営業担当者は、企業の中で売上を作るプロフェッショナルです。営業パーソンの仕事は、多くの企業にとって欠かせない重要な仕事の一つ。

会社の業績を伸ばすには、営業の業務内容の質を高めることや再構築も有効かもしれません。普段、当然のように行われている業務の内部にこそ、改善ポイントが隠れている可能性はあります。

営業の仕事とはどのようなものかを改めて整理するとともに、新たなトレンドも含めて解説します。

営業の仕事とは

株式会社のような営利組織には、ほぼすべて営業職が存在します。

営業職は、身近で歴史のある職業で、貨幣の登場とともに生まれたという説もあります。物品との交換を行う「交易」に営業のルーツがあるといえるでしょう。近年は、営業職が相手にする顧客の種類や規模も複雑化してきました。組織内では、営業職の分業化が進み、これまでにはなかった営業スタイルも注目されています。

営業の定義

営業は「営利の目的で同種の行為を反復継続すること」(日本大百科全書)と記載されています。

企業や団体が利益を得るために、繰り返しかつ長期に渡って行われる活動が営業だということになります。

実際に自身の所属する企業の営業パーソンも「同種の行為」つまり商談、提案、受注、アプローチなどの業務を繰り返し行っていることでしょう。後述するように法人営業、個人営業、ルートセールス、カウンターセールス、インサイドセールスなど多くの種類があり、最終的に売上を上げる目的は同じでも方法は異なります。

販売職との違い

営業と販売はどう違うか定義で比較してみましょう。

企業の売上を向上させるために「繰り返し同種の行為を反復している」という点では、営業パーソンも販売員も同じに思えます。営業職と販売員は一般的に、以下のような違いがあります。

販売:店舗などを訪れた見込み客、購買意思を示す顧客に商品説明・提案・金銭の授受を行う

営業:見込み顧客に対して能動的にアプローチし、商談・提案・顧客の問題解決などを行う

顧客側に購入を主導する意志がある場合は「販売」、こちら側が主導して購入を促すケースが「営業」と捉えると分かりやすいのではないでしょうか。

ただ住宅展示場で来場者に対して提案を行う業務は販売ではなく営業と認識する人が多いでしょう。状況や場所よりも、仕事内容にフォーカスして考えた方が理解しやすいかもしれません。

両者の線引きや定義は、企業によって異なる場合があります。

マーケティングとの違い

マーケティングと営業との境界線も一般論としては、以下のように説明できます。

マーケティング:見込み顧客を創出し、顧客の購買意欲を高めるための活動

営業:見込み顧客からの案件受注や、既存顧客のフォロー

コロナ禍以降、だいぶ商談スタイルが変わりました。

以前は「営業が客先を訪れるのは当然」であり、対面商談を経て契約が締結されるものでしたが、最近はオンラインのやり取りのみで契約となるケースが増えています。ただし、営業のオンライン化が進んでいるものの案件獲得にマーケティングとの連携が重要であることは共通しています。

古くはマーケティング職との分類はありませんでした。すなわち顧客創出や初期のフォローを行うのも営業職の役割の範疇だったといえます。

営業職の種類と分類方法

さまざまなビジネスが発展する中で、営業手法も多様化しました。以下では、一般的な営業職の種類を紹介します。

新規開拓/掘り起こし営業/ルート営業

新規開拓営業は、取引実績のない顧客から契約の獲得を目指します。通常は受注または販売までの道のりが遠く、信頼獲得、顧客ニーズのヒアリング、適切な提案を行うなど、総合的な営業としての力が問われます。

掘り起こし営業は、休眠顧客や離反顧客に対して関係性を回復するために行う営業手法です。アプローチ手法としては新規開拓とよく似ていますが取引経験がある分、自社への認知はあるものの悪いイメージが残っている場合は払拭する必要があります。

ルート営業は既存顧客に対し、フォローや納品、追加の注文獲得を中心におこなう営業スタイルです。「御用聞き」などとも呼ばれますが、良好な人間関係を保ち継続受注・追加受注を目指します。頻繁に同じ顧客のもとへ向かう勤勉さが求められます。

