最終更新: 2026年6月
既存顧客拡販設計とは、既存顧客への追加利用提案と紹介獲得をリストの細分化・打ち手の継続発掘・チームのナレッジ共有によって体系的に成果を出す営業手法です。
インサイドセールスのチームマネジメントにおいて、長期在籍メンバーが陥りやすい状態があります。「やることは分かっている」「自分の感覚で動いている」という状態です。経験が蓄積されているほど、「なぜうまくいっているのか」が自分でも説明できない状態になりやすくなります。この状態は、チームの数字が伸び悩む原因になります。
株式会社プロセルトラクションの2024年度4Q MVP賞を受賞した担当者D氏の実践事例から、セキュリティ研修サービス業界のインサイドセールス管理(既存顧客への拡販・紹介獲得)において、リストの3段階細分化・常に新しい打ち手を発掘するサイクル・利他的なナレッジ共有という3つの取り組みで、4Q3月に達成率141.8%を実現した手法を解説します。
この記事の目次
「ただ架電するだけ」では数字が出ない2つの構造的問題
自分の数字を常に意識した設計なしに架電量は意味をなさない
セキュリティ研修サービス業界のインサイドセールス管理において担当する業務は、既存顧客への2つのアプローチです。
【拡販】: 既存のお客様に対して、追加で利用してもらえる事業所の有無を確認する
【紹介】: サービスを他の人(他の事業所・知人企業等)に広めてもらえないか、紹介をもらう
この2つのアプローチは、新規営業と異なり「すでに信頼関係がある相手」への提案です。しかし、「信頼関係がある」からといって成果が自動的に出るわけではなく、「何件取らないと未達なのか」「どこからアポを獲得しないといけないのか」「アポを取るために足りないことは何か」を常に自分で把握した上で動くことが必要です。
「ただ架電するだけではもったいない」という認識が、成果を出す設計の出発点です。
取り組み1:リストの3段階細分化でアポが取れない理由を分析できる仕組みを作る
「なぜアポが取れないのか」が分かる構造にする
拡販・紹介営業でアポが取れない原因が「リストの質」にあるのか「トークの問題」にあるのか「タイミングの問題」にあるのかを見極めるためには、リストを状態別に細分化して管理する必要があります。
3段階のリスト細分化:
【最優先】次に電話すればアポが取れる:
過去の接触で関心を示してくれた・「また連絡して」と言われた・タイミングが合えばという状態の顧客です。このリストを最も優先して架電し、アポに変換することが最短の成果につながります。
【優先】見込みはあるが工夫が必要:
利用者数が少ない・他社サービスも利用している等、追加提案の余地はあるが何らかの条件が課題になっている顧客です。アプローチの切り口や提案タイミングを工夫することでアポに変えられる可能性があります。
【優先】今後の見込みとしてはあるがすぐではない:
「開所できたら良いな」「1年後くらいに新しいことを始めたいな」という段階の顧客です。今すぐの受注は見込めませんが、定期的な接触で関係を維持して将来の受注につなげます。
この3段階の分類によって、「今何の架電に時間を使うべきか」が明確になります。全員に同じ頻度で架電するのではなく、最優先リストへの架電量を優先することで、同じ架電数でも成果が変わります(プロセルトラクション実績, 2024年度)。
取り組み2:常に新しい打ち手を発掘して「作業」に陥らないサイクルを作る
毎日同じことをしていると作業になる
拡販・紹介営業で陥りやすいのが、「先週と同じことをしている」という状態です。架電・アポ・提案というルーティンを繰り返しているうちに、「なぜこのアプローチをしているか」を考えない状態になります。これが「作業」です。
作業になった状態では、成果が出なくなっても打ち手が思い浮かばなくなります。
常に新しい打ち手を発掘するための問いかけ:
- 今週は紹介を取るために何をすべきか: 紹介を依頼するタイミング・切り口・フォローの方法で試せていないことはないか
- 今週は拡販を取るために何をすべきか: 既存顧客への追加提案で変えられるアプローチはないか
- メールを送るための工夫: 電話以外の接触手段として、どのようなメールを送ると反応が生まれやすいか
毎週「できることは何でもやる」という視点で新しい打ち手を考え続けることで、成果が止まっても打ち手を変えて対処できる状態を維持します。
取り組み3:利他的なナレッジ共有でチームの底上げを加速する
「自分だけ知っている」を選ぶ人は良いナレッジを聞き逃す
