営業は、個人の結果に差がつきやすい業務です。結果を出し続けるトップ営業パーソンと、目標数字を達成できない人で差がつくのは、なぜでしょうか。

行動習慣、電話や訪問営業での振る舞い、時間管理など結果を出すための秘訣は1つではありません。マジックソリューションではなく、一つ一つの積み重ねによって差が生まれると考えるべきでしょう。単独で活動することの多い営業パーソンの行動や一連の流れは属人化しており、なかなか体系化するのが難しいところです。

しかし、結果の出る思考、行動をノウハウとすることで、誰もが真似し、実践できるようにすれば組織としての営業力も伸びることが期待されます。

今回は、結果を出したい営業パーソンのために、どんな切り口でノウハウを学べばいいのかシーンごと、フェーズごとに解説します。

お手本とするべき結果を出している人の選び方、質問の仕方なども参考にしてください。

営業のノウハウとは

ノウハウとは、know-howという英語に語源があります。すなわち「知識」「方法」を組み合わせた言葉で、「こうすればうまくいく」という意味で解釈するとよいでしょう。

逆に言えば、知識だけではうまくはいきません。正しいやり方を知っていて、かつ実行するから結果が出るわけです。

また、他の業務同様、営業にも「マニュアル」があります。しかし、よくある質問への答え方、社内ルールの報告書類の書き方を記した手引書に過ぎず「こうやれば確実に契約が取れる」という魔法のような法則はありません

顧客の状況、課題、予算感などは千差万別なので、臨機応変な提案力が求められためです。

確認しておきたい営業の基礎

営業のノウハウを学ぶ前にまずは抑えておくべき絶対的な基礎があります。これを体得せずに、いくらテクニックやトークのコツを学んでも、本質的に売れる営業パーソンになれる確率は低いでしょう。

扱う商材や、売り込む客層、業界などによって、求められる営業の作法は異なります。例えば、金融系や行政を相手にする営業は硬派で真面目な雰囲気が求められます。ファッションや美容などBtoCで、年齢の若い女性がターゲットなら親しみやすくおしゃれな雰囲気が有効です。

以下の3つは、まずノウハウを覚える前に、備えておきたい大原則と言っていいでしょう。

清潔感のある服装、誠実を感じさせる話し方

まず清潔感のある服装を心がけます。おしゃれでも、フォーマルでも、絶対的に清潔感は必要です。

その人を質の高い人間だと思わせる服装があります。必ずしも高額なブランド物が正解ではありません。その人に似合っていて、自然なものが必要です。

服装や髪型などは本来、営業の中身には関係がありません。しかし営業マンが不自然、不潔な服装だと、気になって何を説明されても相手の心には刺さらなくなります。逆に相手が気にならない服装が有利ということになります。つまり高級スーツではなく、その人の体型や年齢、流行などから外れていないものが妥当といえるでしょう。

実は話し方も同じです。魅力的なのは、相手が気を取られない自然な話し方です。適度に明るい声で、適切な声の大きさとスピードであること。なれなれしくも、堅苦しくもないちょうどよさが求められます。

顧客の役に立つ、課題を解決するというマインド

多くの営業パーソンは、自分の売上を伸ばすために商品を売ろうとします。しかし、売れるトップセールスマンは顧客のため、顧客の課題を解決するために営業します。

自分の商品のよいところばかりを話す営業マンと、相手の話に耳を傾け、その悩みや課題を掘り下げる質問をする営業マンのどちらが売れるでしょうか。こう質問されると、皆、後者の方が売れそうだと答えるのではないでしょうか。

それでも気がつくと、多くの人は売らなければならない商品の話を中心にするのです。もちろん顧客の話をただ漠然と聞いても意味はありません。顧客の課題解決のためのヒアリングこそが必要です。