BtoB/BtoC

法人を顧客とする営業がBtoB営業、個人を顧客とする営業がBtoC営業です。

BtoB営業は、商材の単価が高額・かかわる人数が多い・契約に至るまでの期間が長く、購入後も関係性が継続しやすいという特徴があります。企業体を説得するために、高度な論理性や戦略性が求められます。

BtoCは、低単価商品をいかに早く、広く販売するかが重視される営業スタイルです。ただし個人の場合でも、家族で話し合って決める高額な商材などではBtoBのようなプロセスやテクニックが求められます。BtoBに比べると、人柄や親しみのある雰囲気をすばやく作る能力などが必要とされるでしょう。

フィールドセールス/インサイドセールス

フィールドセールスは、いわゆる外回り営業です。営業パーソンが自ら顧客先へと出向いて、商談を通じて商品・サービスの説明をおこないます。移動時間や交通費をともなうため効率は落ちますが、直接対面することで高い受注率が期待されます。

内勤型営業とも呼ばれるインサイドセールスは、社内やスタッフの自宅など顧客とは物理的に離れた状態でメール・電話・インターネットツールなどを通じ、アプローチをおこないます。また、インサイドセールスはクロージング担当者とマーケティング部との橋渡し的な役割を担うことも多いです。比較的新しい営業スタイルですが、フィールドセールスとの分業化により組織全体での受注効率アップを図ります。

プッシュ型営業/プル型営業

プッシュ型営業とは、能動的に顧客にアプローチする営業手法です。テレアポや飛び込み営業などの従来営業型の営業スタイルの多くは、プッシュ型です。顧客のニーズとは関係なくこちらから情報を伝達する結果、相手には自社の情報を確実に届けられる一方、プッシュ型営業が嫌われる場面も少なくありません。

一方、プル型営業は顧客側からのアプローチを促す営業手法です。典型的な例としてはブログなどの独自コンテンツや広告によって、自社の商品を認知してもらい、問い合わせに結びつける手法があります。ただし、自社のほか競合他社にも関心を持っている可能性が高く、すばやく自社への興味を高める営業スキルが求められます。

またマーケティングの仕組みが機能していなければ、思うように問い合わせが得られないことも知名度や競合優位性が低い事業では苦労するかもしれません。

営業活動の一連のフロー

営業活動の種類・手法はさまざまですが、基本的なフローはある程度決まっています。
ここでは、営業活動の一連の流れをご紹介します。

リード(見込み顧客)の創出

リードを生み出すには、過去に接点のある見込み客の候補と接触を試みる必要があります。

専門のマーケティング部がこの役割を担当する企業が増えています。接触する方法には、メール配信・DM・コンテンツ投稿・広告などのほか、営業職がテレアポを仕掛ける場合も少なくありません。

購買意欲を高めるためのアプローチ

購買を即決してくれる顧客に対しては、営業職のできることは多くありません。一方で、関心を持ちながらもただちに決断しない顧客に対しては、購買意欲を高めるためのアプローチが効果的です。

新商品やキャンペーンの案内、無料セミナーへの招待、定期的なヒアリングなどを通して、囲い込みの対策を行います。案内の頻度が多いと迷惑がられ、少ないと忘れられてしまいます。顧客によって好みが異なるためさじ加減が難しいと言われます。

アポイントを取り商談する

相手の関心が高まってきたら、よりくわしい商談を行うためのアポイント設定を行います。

対面またはオンラインで顧客と商談する場合、顧客がもっている具体的な悩み・課題・要望に対して、ベストな回答をすることで、成約へとつなげられます。営業パーソンの腕によって最も差がつくフローです。

