相談起点の架電とは、商材説明から入らず相手が今決めるべき論点から会話を始める架電設計です。架電のKPIが1日170件という水準になると、多くの組織で「量をこなすと質が落ちる」という声が上がります。しかし量と質がぶつかるのは、両者が矛盾しているからではなく、量を支える仕組みと質を支える会話設計が、どちらも用意されていないからです。本記事では、1日170コールを維持したまま3ヶ月で達成率124%→188.9%、アポイント率11.6%→17.3%へ改善した事例をもとに、①集中力を切らさない時間設計、②通電を最大化するリスト運用、③商材起点から相談起点への会話設計という3つの設計を、再現できる手順として解説します(出典: プロセルトラクション社内実績、2026年時点)。
最終更新: 2026年8月
この記事の目次
なぜ「量を追うと質が落ちる」のか──架電の質を下げる3つの構造
架電量の目標と、アポイントの質の目標は、しばしば対立するものとして扱われます。しかし現場で実際に起きていることを分解すると、量そのものが質を壊しているのではなく、量を積み上げるための設計が抜けているという構造が見えてきます。停滞の要因は、次の3つに整理できます。
- 集中力の枯渇──1日170件の密度で架電を続けると、時間の経過とともに判断の細かさが失われ、終盤の会話が雑になる
- リストと商材の距離──相手の関心が別のテーマに向いているリストへ、商材の説明から入るため、聞く理由のない話として処理される
- 配分の調整で解こうとする──「今月は量を優先」「来月は質に振る」と繰り返し、その都度どちらかが犠牲になって成果が横ばいになる
架電の後半で起きているのは、能力低下ではなく集中力の枯渇
1日170件という架電量は、単純計算で稼働時間のほぼ全てを架電に充てることを意味します。この密度で電話をかけ続けると、担当者の話し方は時間の経過とともに確実に変わります。
- 序盤──相手の反応に合わせて言い回しを変えられている
- 中盤──決めたトークをそのまま読み上げる比率が増える
- 終盤──断られた時点で、会話を続ける糸口を探さなくなる
ここで起きているのは、担当者の能力が下がることではありません。集中力が回復しないまま消耗し、判断の細かさが失われていく現象です。つまり、量が質を壊しているのではなく、集中力の設計がないまま量を積み上げていることが問題なのです。
「興味を持たれにくいリスト」に商材から入る構造的な不利
もう一つの要因は、リストと商材の距離です。たとえば、店舗物件を探すためにマッチングサービスへ登録した会員に対して、店舗向けのPOSレジサービスの商談を打診する、といったケースがこれにあたります。
このとき相手の関心は物件探しに向いており、レジの検討はまだ視野に入っていません。そこへ商材の説明から入れば、相手にとっては「頼んでいない提案」になります。断られる理由は商材の価値ではなく、関心の順番が合っていないことにあります。
- 相手が今考えていることと、提案内容が接続していない
- そのため、説明を聞く前の段階で会話が終わる
- 担当者は「リストが悪い」と結論づけ、改善が止まる
売り手の認識と買い手の実態のギャップ
買い手の側から見ると、この状況はさらに分かりやすくなります。開業準備の途中にいる相手にとって、電話口で商材の説明を受ける時間は、本来やるべき作業を止めることを意味します。内容に価値があるかどうか以前に、今この瞬間に聞く理由が見当たらないのです。
| 局面 | 売り手の認識 | 買い手の実態 | 本来打つべき手 |
|---|---|---|---|
| 架電の後半 | 件数の遅れを取り戻す時間帯 | 相手の反応を拾う余力が残っていない | 集中が切れる前に区切りと休憩を入れる |
| リストの選定 | 登録会員はすべて見込み顧客 | 登録した目的と商材の距離が遠い | 反応実績と属性でリストを絞り、当てる順番を決める |
| 会話の入り口 | 商材の価値を説明すれば興味を持つ | 検討の順番が来ておらず聞く理由がない | 相手が今決めるべき論点から入る |
| 断りの返答 | ニーズなし。リストから外す | 優先度が低いだけで、必要性は否定していない | 検討順序を提示し、相談の文脈に置き直す |
| 成果が出ない時 | トークの表現を磨けば改善する | 説明が長いほど、聞く理由のない時間が延びる | 説明量ではなく入り口の設計を変える |
