最終更新: 2026年6月

IS運営による事業立ち上げ設計とは、インサイドセールスの業務委託が事業構築から関与し、競合調査・体制整備・事業計画逆算で利益創出まで担う手法です。

インサイドセールスの業務委託として関わる中で、「事業を0から立ち上げる」という役割を担うケースは稀です。しかし、KPI設計・仮説検証からPDCA実行まで一気通貫で支援する株式会社プロセルトラクションのML(マネジメントリード)部門では、クライアントの事業そのものの構築から関与するケースがあります。2024年度ML部門4Q MVP賞を受賞した担当者の実践事例から、不動産業界向け新規事業において、競合他社調査・新会社設立・体制整備・事業計画の逆算設計という4つの取り組みで、年度売上1,670万円・利益511万円を実現し初期投資の回収を達成した手法を解説します(プロセルトラクション実績, 2024年度)。

1. 「何もない状態」から始める事業立ち上げの難しさ

「型のない営業」を自分で作るところから始める

既存の営業プロジェクトでは、架電リスト・スクリプト・クライアントとの連携フローが整備された状態でアサインされます。しかし、0から事業を立ち上げる場合は、「何から始めるか」「何を作るか」の設計自体を自分で行う必要があります。

不動産業界向けの新規事業立ち上げに関与した際に直面したのは次の状態でした。

  • 競合他社がどのような事業モデルで運営しているか、情報がない
  • 会社・拠点・ツール・HP等の物理的な体制がゼロの状態
  • 「いくら売ればいいか」「いつ利益が出るか」の計算式が存在しない

この3つの「ない」を解消することが、事業として成立させるための最初の仕事でした。

2. 競合他社調査で事業モデルの「型」を把握する

「先行事例から学ぶ」のが最速の設計

0から事業を設計する際に最初に行ったのが、同業他社・競合企業の調査です。「どういう会社がどういう方法でこの事業を運営しているか」を把握することが、設計の出発点になります。

競合調査の3つの観点:

  1. サービス設計の調査:競合他社がどのようなサービス内容・料金体系・顧客ターゲットで事業を運営しているかを調査します。「何を、誰に、いくらで提供しているか」を把握することで、差別化ポイントと参入余地が見えてきます
  2. 市場規模・需要の調査:不動産業界において、対象サービスに対する需要がどの程度存在するかを調査します。「誰が困っているか」「どの程度のマーケットがあるか」を把握することで、事業計画の前提数字を置くことができます
  3. 成功事例・失敗事例の収集:競合他社の口コミ・評判・サービスの課題感から「何が評価され、何が敬遠されているか」を把握します。顧客が感じている不満は、自社サービスの差別化の切り口になります

競合調査を通じて、「この市場でどう戦うか」の仮説が形成されます。仮説なしに動き始めると、後から方向転換のコストが発生します。

3. 新会社設立と体制整備を並行して進める

「登記」と「営業準備」を同時に動かす設計

事業を運営するための法人格・オフィス・ツール・HPを整備する工程は、順番通りに進めると時間がかかります。新会社設立手続きと体制整備を並行して進めることで、「会社が動き出せる状態」になるまでのリードタイムを圧縮しました。

体制整備の主要項目:

  • 新会社設立手続き:法人登記・定款作成・銀行口座開設など、会社として存在するための手続きを進めます
  • 拠点設置:事業運営の拠点となるオフィスを確保し、顧客対応ができる環境を整えます
  • HP制作:顧客に対して信頼を示すための公式サイトを立ち上げます。「会社として存在している」という証明になります
  • ツール整備:CRM・架電ツール・コミュニケーションツールなど、営業活動を回すためのシステムを選定・導入します

これらを並行して進めることで、法人登記が完了した時点で「すぐに営業活動ができる状態」を実現しました。準備が整ってから動くのではなく、準備しながら動くことで初月の立ち上がり速度が変わります。

4. 初期投資から利益逆算で月次目標を設定する

「いくら売れば初期投資が回収できるか」から目標を設計する

事業として成立させるためには、「いつ、いくら売れば、利益が出るか」を事前に計算しておく必要があります。感覚や希望値ではなく、初期投資・固定費・変動費・単価・成約率から逆算して月次の売上目標を設定しました。

事業計画の逆算設計:

  1. 初期投資の総計:会社設立費用・オフィス初期費用・ツール導入費用・HP制作費などの初期コストを総計します
  2. 月次固定費の算出:賃料・人件費・ツール利用料などの毎月発生するコストを把握します
  3. 損益分岐の計算:初期投資と月次固定費から「いつ月次黒字になるか」「初期投資を回収するには何ヶ月かかるか」を計算します
  4. 月次目標の設定:損益分岐を達成するために必要な「月次売上」を目標として設定し、1案件あたりの単価と成約率から必要な案件数を逆算します

