「営業戦略を立てよう」「営業戦略のプレゼンをして欲しい」など、営業戦略という言葉を使う場面は多くあります。しかし、営業戦略の明確な定義を知らずにとりあえず使っている人も多いのではないでしょうか。

本来、利益目標を達成するための方針や計画を作りに営業戦略は欠かせないものです。

この記事では、営業戦略の定義や、実際に営業戦略を立て方の基本となるポイントを解説します。営業戦略を考えたい経営者や、営業担当の方は、ぜひ参考にしてください。

営業戦略とは

営業戦略は次のように定義できます。

マーケットで自社製品が競合他社よりも優位に立てる場所を定め、
いかに売上を伸ばして目標達成するかを描いたシナリオ

企業は、受注数を増やして、売上を伸ばしていくために、自社にあるリソースを効率よく活用する必要があります。
具体的には営業人員、営業にかける時間、予算などです。

そして、自社が他社よりも優位に立てるターゲットを選び、顧客に価格や差別化のポイントを伝えていかなくてはなりません。

このように営業戦略は以下のように営業と戦略を掛け合わせた言葉です。

営業=製品やサービスを顧客に対し販売すること
戦略=目標達成に向けた中長期的なシナリオ

分解すると、企業が業績を伸ばしていくために欠かせない根幹的なものだと分かります。

営業戦略を立てる上での7つのポイント

営業戦略は、売りたい製品や時期によって変化します。また営業目標の内容によっても変化します。

実際にどのように営業戦略を立てれば良いかを、以下の7つのポイントに分けて紹介します。

  • 「選択と集中」の実行
  • KPIの設定と監視
  • 過去のデータを参考にする
  • 市場の状況を把握する
  • 顧客のニーズを把握する
  • 適切なクロージング方法を構築する
  • 定期的に見直す

7つのポイントは、それぞれ独立した項目ではなく、有機的に絡み合っています。各項目が重要な理由と、注意点について解説します。

(1)「選択と集中」の実行

「選択と集中」、つまり「あれもこれもやる」のではなく、やらないことを切り捨ててでも、やるべきことに集中する考え方です。

もとは、1980年代にゼネラル・エレクトリック社のCEOを務めたジャック・ウェルチ氏が唱えた有名な経営戦略の中で使われた言葉です。氏は「自社の得意とする事業分野を明確にして、経営資源を集中的に投下せよ」と明確な方針を打ち出しました。

「選択と集中」の有効性は、日本企業も実証

1990年代にキヤノン、ホンダ、ソニーなど日本企業がアメリカ市場を席巻しました。その原因を研究したロンドン・ビジネス・スクールのゲイリー・ハメル教授と、ミシガン大学のC・K・プラハラード教授は著書『コア・コンピタンス経営』の中で次のように述べています。

「競合がある市場において、他社にない自社独自の能力(コア・コンピタンス)は何かを理解し、コア・コンピタンスを最大限に生かす戦略を描け」

言い換えると「お客様は、自社の商品・サービスのどこにお金を払ってくれるのか?」を明確にし、そして自社商品の強みを最大の武器と捉えて、さらに磨きをかけることが大事だと指摘しています。

事例として登場した日本企業が世界に躍進できた背景に、正しい選択と集中があったと言えるでしょう。

直近の半期、四半期で何に注力するのか絞り込む

自社の営業戦略を立てる際も、「選択と集中」を頭に入れ、1年の半期、四半期で「何に注力するのか」を戦略に盛り込むと良いでしょう。

特に中小企業は、大企業と比べリソースが限られています。身の丈に合わない網羅的な戦略を立てるとリソースが分散してしまうため、競合他社との競争が困難になる可能性があります。

「うちは●●で勝負する」「この期間は〇〇に集中する」、選択と集中の考え方を忘れないようにしてください。

(2)KPIの設定と監視

戦略で決めた通りに営業活動が順調に進んでいるかをチェックするため、KPIを設定する必要があります。

KPIはKey Performance Indicatorの略で「重要経営指標」「重要業績指標」などと訳されます。

営業戦略で用いるKPIは現在の営業状態がどうなっているのかを評価・把握するための因子で、今後どうなるのかの予測を立てるために用いられます。

営業の場面でよくKPIに用いられる数字は

  • 新規顧客の獲得数
  • 売上額(達成率)
  • 平均受注額
  • アポイント数
  • 見込顧客獲得目標達成率

などがあります。「営業目標に対し現状どれくらい近づいているか?」を明確に知るためのものです。

適切なKPIを設定すると、目標に向かうスピードも確認できます。進捗が想定より遅い場合や、売上目標を大きく下振れている場合には、PDCAを回して営業戦略を見直し、軌道修正することもあります。