売り手が「価値ある提案」と考えているものが、買い手には「順番の来ていない話題」として届いています。この認識のずれを埋めない限り、トークの表現をいくら磨いても結果は変わりません。誰に・どの順で・どの深さで接触するかを先に定義してから架電するABM設計〜テレアポ代行の一気通貫の考え方も、この前提に立っています。
量と質は、意志ではなく設計で両立させる
以上を踏まえると、両立のために必要なものは明確になります。量については、集中力が落ちる前提で時間を区切る仕組みを持つこと。質については、相手の関心の順番に合わせて会話の入り口を変えることです。どちらも精神論ではなく、手順として決められる領域です。
多くの現場では「今月は量を優先する」「来月は質に振る」といった配分の調整が繰り返されますが、その都度どちらかが犠牲になり、成果は横ばいのまま推移します。必要なのは配分の調整ではなく、量を支える仕組みと質を支える設計を、それぞれ別の手段で用意することです。以降では、その具体的な組み立て方を3つの設計として順に見ていきます。
設計①:集中力を切らさない「20分架電・10分休憩」の時間設計
量を守るための仕組みから見ていきます。ポイントは、1日を通した平均で管理するのではなく、集中が持続する単位まで時間を刻むことです。
1日単位で管理すると、後半の質は必ず落ちる
「1日170件」という目標を1日単位のまま扱うと、担当者は進捗の遅れを取り戻すために後半で件数を詰め込みます。その結果、会話を早く終わらせる方向に力が働き、アポイントにつながる可能性のある通話まで切り上げてしまいます。
進捗管理の単位が粗いほど、遅れは終盤にしわ寄せされます。逆に単位を細かくすれば、遅れはその区切りの中で吸収され、終盤に無理が集中しません。管理単位の違いは、次のように現れます。
| 比較軸 | 1日単位で管理する | 20分単位で管理する |
|---|---|---|
| 遅れの吸収先 | 終盤の数時間にしわ寄せされる | その区切りの中で吸収される |
| 終盤の通話 | 件数を稼ぐため早く切り上げる | 序盤と同じ密度で反応を拾える |
| 集中の起点 | 1日に1回(始業時) | 1日に十数回(区切りごと) |
| 休憩の扱い | 余裕があれば取るもの | 進捗に関係なく先に固定するもの |
| 改善の材料 | 1日の合計件数のみ | 区切りごとの件数と通電率 |
| 導入コスト | ─ | タイマー1つ |
20分の集中と10分の休憩を機械的に繰り返す
有効なのは、時間を短い区切りで反復させる方法です。本事例では、時間管理のタイマーを用いて「20分架電・10分休憩」を徹底し、腕時計型端末で計測しながら一日を進めていました。運用は次の4点に整理できます。
- 20分は、集中が途切れる前に終わる長さに設定する──切れてから休むのでは遅い
- 休憩の10分は、席を離れて画面から目を外す時間に充てる──同じ席での作業は回復にならない
- 区切りごとの架電件数を把握し、遅れをその区切り内で調整する──1日単位に戻さない
- 区切りの終わりに、次の区切りで当てるリストを開いておく──再開時の立ち上がりを速くする
この形にすると、1日の中に何度も「集中し直す起点」が生まれます。終盤の通話でも序盤と同じ密度で相手の反応を拾えるようになり、170件という量を保ったまま会話の質が落ちにくくなります。休憩明けに準備から始めると集中が戻るまでに数件を消費してしまうため、リストを先に開いておく4番目の手順まで含めて運用することが重要です。
区切りの長さは、通電率の落ち込み地点から逆算する
区切りの長さは、業務内容に合わせて調整して構いません。重要なのは長さそのものではなく、集中が切れる前に必ず休憩が来るという状態をつくることです。人によって持続する時間は異なるため、最初の数週間は次の手順で自社の適正値を探ります。
- 区切りごとの架電件数と通電率を記録する
- 質が落ち始める地点(通電後の会話が短くなる時間帯)を特定する
- 落ち込みが見え始める手前に区切りを置く
- 数週間ごとに再計測し、区切りの長さを更新する
落ち込みが見え始める手前に区切りを置けば、無理なく維持できる水準が決まります。導入コストはタイマー一つで済むため、着手のハードルが低い点も現場向きだといえます。
休憩を「取れたら取る」から「先に決める」へ