顧客に好かれる必要はない

心構えでもう一つ大切なテーマがあります。それは顧客に好かれることが重要という「誤解」です。

経験の浅い営業マンが、お世話になっている顧客を相手に陥りがちです。つい、相手のご機嫌を取ったり、過度にへりくだったりしてしまいます。ただ顧客に好かれるために、相手の無理な要求を聞くことが営業の仕事でしょうか。

顧客に嫌われていいことはありませんが、話しやすくて何でも聞いてくれる人がいい営業マンではない、対等に価値を提供しあう相手であることは覚えておいたほうがいいポイントです。

【プロセス別】営業ノウハウの分解方法

ここからは、営業のプロセスに分けて、ノウハウを紹介していきます。様々な営業スタイルがありますが、便宜上、BtoBの新規開拓営業という想定とします。

どの項目も多くの営業のノウハウ本やセミナーなどで語られている内容が多いはず。したがって、営業経験のある人の多くは、以前にも聞いたことがあるのではないでしょうか。業種、扱う商品で差があるとは言え、幅広い営業マンに使える「王道」を学んでいきましょう。

その上で、自社で独自に培われてきた文化や、身近にいる売れる営業マンの独自の工夫を取り入れていくのが、近道ではないかと考えます。

かなり基礎的なノウハウなので、自分が実践できていない項目はこれを機会に積極的に取り入れてみてはどうでしょうか。

リスト準備

まずは営業をかける先を選ぶ方法です。現在は、交換した名刺や、過去に問合せのあった企業名など、すべてSFAでデータベース化されていることが多いかもしれません。

その場合、多くの有力企業には自社の営業担当者の名前が割り振られており、自己判断で営業を進められないことが多いものです。

売れる営業マンが作るリストは2種類です。1つはデータベースの中から、過去に契約していた、過去に資料請求があったなど、関係性の深い会社をまとめて、再度アタックできるようにすること。

もう1つは新たに自分のリストを増やす考え方。たとえばキーワード検索を使って見つけた企業のお問い合わせフォームからコンタクトする方法です。既存リストと重なる可能性はあるものの、こちらのことを知らないため「一度商品のことを聞かせてほしい」などと商談に発展するケースがあります。この問合せフォームへのアタックは、地道で重要なノウハウでしょう。

アプローチ

アプローチで重要な要素の一つは、アポイントまでの心理的なハードルを下げることです。アポイントを自分自身で設定する場合には、「10分程度でいいので」「ついでに近くまで寄るので」「Zoomの画面上でしかお見せできない資料があるので」などと理由付けをします。

「商品の話を聞いてください」と言わないこともポイント。「貴社のお話もお伺いしたい」「情報交換したい」「Web会議をさせてもらえますか」などの設定なら売り込み色が弱まります。

ハードルを下げておきながら、できる営業パーソンは、決裁者と会おうとします。担当者だけに営業するよりはるかに成約率が高いことを知っているからです。Webのほうが、上長の予定も気軽に調整してもらえるはずなので、だめもとで全社に「判断権のある方」の同席も打診しましょう。

提案の準備

アポイントが取れてから、実際のセールスの場面までの準備で大きな差が生まれます。

できる営業パーソンは、その企業にあった提案準備を行います。

具体的には、企業の課題を想像し、それを解決する仮説を立てます。すると、どのような順番で話を展開するか、資料を見せるかなどの準備もできるのでセールスの質が向上します。

また、先方の企業名が入った提案資料を用意した事実も相手に誠意を伝えることにつながります。いつも、いちから資料を作るのは時間的に不可能でも、一部でも先方の社名を入れるのは効果的です。

クロージング

営業パーソンの腕で差がつくのはクロージングです。「買った方がいい。買ってください。なぜならば~~だからです」とはっきり伝えることはもちろん、できる人は「いつまでに」と期限も明確にします。

