優先順位付け
- ステップ4:提供価値のマッピング
- ステップ5:対応ソリューションの設計
このフレームワークを組織に実装し、営業担当者が買い手の事業構造から語れる状態を作ることが、BtoB新規事業を売れる事業に仕立てる現実的な道筋です。新規事業の営業設計は、プロダクト開発と並走して進める必要があり、後追いで取り組むほど建て直しコストが膨らみます。事業立ち上げのなるべく早い段階で、買い手の意思決定構造を理解し、課題解決ストーリーの設計と検証を反復できる仕組みを組み込むことが、成果に直結します。検証で得られた商談ログ・失注理由・受注パターンを継続的に再投入する運用を組み合わせれば、組織としての売れる確率は加速度的に高まります。AIツールの活用も含め、営業についてお悩みの方は、プロセルトラクションにご相談ください。事業の立ち上げから売れる営業組織の構築まで、伴走支援が可能です。
この記事の執筆者
長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役
リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。200を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。