多くの現場では、休憩は余裕があれば取るものとして扱われます。しかし架電のように消耗の激しい業務では、この扱い方が最も危険です。余裕がある日ほど休憩を取り、追い込まれた日ほど休憩を削ってしまい、必要なときに回復できないためです。
- 休憩の時刻を先に固定し、進捗にかかわらず動かさない
- 休憩を削って件数を稼ぐ運用を、組織として明確に禁止する
- 区切りごとの実績を記録し、疲労が出やすい時間帯を特定する
休憩を先に決めておくことは、担当者への配慮ではなく、質を守るための業務設計です。組織としてこの前提を共有できているかどうかで、高い架電目標を継続できる期間は大きく変わります。
高い架電目標を継続できる体制づくりでお悩みでしたら、プロセルトラクションの営業代行にご相談ください。
設計②:同じ架電数で通電を増やすリスト運用の3原則
次に、同じ架電件数からより多くの通電を生み出すための運用です。かけた件数と話せた件数は別物であり、この差を縮めるだけでも成果は変わります。本事例で機能していた運用は、次の3原則に整理できます。
| 原則 | 具体的な運用 | 得られる効果 |
|---|---|---|
| 1. 優先順位を先に決める | 取引実績や過去の反応履歴で分類し、接触が見込める先から順に架電する | 「どこにかけるか」の判断が消え、集中力を会話に配分できる |
| 2. 属性を絞る | 店舗数0〜1件の個人事業主にあたる会員を中心に当てる | 有効だったトークをそのまま横展開でき、改善速度が上がる |
| 3. 時間帯を分けて複数回当てる | 朝・昼・夕に分け、1日3回程度まで。不在時は折り返しを促す | 架電数を増やさずに通電の母数が広がる |
原則1:反応が返る可能性の高いリストから当てる
まず優先順位です。取引実績や過去の反応履歴から、接触が見込める先を分類しておき、そこから順に架電します。本事例でも、優先度の高いリストから順に当てる運用が徹底されていました。
順番を決めておく利点は、担当者が「どこにかけるか」を毎回考えなくて済むことにあります。判断の回数が減れば、その分の集中力を会話そのものに配分できます。架電中の疲労は、話す行為そのものよりも、細かい判断を繰り返すことから生じている面が大きいためです。ここで設計①の時間設計と効果が重なります。
また、優先順位が組織で共通化されていれば、担当者ごとに当てているリストの質がばらつくこともなくなります。成果を比較する際、リストの違いという変数が消えるため、差の原因を会話の内容として分析できるようになります。運用の標準化は、担当者の裁量を奪うためではなく、改善の材料を揃えるために行うものだと捉えると分かりやすいでしょう。どのリストを優先して当てるかの判断軸は、高受注率×高LTVリードの見極め・スコアリングの発想と直結します。
原則2:対象を絞り込むことで、話す内容が定まる
さらに有効なのが、リストの属性を絞ることです。本事例では、店舗数が0〜1件の個人事業主にあたる会員を中心に架電していました。
- 開業前後の層は、判断材料が不足しており相談ニーズが強い
- 属性が揃うと、有効だったトークをそのまま他の相手にも試せる
- 反応の違いが属性差ではなく、話し方の差として比較できる
対象を絞ることは、機会を狭めることではありません。同質の相手に繰り返し当てることで、改善の速度が上がるという効果のほうが大きく効いてきます。属性ごとに言葉を作り分ける発想は、リードセグメント別スクリプト作成・改善スキームと同じ構造にあります。
原則3:時間帯を変えて複数回、折り返しまで含めて通電を作る
対象が事業者の場合、日中は接客や準備で電話に出られないことが珍しくありません。一度で判断せず、時間帯を変えて接触することが前提になります。
- 朝・昼・夕と時間帯を分け、1日に3回程度まで架電する
- 不在時には折り返しを促す形を整え、着信からの再接触を狙う
- 何回目・どの時間帯で通電したかを記録し、リストごとの傾向を掴む
同じ架電件数でも、時間帯を分散させるだけで通電数は明確に増えます。件数を増やさずに母数を広げられるという意味で、費用をかけずに成果を伸ばせる領域だといえます。
複数回架電は、回数の上限と間隔をセットで決める
一方で、短い間隔で何度もかけ直せば、相手に負担を与えかねません。1日あたりの上限回数と、次に架電するまでの間隔をあらかじめ決めておくことが前提になります。回数を管理せずに接触を重ねると、通電はしても最初の一言で切られる確率が上がり、かえって効率を落とします。
- 1日あたりの架電上限回数を決める(本事例では3回程度)