インサイドセールスのチームで成果を出し続けるためには、「自分の数字だけを追う」姿勢では限界があります。
「利己的ではなく利他的を意識する」という考え方は、単なる精神論ではなく、実際に成果に直結する行動原理です。
惜しみないナレッジ共有がもたらす効果:
- チームのためにやったことは必ず自分に返ってくる
- 「自分だけ知っていよう」と思っている人は、他のメンバーが持っている良いナレッジを聞き逃している
- ナレッジを共有するチーム文化の中では、全員が互いの経験から学べるため、チーム全体の成長速度が上がる
具体的には、うまくいった提案の切り口・効果的だったフレーズ・特定の顧客属性への刺さり方の違いなどを、チームで積極的に共有します。「これは自分の強みだから教えたくない」という発想を持つと、チームの成長が止まるだけでなく、自分も他のメンバーから学べなくなります(プロセルトラクション実績, 2024年度)。
実践成果──3月達成率141.8%・全員達成・チーム体制8名に拡大
セキュリティ研修サービス業界のインサイドセールス管理での4Q実践成果は以下の通りです。
月次達成率:
- 1月:84.8%(2名達成)
- 2月:67.9%(2名達成)
- 3月:141.8%(全員達成)
定性成果:
- チームメンバー数:10月1名 → 11月1名 → 12月3名 → 1月3名 → 2月8名 → 3月8名と右肩上がりで増員
- クライアントから「事業としても劣後していた部分から増員」という評価を受け、体制の拡大を実現
1月・2月は一部メンバーのみの達成にとどまりましたが、3月は全員達成・141.8%という結果を出しました。リストの3段階細分化による優先度の明確化・常に新しい打ち手を発掘するサイクル・利他的なナレッジ共有という3つが機能した結果です(プロセルトラクション実績, 2024年度)。
よくある質問
既存顧客への拡販で成果が停滞した場合、どのように打開すればよいですか?
リストを3段階(次に電話すればアポが取れる・見込みはあるが工夫が必要・将来の見込み)に細分化し、最優先リストへの架電量を確保することが有効です。さらに毎週「今週は紹介を取るために何をすべきか」「拡販を取るために何をすべきか」と問い直し、打ち手を変え続けることで停滞を防ぎます。
チームのナレッジ共有を活性化するにはどうすればよいですか?
利他的なナレッジ共有の文化を意識的に作ることが重要です。うまくいった提案の切り口や効果的だったフレーズをチームで積極的に共有し、「自分だけ知っていよう」という発想を排除します。共有する文化があれば全員が互いの経験から学べ、チーム全体の成長速度が上がります。
既存顧客への紹介営業で紹介をもらいやすくするコツはありますか?
紹介を依頼するタイミング・切り口・フォローの方法を毎週見直し、試していないアプローチがないか常に探すことが重要です。電話だけでなくメールなど複数の接触手段を組み合わせ、顧客にとって紹介しやすい条件を整えることで紹介獲得率が向上します。
まとめ──既存顧客拡販・紹介営業で継続的に成果を出す3つの設計
既存顧客に対する拡販と紹介営業で成果を出し続けるための実践手法をまとめます。
リストの3段階細分化:
- 【最優先】次の架電でアポが取れる・【優先】見込みはあるが工夫が必要・【優先】将来の見込みの3段階に分類する
- 最優先リストへの架電量を確保することで、同じ行動量でも成果の量が変わる
常に新しい打ち手を発掘するサイクル:
- 毎週「今週は紹介を取るために何をすべきか」「今週は拡販を取るために何をすべきか」を問い直す
- 毎日同じことをしていると「作業」になる。打ち手を変え続けることで成果の停滞を防ぐ
利他的なナレッジ共有:
- 惜しみなくナレッジを共有することがチームの成長速度を上げ、自分にも返ってくる
- 「自分だけ知っていよう」は損。利他的に動くメンバーが多いチームほど全体の数字が上がる
「自分の数字を常に意識した設計」と「チームへの利他的な貢献」を両立させることが、既存顧客拡販・紹介営業を長期間安定して運用する鍵になります。
この記事の執筆者
長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役
リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。200を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。