このKPI設計の逆算があることで、「今月の目標は数字のための数字ではなく、事業を存続させるために必要な数字」という意味が明確になります。目標に対する納得感が行動の密度を変えます。

5. 営業活動の設計と改善サイクルを回す

「初月から利益を作る」設計で動く

体制が整った状態で、実際の営業活動に入ります。不動産業界向けの新規事業における営業では、「ゼロの状態から顧客を獲得する」ことが最初の課題です。

営業設計の3つの柱:

  1. ターゲット設定と優先度付け:市場調査と競合分析をもとに、「どの顧客属性からアプローチするか」を設定します。全方位にアプローチするのではなく、初期フェーズでは成約確度の高い顧客層に集中することで、早期に実績を作ります
  2. スクリプト構築と検証:初期の架電・商談から「何が響くか」「何が障壁になるか」をVOCとして収集し、スクリプトを継続的に改善します。競合との比較に対する切り返し・料金への反応・サービスの説明方法を毎週見直すPDCAサイクルを回します
  3. 案件管理と追客:見込み案件をステータス別に管理し、適切なタイミングでのフォローを続けます。追客の抜け漏れが初期フェーズでは致命的になるため、管理の仕組みを早期に構築します

6. 実践成果──年度売上1,670万・利益511万・初期投資回収達成

不動産業界向け新規事業立ち上げの実践成果は以下の通りです(プロセルトラクション実績, 2024年度)。

月次成果:

目標実績
3月3,000,000円3,006,600円(目標達成)

年度成果:

指標実績
年度売上16,706,231円
年度利益5,112,491円
初期投資回収達成

競合調査・新会社設立・体制整備・事業計画の逆算設計という4つの取り組みが、「0の状態から年間1,670万円の売上・511万円の利益」という実績につながりました。事業として存続するための数字設計と、それを達成するための営業活動設計を同時に行ったことが成果の基盤です。

7. よくある質問

インサイドセールスが事業立ち上げから関与するメリットは何ですか?

インサイドセールスが事業立ち上げから関与する最大のメリットは、「営業現場の知見が事業設計に直接反映される」ことです。競合調査・ターゲット設定・スクリプト構築を営業担当者自身が行うことで、机上の計画と実際の顧客反応のギャップが小さくなります。結果として、初月から成果が出る確率が上がります。

事業計画の逆算設計で最も重要な変数は何ですか?

最も重要な変数は「1案件あたりの単価」と「成約率」です。この2つが月次目標の達成に必要な案件数を決定します。初期フェーズでは成約率の実績データがないため、競合調査と市場調査から仮の成約率を設定し、実績が出た段階で修正していくアプローチが現実的です。

ゼロからの事業立ち上げで最初に着手すべきことは何ですか?

最初に着手すべきは競合他社調査です。「先行事例から学ぶ」ことで、ゼロから設計する時間と失敗のコストを大幅に削減できます。サービス設計・市場規模・成功失敗事例の3つの観点で競合を調査し、自社の参入ポイントと差別化の方向性を定めることが、事業設計の出発点になります。

8. まとめ──不動産業界向け新規事業を0から立ち上げる4つの設計

インサイドセールスが新規事業の立ち上げから関与して成果を出すための実践手法をまとめます。

競合調査による事業モデルの把握:

  • サービス設計・市場規模・成功失敗事例という3つの観点で競合を調査する
  • 「先行事例から学ぶ」ことで、ゼロから設計する時間と失敗のコストを削減する

新会社設立と体制整備の並行推進:

  • 法人登記・オフィス・HP・ツールの整備を並行して進め、「立ち上がりリードタイム」を圧縮する
  • 会社が動き出せる状態を最速で作ることが初月の成果に直結する

初期投資からの利益逆算設計:

  • 初期投資・固定費・単価・成約率から月次目標を逆算して設定する
  • 「なぜこの数字を目指すか」が明確になることで、行動の密度が変わる

営業活動のターゲット集中と改善サイクル:

  • 初期フェーズでは成約確度の高い顧客層に集中し、早期に実績を作る
  • 毎週スクリプトと案件管理を見直す改善サイクルを維持する

これらの設計を組み合わせることで、ゼロの状態から年間1,670万円の売上・511万円の利益を実現し、初期投資の回収を達成しました。

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この記事の執筆者

長谷川裕樹

長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役

リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。200を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。