- 次に架電するまでの最短間隔を決める
- 何回目の接触で通電したかを記録する
- 属性ごとに「何回まで当てるのが適切か」の基準を更新する
全件を一律に扱うのではなく、反応の傾向に応じて回数を配分することで、限られた架電量をより成果につながる先へ振り向けられます。接触の設計とは、回数を増やすことではなく、相手が対応できる状況を狙って当てにいくことだと考えると、適切な線引きが見えてきます。
設計③:商材起点から相談起点へ転換する会話設計の4ステップ
ここからが質の側の設計です。相手の関心と商材が離れている場合、入り口をどう変えるかで結果は大きく変わります。
商材から入った瞬間に会話が終わる理由
開業準備中の相手にとって、決めるべきことは山積みです。物件、採用、許認可、資金計画と、優先度の高い課題が並んでいる状態で、レジやオーダーの仕組みは後回しになります。そのため、商材の説明から入ると次のような反応が返ってきます。
- 「いえいえ、レジまではまだ考えていません」
- 「まずは物件を決めないと、その先は何も動かせないので」
- 「やることが多すぎて、そこまで手が回っていないんです」
これらは商材への否定ではなく、順番が来ていないという意思表示です。断りの言葉として受け取ってしまうと、改善の方向を見誤ります。
ここを「価値が伝わっていない」と解釈すると、説明を厚くする方向に改善が向かいます。しかし相手が求めているのは詳しい説明ではなく、今考えていることとの接点です。説明が長くなるほど、聞く理由のない話を聞かされている時間も長くなり、印象はむしろ悪化します。改善すべきは説明の量ではなく、会話の入り口をどこに置くかという設計そのものです。
商材起点と相談起点の違い
同じ商材・同じリストでも、入り口を変えるだけで会話の展開は次のように変わります。
| 比較軸 | 商材起点の架電 | 相談起点の架電 |
|---|---|---|
| 最初の一言 | 「POSレジのご案内なのですが」 | 「今の状況はいかがですか」 |
| 会話の主導権 | 売り手の説明 | 買い手の状況説明 |
| 提示するもの | 商材の機能と価格 | 先に決めておくべき論点 |
| 相手の受け止め方 | 頼んでいない提案 | 開業相談の一部 |
| 断られ方 | 「まだ考えていません」で終了 | 優先課題が語られ、会話が続く |
| 打ち合わせの位置付け | 商材の説明の場 | 論点を整理する場 |
相手の意思決定順序に商材を差し込む
有効なのは、相手が今考えている検討事項の中に、商材が影響する部分を見つけることです。前述の例でいえば、店舗のオペレーションをどう組むかという論点がそれにあたります。
注文をスタッフが取るのか、来店者自身の端末で受けるのか。この選択によって必要な人員数が変わり、必要な人員数が変われば店舗の広さが変わります。広さが変われば借りる物件が変わり、物件が変われば必要資金が変わります。連鎖は次の順序で起きています。
- オペレーション設計(注文をスタッフが取るか、来店者の端末で受けるか)
- 人員計画(必要なスタッフ数が決まる)
- 物件選び(必要な店舗の広さが決まる)
- 資金計画(賃料と初期投資が決まる)
つまりオペレーションの設計は「最初に決めるべき論点」として位置づけられます。その文脈であれば、レジやオーダーの話は開業相談の一部になります。同じ商材でも、「導入しませんか」ではなく「開業計画を固めるうえで、先に決めておくべき論点があります」と示せば、相手にとっては聞く理由のある話に変わります。
相談の延長として提案に移る4ステップ
実際の会話は、次の4ステップで組み立てます。
| ステップ | やること | やらないこと |
|---|---|---|
| Step1 | 「今の状況はいかがですか」と状況を尋ね、寄り添う姿勢で受け止める | 商材名や機能から入らない |
| Step2 | 物件探しの進み具合、詰まっている点を具体的に聞き出す | 聞いた内容をすぐ商材へ結びつけない |
| Step3 | 聞き出した状況に紐づけて「先に決めるべき論点」を提示する | 一般論としての論点を並べない |
| Step4 | その論点を整理する場として打ち合わせを提案する | 商材説明の場として打診しない |
売り込む姿勢を前面に出さないこと、いわば営業感を抑えることが、この流れを成立させる条件です。
営業感を抑えることと、提案を後回しにすることは違う