より短期間、リアルタイムでのKPIチェックは有効

抜本的な修正が必要を確認するには、月単位、週単位、ときには日単位という短いスパンでKPIを監視する必要があります。

リアルタイムでKPIを監視する方法をBAM(Business Activity Monitoring)と言います。

システムを導入し監視するBAMによって、経営者や営業マネージャ、セールスパーソンが営業の状況をより速く、より正確に把握できるようになります。
例えば、「どの工程にどの程度の時間を費やしているか」「見込み客が離脱してしまっているポイントはどこか、どんなアプローチが原因か」など、数字の変動も常にチェックできます。

得られたデータを可視化するのも簡単になるため「適切な対策」をすばやく講じられるようになります。また、蓄積されたモニタリングデータは、ビジネスプロセスの見直しや再設計を行う際にも有効な情報となるでしょう。

(3)過去のデータを参考にする

中長期的な営業戦略を立てる際には、過去の顧客情報や営業実績を分析し、データに基づいた戦略を立てましょう。

顧客や市場のニーズ、毎月に何件受注獲得できそうかなどを、蓄積されたデータをもとに算出します。

過去データを分析するには、営業データの可視化が重要です。可視化とは、営業に関するありとあらゆるデータを誰の目から見ても明らかな形にして保管することです。営業が可視化できていない部分があれば、それは属人化してしまっていることになります。

見込み客の名刺、以前どんなアプローチを行ったかなども必ず可視化、共有化するようにしましょう。

企業の規模や業態によって最適な営業分析方法は異なりますが、一般的には以下の3つの分析手法がよく使用されます。

動向分析

動向分析は、文字通り様々なジャンルのトレンドや動向をマクロ視点で分析するものです。

例えば業界全体を見渡したときの売れ筋商品の販売動向や、それらを購入した顧客の購入タイミング・購入価格、または月ごとの売上額などを数値化・グラフ化して分析します。

動向分析は、スピード感をもって、顧客ニーズの動きをざっくり捉えるのに適しています。

ただし、動向分析だけでは細かく重要な動きを見逃す可能性があります。また、それぞれの顧客に適した商品やサービスを分析するなどには向いていません。

要因分析

要因分析とは、売上や業界の動向に影響を与える要因を捉える方法です。動向分析を受けて行われます。

例えば、急激に売上が伸びた商品があるとします。「なぜ売れたのか」原因を調べたところ、テレビ番組での放送がきっかけだと分かりました。ここから、【同じテレビ番組で、今後取り上げられる別の商品も「売上が伸びる可能性が高い」】という仮説が立てられます。

動向分析と要因分析を行って得られた仮説はあくまでも推論です。ただし、「本当か?」という検証を行うには仮説は重要です。

検証分析

検証分析は、動向分析、要因分析を受けてセットで行われます。動向を探り、要因を特定した後の実践編であり、最後の仕上げです。

動向、要因の分析結果をもとに、営業成果を上げるためにいくつかの仮説を立てました。立てた仮説が正確かどうか、実践とテストを繰り返して結論にたどり着く分析です。

検証分析には、データを見比べることに加え、状況を見極めて最適なアイデアを出す発想力も必要です。挑戦的な試みも有効で、社員と企業の柔軟性が求められる局面であると言えるでしょう。

動向、要因、検証分析を経て、はじめて分析結果に確証が得られます。

(4)市場の状況を把握する

市場が求めているニーズの把握が重要です。

新商品・サービスが売れるかどうかは、顧客の反応次第です。そのため、販売前の市場調査が必要になります。正しい市場調査を行えば自社が参入してシェア獲得できる余地があるか、商品・サービスに対する顧客の反応も予測できるようになります。

商品を大量生産する場合や、サービスの開発コストが高い場合にはより重要性が高まるでしょう。

代表的なフレームワークである「3C分析」「STP分析」使うと、自社と市場、他社の状況を把握する精度が高まるので、自社でのテンプレート化をおすすめします。

3C分析

3Cは顧客・自社・市場を分析するために用いるフレームワーク。

  • 自社(Company)   …自社の強み・弱み・ビジョンなど
  • 競合他社(Competitor)…他社の強み・弱み・特徴・今後予想される動きなど
  • 市場(Customer)   …市場全体の規模・将来性など