営業担当者は、商談内容を反映して見積りや提案資料などを提示します。

成約~契約締結

成約したら、契約書を締結します。口頭の約束だけでは後のトラブルにつながりかねません。

契約内容、双方の合意した内容を文書に残し、継続的な関係を築くためにも、非常に重要な業務です。

契約書締結までは、先方に心変わりがあると失注してしまう可能性があるため、営業職は決して油断できません。

アフターフォロー/アップセル・クロスセル

契約締結後には、商品やサービスの使用状況や課題などのヒアリングを継続します。

企業によっては、インサイドセールス担当者が担う場合もあります。サブスクリプションモデルの登場などにより、近年では成約後の関係性維持の重要性が高まっています。せっかく購入されても、先方が十分に使って効果を感じなければ、早期に解約されてしまう恐れがあるからです。

アフターフォロー、カスタマーサクセスが機能すると、アップセル、クロスセルにもつながります。アップセルとは、よりグレードの高い商品を購入してもらうこと、クロスセルは商品に付随するオプションや複数商品を受注することです。

売れている営業パーソンの特徴を考える

同じ商品を販売していても、スタッフによって営業成績には差が生じます。運やタイミングの要素以上に、営業パーソンのスキルには明確に違いがあります。チーム内の営業パーソンの平均的な受注力が高まると、チーム全体の営業成績である売上は飛躍的に高まるでしょう。

かつて「営業スキルは属人的なものでエース営業パーソンのスキルを真似るのは困難」とされていました・しかし、現代の組織では営業スタイルやスキルを体系化し、組織全体への浸透を図る企業が増えています。

ロジカル(論理的)に行動する

とくにBtoBの営業では常にロジカルでなくてはなりません。感情的な営業が有効なのも、計算されたロジカルの土台があってこそです。

  • 顧客ニーズや課題を把握する
  • 顧客の課題解決、ニーズを満たす方法を考える
  • 上記シチュエーションで、自社商品やサービスができることを考える

一連の流れを常に意識できれば、顧客目線から見ても課題解決に寄り添ってくれる頼もしい営業パーソンとして認識されます。おのずと受注する機会も増えるでしょう。

対応が迅速

ビジネスは、常にスピーディーに動いています。現場の最前線で働く営業パーソンにもスピードが要求されます。

顧客のニーズを察知したのにアクションが遅れるのは要注意です。その間に競合他社がすでにアプローチしているかもしれません。

スピードの重要性は日常の些細な場面でも同様に要求されるでしょう。メールや問い合わせの返答が早い営業パーソンは、それだけで顧客からの信用がアップします。

ロジカルな行動を、速やかにおこなうことは優れた営業パーソンの絶対条件です。

専門知識・話題が豊富

営業担当者は、その道のスペシャリストになることで顧客からの信頼を勝ち得ます。また、豊富な話題を提供することで、自身の教養の深さや人間的な魅力をアピールできます。

ただ商品やサービスが高度に発達している分野では、営業担当者と商品説明の担当者が分かれているケースも少なくありません。営業パーソンにとって大切なことは、単に知識を深めることではなく、顧客から「この人に質問すれば、正しい答えが得られる」という信頼を得ること。

したがって営業パーソンが「教える」姿勢ではなく、最短で顧客に正しい情報を提供するアクションを心がけましょう。社内のデータベースを活用したり、社内の専門家に顧客に代わって質問をしたり、解決策は複数あります。顧客のためにベストな選択を考えるのが優れた営業パーソンです

顧客目線で提案する

優れた営業パーソンは顧客目線です。

顧客の視点で物事を考え、想像することでニーズや課題を的確につかむのです。ヒアリング、データ収集も常に顧客の課題を見つける、解決する目的から逆算されたものでなければなりません。

顧客自身が言語化できないこと、潜在化していない課題は少なくありません。常に顧客目線で物事を捉える習慣があれば、顧客に先回りしてそれらの課題を発見、抽出できます。

解決策までセットで提案すれば、顧客は感動することでしょう。

数字を把握し、意識している

営業は数字との戦いです。目標達成には、自身の数字と、チームとしての進捗把握が欠かせません。

優れた営業パーソンはチームの進捗状況を常に把握しています。SFAなどツールを使って、最新の詳細数字を確認するまでもなく、毎日のルーティンとして自身の中でアップデートするのです。