注意したいのは、営業感を抑えることと、提案を後回しにすることは違うという点です。相談として聞き役に徹するだけでは、商談の打診にたどり着けません。相手の状況を確認し、その状況に影響する論点を示し、その論点を整理する場として打ち合わせを提案する──この順序が一本の線でつながっていれば、提案は唐突なものになりません。「相談に乗ってもらったうえで、必要な話をしてもらえる」という受け止め方に変わるためです。
この入り方が成立する条件は、相手の検討順序を事前に把握できていることです。設計②の属性を絞ったリスト運用が効いてくるのはここでもあり、同じ状況にいる相手が続くからこそ、仮説の精度が架電のたびに上がっていきます。量の設計と質の設計は、この点で互いを支え合う関係にあります。顧客の生の声を訴求の改善へ戻すVOC起点のPDCAを、個人の架電レベルで回している状態だといえます。
自社の架電で、リストと商材の距離をどう埋めればよいか整理したいという場合は、プロセルトラクションのインサイドセールス支援にご相談ください。
3ヶ月で達成率124%→188.9%・アポ率11.6%→17.3%に伸びた成果推移
設計を変えた結果、数字がどう動いたのかを確認します。重要なのは到達点そのものよりも、改善が積み上がる形で現れているかどうかです。
3ヶ月の推移が示すもの
本事例では、1人あたり月40件という高い目標に対し、3ヶ月で次のように推移しました。
| 指標 | 1ヶ月目 | 2ヶ月目 | 3ヶ月目 | 1→3ヶ月目の変化 |
|---|---|---|---|---|
| アポイント件数 | 31件 | 37件 | 51件 | +20件(1.65倍) |
| 目標達成率 | 124% | 176.2% | 188.9% | +64.9pt |
| アポイント率 | 11.6% | 14.7% | 17.3% | +5.7pt(1.49倍) |
| 1日の架電量 | 約170件 | 約170件 | 約170件 | 維持 |
(出典: プロセルトラクション社内実績、2026年時点)
注目すべきは、件数と率が同時に伸びている点です。件数だけが伸びているなら、単に架電量を増やした可能性があります。率だけが伸びているなら、母数を絞った結果かもしれません。両方が伸びているということは、量を維持したまま一件あたりの成功確率が上がったことを意味します。
もう一つ重要なのは、伸び方が段階的である点です。初月から突出した数字が出たのではなく、毎月着実に積み上がっています。これは、特定の月にたまたま条件が良かったのではなく、改善が仕組みとして働いていたことを示す根拠になります。成果を評価する際は、到達した水準だけでなく、伸び方の形を見ることで再現性の有無を判断できます。
個人の成果がチーム全体に波及する
さらにこの取り組みは、チーム全体のアポイント率にも影響を与えました。チームの数値は1ヶ月の間に8.9%から12.7%へ、3.8ポイント改善しています(出典: プロセルトラクション社内実績、2026年時点)。波及した理由は次の3点です。
- 有効だったトークの構造を、担当者個人に留めず共有した
- 時間の区切り方など、すぐ真似できる工夫から先に展開した
- 属性を絞ったリスト運用のため、他の担当者でも再現しやすかった
高い達成率を出す事例を分析すると、成果が個人で完結せず、チームの数値まで動いているケースが多く見られます。共有可能な形に整理されているかどうかが、その分かれ目になります。
裏を返せば、突出した担当者がいてもチームの数値が動かない場合、その成果は共有されていないと判断できます。組織としては、個人の達成率だけでなく、チーム全体の指標が同時に動いているかを併せて見ておくと、ナレッジが循環しているかどうかを早い段階で把握できます。
経済合理的価値の三つの側面で捉える
| 分類 | この設計で生まれる効果 |
|---|---|
| 売上アップ | 同じ架電量からより多くの商談機会が生まれ(アポイント率11.6%→17.3%)、受注の母数が増える |
| コスト削減 | 架電件数を増やさずにアポイント率が上がるため、一件あたりの獲得コストが下がる |
| リスクヘッジ | 成果が特定の担当者に依存しなくなり、異動や退職による落ち込みを防げる |
特に三つ目は見落とされがちですが、成果が個人の資質に紐づいている状態は、組織にとって継続的なリスクです。型として共有しておくことで、この不確実性を下げられます。