断られるのが怖い人は、期限を曖昧にしたままなので、いつになっても相手の意志をコントロールできません。運よく相手が決心してくれたら受注となります。

急かしすぎると、相手の意欲が醒めてしまう、購入を諦めてしまうことは確かにあります。しかし、程よい強さで相手の背中を押すことも重要

相手の都合を聞かずに「まずは●日までに方向性を決めてほしい。なぜならば~」という理由をつけて、必ず期限を区切ると習慣づけることをおすすめします。

売上見込みの管理

売上見込みは厳しめに立てる。これも鉄則です。結果を安定して出せる営業マンは、案件別に成約が期日までに間に合うかどうかの見通しも精度が高いです。

クロージングがしっかりかかっていれば、相手の反応によっていつごろまでに決着するか、そもそも成約してくれそうかの見通しが付きやすくなります。

さらに欲しい売上金額の2倍の水準まで、「成約が五分五分」の見込みの案件を増やしておくことも重要なノウハウです。それだけの物量が実行できていれば、悪い方向に外れたとしても売上が達成できるはずだからです。

トラブルシューティング

契約後に顧客から思わぬクレームを受けるなど、営業にはトラブルもつきもの。こうしたときに慌てふためいてしまうのが普通の営業マンです。

結果の出る営業マンは、気が重いクレームでも素早く対応します。そして、こちらに非があるようなら、言い訳をせずに潔く非を認めて代替策を考えます。この対応が冷静で、的確なものであれば、先方の怒りもおさまりやすいもの。

こうしたトラブルへの対応の誠実さで、相手からの信頼を深めることもあります。その結果、新たな商品の契約を獲得するなど、したたかにアップセル・クロスセルの話をまとめてみせるのが、真の営業マンと言えるでしょう。

ノウハウの共有、伝承の方法

営業ノウハウは、ここまで紹介した以外にも星の数ほど存在します。どんな営業パーソンでも、自分なりに工夫をしてよりよい結果を出そうとするからです。

また近年は、PDCA思考が広まり、あらゆる営業施策を数値化して結果を測定する習慣が定着してきました。そのために、感覚的に「なんとなくよさそう」ではなく、論理的に結果の出るノウハウが厳選されるようになってきました。

ここからは、伝える側、教わる側の心がけるべきポイントを解説します。

伝える側の注意点

まずノウハウを伝えるべき立場の営業パーソンは、企業内にノウハウ共有の仕組みを作ると良いでしょう。組織全体の営業力強化につながります。

またノウハウは、社内の人が手軽にアクセルできる形で共有されることも重要です。

  • 提案に使用した営業資料
  • セールス場面の録音、録画
  • 教わる側が同席し、レポートする
  • 結果での出たメールの文面

など学べる点は様々あります。

また、補足説明なく資料を共有するのは危険もあります。資料のページの順番、ロジック展開にノウハウがありますが、表面的に真似をしても結果が出ないことや資料が改悪される場合も多々あるからです。

資料の使い方は最低限メモレベルでもいいので伝える、または勉強会、成果発表会という形で、伝える側の営業マンが講師を勤めてセミナーにするのも効果的です。この際に、エビデンスとしてどのような結果が得られたかを数字でも補足すると良いでしょう。

習う側の注意点

習う、教わる側は、表面的になぞらないことが重要です。

送ったメールの文章を1つ取っても、なぜそのような文面にしたのかを自分なりに考え、質問を伝える側の営業マンに教わるようにします。

盲目的な真似をしても、長期的な成長にはつながりにくいでしょう。

目安としては、自分が後輩に代わりに教えられるレベルまで深く理解することが重要です。

知ることよりも、実践すること

何よりも大切なことは、習得したノウハウを使って、実践することです。ただの知識として持っていてもなんの進歩もありません。営業結果も向上しません。

また、自分の手足を動かし、実行することで、すぐにうまくいくこと、それでもうまくいかないことが出てくるはずです。その際にも、自分のやり方をもう一度疑ってみて、再度教わるのもおすすめです。

ぜひノウハウを吸収して結果を出し、自分でも新たなノウハウを開発していってください。

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