3C分析を行うと自社の立ち位置が明確になり、どの顧客層をターゲットとするか設定しやすくなります。

STP分析

STP分析は、自社独自の強みを明確化する際に有効です。

  • Segmentation(セグメント) …どの顧客層を狙うか
  • Target (顧客ターゲット)   …どんなマーケティング・セールスを仕掛けるか
  • Positon(自社と競合の比較) …自社が優位な点はどこか

3C分析、STP分析の結果を踏まえ、自社のポジショニング、競合との差別化ポイントなど、さらに収益性や、市場への参入実現性も検証できます。

(5)顧客のニーズを把握する

的確な営業戦略を立てるためには、顧客のニーズを把握する必要があります。

例えば、自社製品と競合他社が展開している製品の違いや売上状況・シェアなどを確認したり、顧客の購買傾向からニーズを分析したりすることが結果的に自社の売上を伸ばすことにつながります。

また直接、顧客(既存客)に聞く方法も有効で、ニーズがダイレクトに見えることも。
アンケートやサンプリングの他、既存顧客にヒアリングを行う手法もおすすめです。

顧客ニーズが把握できると、販売予測を立てられる上に、商品開発にも役立ちます。調査結果をもとに、顧客ターゲットや価格も変更できるため、市場で商品・サービスが受け入れられる調整も可能です。

さらに顧客の潜在的なニーズをすばやく把握できれば、他社との差別化に有効。顧客自身が気づいていないニーズを知るには、顧客属性や購買履歴などのデータ活用が不可欠。正確にデータを把握することで、ターゲットに合った戦略を打ち出し、効率的なマーケティングが実施できます。

(6)適切なクロージング方法を構築する

クロージングとは、顧客に購入の決断を迫るフェーズです。とくに新規顧客を獲得するためには欠かせない場面であり、「いつ、どのようにクロージングするか」も、営業戦略で定めておくと良いでしょう。

  • どうすれば見込み顧客は購入を決断したくなるのか?
  • どのような見込み顧客にクロージングをかけていくべきか?

2つの視点で戦略を立てていきます。

同時に、現段階では「クロージングをかけない見込み顧客」についても戦略的に考えていく必要があります。
十分な信頼や合意が得られていない段階で、強引なクロージングを行うと、顧客体験を損なってしまうかもしれません。一度、顧客からの信頼を失うと、やがて本当に商品が必要になったとき、他社で購入する可能性が高くなると言われます。

そのため、見込み客の関心度がどの段階まで高まったら、クロージングの対象とするのかも、営業戦略で定めたいポイントです。

(7)定期的に見直す

営業戦略は定期的に戦略を見直し、改善点を模索するのも重要です。
一度立案したら終わりではなく、PDCAサイクルを使って戦略を見直すのが良いでしょう。

PDCAサイクルでは以下のフローを繰り返します。

  • Plan(計画)
  • Do(実行)
  • Check(評価)
  • Action(改善)

最後の「A」に到達したら、次の計画「P」を立てるため「サイクル」=循環と呼ばれます。螺旋のように繰り返すことで「継続的な改善」を実現するのです。

多くの営業担当者にとっては「月間目標の売上の達成」は分かりやすいかもしれません。
月次の目標を上回るために、架電やメール送付件数、アポ件数、受注単価などの計画と見込みを立てているはずです。週単位で、立てた計画が正しく実行されているか、見込みと比べての進捗はどうかチェック、改善を行えば、1カ月に4回のPDCAサイクルを回せます。

小さく、短期的なPDCAサイクルの延長に、営業戦略で定める大きなPDCAが存在する状態をイメージすると良いでしょう。

7つのポイント、実践のすすめ

この記事では、営業戦略の言葉の定義と、実際に営業戦略を立てるための7つのポイントについて解説しました。

優れた営業戦略とは、マーケットで自社製品が競合他社よりも優位に立てるポイントを定め、顧客が購入しやすい状況を作る指針です。

そのためには、7つのポイントを意識して戦略作りに挑むと良いでしょう。
また営業戦略は、必ずしも自社だけでなく外部のプロに相談する手もあります。

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