個人の勝ち筋を組織の型に変える3つの手順
最後に、こうした取り組みを一過性で終わらせず、組織の運用として定着させる方法を整理します。
手順1:真似できる部分と、掛け合わせが必要な部分を分ける
今回の取り組みは、性質の異なる二つの要素で構成されています。この二つを分けて扱うことが、展開の出発点になります。
| 比較軸 | 手順の工夫 | 顧客視点の設計 |
|---|---|---|
| 該当する内容 | 時間の区切り方、リストの優先順位、複数回架電 | 相手の意思決定順序を読み解き、商材を論点として差し込む |
| 必要な能力 | 特別な能力は不要 | 相手の立場で検討順序を組み立てる思考 |
| 展開の方法 | 仕組みとして全員に一律適用する | 事例を共有しながら育てる |
| 効果が出るまで | 短期間で数字に表れる | 時間がかかる |
| 着手の順番 | 先に着手する | 手順の工夫が定着してから |
展開の順番としては、手順の工夫から始めるのが現実的です。効果が短期間で数字に表れるため、取り組み自体への納得感が得られやすく、その後の共有も進みやすくなります。逆に、顧客視点の設計から着手すると、成果が出るまでに時間がかかり、途中で立ち消えになりがちです。同じ扱い方をすると、どちらも中途半端に終わります。
手順2:「誰の・何のための仕事か」を業務設計に落とす
顧客視点の設計を支えているのは、目の前の架電が誰のどんな課題につながるのかを考える姿勢です。これを個人の心構えに任せるのではなく、業務の手順に組み込むことができます。
- リストの属性ごとに、相手が抱えている課題の仮説を書き出す
- 商材が相手の意思決定のどこに影響するかを、順序として整理する
- 有効だった切り口を記録し、他の属性へ転用できないか検討する
こうした整理を定例の場で扱えば、顧客視点は担当者ごとの資質ではなく、組織の共有資産になります。個々の担当者が頭の中で行っていた読み解きを、書き出して比べられる状態にすることが出発点です。文章として残っていれば、新しく配属された担当者も同じ視点から会話を組み立てられるようになり、立ち上がりまでの期間を短縮できます。
手順3:型は固定せず、リストの変化に合わせて更新する
一度作った型が長く効き続けることは、まずありません。リストの属性が変われば相手の検討順序も変わり、有効な切り口も移り変わります。
- 数ヶ月ごとに、アポイントにつながった通話の共通点を洗い直す
- 反応が落ちてきた切り口を特定し、差し替える
- 更新の担当と頻度を決め、属人的な作業にしない
更新の仕組みまで含めて設計して、はじめて型は運用に耐えるものになります。作った時点で完成とみなしてしまうと、数ヶ月後には現場が型を使わなくなり、元の属人的な状態へ戻ります。更新の頻度を決めておくことは、型を守るための最低限の条件だといえるでしょう。
外部リソースを使いながら型を残したい場合は、テレアポ代行会社の比較記事もあわせてご覧ください。
まとめ:量は設計で守り、質は顧客視点でつくる
1日170件という架電量を維持しながらアポイント率を高められた背景には、精神論ではない3つの設計がありました。本記事のポイントは、次の3点に集約できます。
- 量が質を壊すのではなく、集中力を回復させる仕組みがないことが質を落としている──「20分架電・10分休憩」のように集中が切れる前に区切りを入れ、休憩は進捗にかかわらず先に固定する
- 相手の関心と商材が離れている場合は、商材からではなく相手が今決めるべき論点から入る──「導入しませんか」ではなく「先に決めておくべき論点があります」に変えることで、提案が開業相談の一部になる
- 手順の工夫は全員に展開し、顧客視点の設計は事例共有で育てる──効果が早く出る手順の工夫から着手することで、取り組みへの納得感が生まれ、型が定着する
結果として、3ヶ月で目標達成率は124%→188.9%、アポイント率は11.6%→17.3%へ、さらにチーム全体のアポイント率も8.9%→12.7%へ改善しました(出典: プロセルトラクション社内実績、2026年時点)。これらは属人的な気合や話術ではなく、量を支える仕組みと質を支える会話設計を、別々の手段で用意した結果として現れた再現可能な成果です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相談起点の架電とは何ですか?