目標数字を暗誦できなければ、達成の方策も十分に練られないのではないでしょうか。達成の見通しが厳しいときにこそ、営業パーソンのレベルや本領が発揮されます。

売れる営業パーソンになるには

営業パーソンとして最も価値が高いのは、商品やサービスをたくさん売れる営業パーソンです。

営業成績をコンスタントに残せれば自ずと評価も向上し、より大きなプロジェクトに参加できます。チームの業績や個人の収入も高まるでしょう。

売れない営業パーソンがトップセールスになるためのポイントを3点ご紹介します。

売れているエースのセールスを参考にする

最も手っ取り早い方法は、チーム内のモデルを参考にすることです。社内のトップ営業パーソンの行動を分析し、営業手法の再現を試みます。

最も好成績の営業担当者が行う仕事の進め方を、会社主導で分析し営業全員に共有すれば、自分だけでなくチーム全体の数字が向上します。このときITツールを活用すると、トップセールスの動きを可視化でき、情報共有がよりスムーズになります。

積極的に自己投資する

営業手法やビジネススキルに関しては、インターネットや書籍などに無数の情報があります。あるいは、オンラインセミナーやオンライン研修などを活用することも可能です。さらには、信頼できるニュースをしっかりとキャッチすることも重要です。

必ずしも会社の許可を得なくても、自腹での参加がおすすめ。最終的には自身のスキルになるためです。

営業パーソンが積極的に自分自身に投資して、営業の基本スキルを高めると、クロージング、提案、ヒアリングなどあらゆる対人能力がアップします。

数多く営業経験を積む

実践的な経験も重要です。商談の実務を通して学べることは非常に多いためです。

このとき、マネージャーがフィードバックをおこなうことで、実践的・効率的な学びにつなげられます。

対面の商談の場合は、以下の指導法があります。

  • 部下が上司に同行して、上司の営業手法を学ぶ
  • 上司が部下に同行して、商談後にフィードバックをおこなう

オンラインの場合は、双方がモニタリングできるため、より簡単に学習できます。

受注に向けて試行錯誤を繰り返す

営業パーソンとして安定的に成果をあげている人は試行錯誤が得意な傾向です。

・仮説を立てる(Plan)
・試してみる(Do)
・結果を検証する(Check)
・改善点を探す(Aciton)

そして仮説を修正して次のトライにつなげる、いわゆるPDCAが正しく、素早くできる営業パーソンは多くの組織で重宝されます。

試行錯誤は一度や二度程度ではうまくいきません。

1つの案件に対しても試行錯誤を行う、また営業戦略そのものもPDCAサイクルによって大きく変わる場合があります。

ヒアリング力を養う

営業ではこちらが商品の魅力を伝えるのと同じか、それ以上に相手の話を聞く力、傾聴力が求められます。

優れた営業パーソンは聞いた話から、相手の悩みや課題を見つけ出すものです。相手も把握できていなかった潜在的な課題を明らかにできると、顧客からはこれまで以上の信頼が得られるでしょう。

常に目標から逆算する

安定的に成績をあげるには、逆算が大切です。

  • ・残りの営業日数と、目標達成に必要な金額を把握
  • ・達成のために必要な商談件数を割り出す
  • ・今週中に設定すべきアポイント件数を計算する

このように逆算できる能力が重要です。 行き当たりばったりではなく、逆算した営業を心がけましょう

まとめ

営業とは、会社の利益のために継続的・反復的におこなう活動のことです。民間企業は、営業がなくては成り立ちません。

したがって、チームとして営業を定義し、最大限の成果を上げられる体制を取りましょう。

記事内で紹介したように営業にはたくさんの種類があります。しかし、身につけるべき技術や取るべき行動の基本は大きく変わりません。チームの営業力強化のために本記事を参考にしていただけたら幸いです。

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