相談起点の架電とは、商材説明から入らず相手が今決めるべき論点から会話を始める架電設計です。相手の関心と商材の距離が遠いリストでは、商材の説明から入ると「頼んでいない提案」として処理され、聞く理由がないまま会話が終わります。そこで、①「今の状況はいかがですか」と状況を尋ねる、②詰まっている点を具体的に聞き出す、③その状況に紐づけて「先に決めるべき論点」を提示する、④論点を整理する場として打ち合わせを提案する、という4ステップで組み立てます。同じ商材でも「導入しませんか」ではなく「開業計画を固めるうえで、先に決めておくべき論点があります」と示せば、相手にとって聞く理由のある話に変わります。
Q2. 1日170コールでも架電の質を落とさない方法は?
進捗の管理単位を、1日ではなく集中が持続する時間まで刻むことです。本事例ではタイマーを用いて「20分架電・10分休憩」を機械的に繰り返し、腕時計型端末で計測しながら一日を進めていました。運用のポイントは4点で、20分は集中が切れる前に終わる長さに設定する、休憩の10分は席を離れて画面から目を外す、遅れは1日単位に戻さずその区切りの中で調整する、区切りの終わりに次のリストを開いておく、というものです。また休憩は「余裕があれば取るもの」ではなく時刻を先に固定し、休憩を削って件数を稼ぐ運用は組織として禁止します。区切りの長さは、区切りごとの架電件数と通電率を記録し、質が落ち始める地点の手前に置くことで決められます。
Q3. 商材起点の架電と相談起点の架電では何が違うのですか?
会話の主導権と、相手側での受け止め方が変わります。商材起点では最初の一言が商材名になり、売り手の説明が中心になるため、相手は「頼んでいない提案」と受け取り「まだ考えていません」で会話が終わります。相談起点では最初の一言が「今の状況はいかがですか」となり、買い手の状況説明が中心になるため、優先課題が語られて会話が続きます。提示するものも、商材の機能と価格ではなく「先に決めておくべき論点」です。たとえば店舗開業では、オペレーション設計が人員計画・物件選び・資金計画の前提になるため、レジやオーダーの話を最初に決めるべき論点として置けます。打ち合わせの位置付けも、商材説明の場ではなく論点を整理する場に変わります。
Q4. 架電のアポイント率はどのくらい改善できますか?
本事例では、1日約170件の架電量を維持したまま、3ヶ月でアポイント率が11.6%→14.7%→17.3%(+5.7pt、1.49倍)、目標達成率が124%→176.2%→188.9%へ推移しました。アポイント件数も31件→37件→51件と伸びています(出典: プロセルトラクション社内実績、2026年時点)。重要なのは、件数と率が同時に伸びている点です。件数だけなら架電量を増やした可能性があり、率だけなら母数を絞った可能性があります。両方が伸びているということは、量を維持したまま一件あたりの成功確率が上がったことを意味します。また伸び方が段階的であることも、改善が仕組みとして働いていた根拠になります。同じ取り組みはチーム全体にも波及し、アポイント率は1ヶ月で8.9%→12.7%へ改善しました。
Q5. プロセルトラクションのテレアポ・インサイドセールス支援の特徴は何ですか?
プロセルトラクションは、300社以上のBtoB営業支援実績(出典: プロセルトラクション、2026年)をもとに、ターゲット設計から架電・ナーチャリング・商談トスアップまでを一気通貫で支援します。ABM設計〜テレアポ代行の一気通貫で狙うべき企業へ接触し、高受注率×高LTVリードの見極め・スコアリングで当てる順番を決め、リードセグメント別スクリプト作成・改善スキームで属性ごとの検討順序に合わせた会話の入り口を作り分けます。架電の時間設計や複数回架電の上限・間隔といった運用ルールまで含めて設計し、VOC起点のPDCAで現場の生の声をスクリプトの改善へ接続。個人の勝ち筋を、組織が再現できる架電の型へ変換する伴走を行います。
架電の量をどう維持するか、リストに合った会話の入り口をどう設計するか、個人の勝ち筋をどう組織の型に残すか──新規事業や営業でお悩みでしたら、お気軽にお問い合わせください。架電設計からトークの型づくり、チームへの展開まで、成果につながる営業の仕組みを一緒に描いていきます。
この記事の執筆者
長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役
リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。300を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。







