営業のやり方は、年々多様化してきました。ただでさえ顧客が購買を決めるまでの期間は長引き、Webからいくらでも情報が引き出せる中、どのように顧客の心をつかめばよいでしょうか。

そもそも顧客がオフィスに出勤しなくなった昨今、従来のような営業手法だけでは通用しなくなっています。

しかし、訪問営業は古くて、インサイドセールスは新しいという議論はあまり意味がありません。大事なのは売上という結果であり、新しいものでも結果が出ないなら、少なくとも自社に正しい手法ではありません。

今回の記事では、多様化した営業の手法=武器を学んだうえで、どれかひとつを選ぶのではなく、どう組み合わせて結果を出すかという視点で解説していきます。

営業手法の「古い」「新しい」に意味はない

「テレアポは古い」「訪問営業は非効率」「飛び込み営業はキツイだけで結果が出ない」そのような意見が目立ちます。しかし、訪問することそのものが、意味のないやり方ではありません。

優れたコンテンツマーケティングで、質の高い見込み客を誘導できたら、アポイントを設定して営業をかけます。大切なのは「流れ」と手法の連動、営業とマーケティングの一体化と言えるでしょう。

砂漠に落ちている金を探すような確率で声が枯れるまでテレアポを続けたり、飛び込み営業で集めた名刺の数で評価されたり、そうした考え方は確かに時代遅れだと言われても仕方ありません。

ただし、「電話は古いけどZoomやベルフェイスなら新しい」などというツールの評論をしても意味がないでしょう。

そうではなく、まず手段を類型化してみます。インバウンドか、アウトバウンドという軸と、顧客との接点がオンラインで完結するのか、客先のもとへ足を運ぶのかという2つの軸を使って整理していきます。

次の表は営業手法を整理したものです。本来はインサイドセールスとマーケティングは別物ですが営業活動を分かりやすくするために一緒のセルで作成しました。

営業手法の「古い」「新しい」に意味はない

フィールドセールスの手法

フィールドセールスは、見込み客を個別に訪問したうえで、課題のヒアリングを行い、その解決策として商品の販売・受注を行います。

見込み客からの要望でアポイントを取った場合は、インバウンド(プル型)営業に分類し、テレアポなどこちらからアポイントを依頼したものや、飛び込み営業をアウトバウンドに分類します。

訪問営業

訪問営業は対面でコミュニケーションを取るため、相手から信頼感、親近感を得やすい点が最大のメリットです。

近年リモートワークが急増したため、対面での営業機会は激減しています。そのため、アポイントを取るときもプッシュし、訪問する際もプッシュするのは効率が悪くなっているのは確かです。

ただ相手が会社にいないなら仕方ありませんが、重要な用件であれば対面にこだわるのは、今なお有効です。熱意を伝えることにもなります。

飛び込み営業

対面で話せるメリットを保ちつつ、短時間で多くの人にプッシュ営業ができます。

オフィスビルのテナントを順番にまわる、家族向けの商品を売るためマンション各戸をしらみつぶしに当たるなどが飛び込み営業です。体験した営業パーソンの中には、これで精神が鍛えられ、切り返しの話術が成長したと感じる人もいるかもしれません。

しかしアポイントがないため相手の印象が良くない上に、担当者やキーパーソンと話をできる確率は年々下がっていると思われます。

展示会への出展

展示会は自社ブースに立ち寄った顧客候補の名刺を多く集める手法です。

不特定多数が相手ではあるものの、展示会に足を運ぶ時点でなんらかの課題をもったユーザーなので、受注につながる確率が高く効率的なリード獲得手段だと言われます。

展示会で接点をもった後にすぐアプローチすれば効率的ですし、リードナーチャリングによって中長期的に案件化していく場合もあります。その場で相手の反応をダイレクトに見られるため、成約見込みの高い案件を把握できるので即効性が高い手法です。

ただし出展費用は数十万円~数百円なので高額です。

リファラル営業(紹介営業)

既存客から、知人を紹介してもらう方法で、アポイント獲得率、成約率とも高いのが特長です。紹介を次々に受けられると営業パーソン個人の成績もぐんぐん向上するでしょう。

すでに製品・サービスを利用している方からの「とても満足しているよ。あなたも買った方がいいよ」という言葉はそれだけ強力な営業ツールだということが分かります。

インサイドセールスの手法

インサイドセールスは潜在顧客のニーズの掘り起こしを行い、自社商品の購入意欲を高めていくことがミッションです。

こちらも積極的に顧客へ働きかけるのか(プッシュ)、情報を渡し続けて先方の能動的な行動を待つのか(プル)に分類します。

デジタルマーケティングを活用した領域になるため、これまで人の直観に頼って行われていた活動、たとえば顧客候補の絞り込みなども数値的な裏付けをもって行えるようになります。

まずはプル型です。

SNSやオウンドメディア

SNSやオウンドメディアなど様々な手段がありますがまとめて「コンテンツ」と表現されることもあります。

自社商品の情報のみを届けるのではなく、顧客のニーズを広く満たす情報提供を行えば結果として自社の商品にも興味、好感をもってもらえるという考え方に基づきます。長期的にコンテンツを作り続ける根気が必要ですが、成熟し検索サイトで上位に表示されるようになると、24時間、顧客を誘因できるようになります。

ホワイトペーパー

ホワイトペーパーは簡単に言うと、ノウハウや解説をまとめた独自資料。メールアドレスなどの登録と引き換えに見込み客にダウンロードする権利を与えます。より高確度でリード獲得できる手法として知られています。

重要な点は自社の製品の使い方を紹介するのではなく、顧客がもっている課題解決方法や事例紹介の資料であること。

検索広告と連動させ、「この資料を取り寄せれば課題解決の参考になりそう」という潜在顧客と接点を作れます。顧客は親近感をもつため、より詳しい内容を聞いてくれるようになるでしょう。

Web広告、SEO対策

広告や、検索サイトへの上位表示により、見込み客に触れる回数を増やすのが狙いです。

ディスプレイ広告や検索広告などは、マスメディアでの広告に比べターゲットが絞られる分、安価、オンデマンドで運用できます。また検索サイトから信頼され、上位表示されるためのSEO対策もあわせて行うことで、自社Webへの集客が増え、良質な問合せの増加にもつながっていきます。

ウェビナー

オンラインの商談システムと同様に、手軽にセミナーを配信できるようになりました。

参加側にとっても、移動時間がなくなり、耳だけで「ながら視聴」できることも参加ハードルを下げた要因の一つです。

商品の説明ではなく、有益な情報を届ける講座(しかも無料で)として開催すると、ユーザーが好感を持ってくれるようになります。

プレスリリースの配信

マスコミ向けに報道を促すために送られる文書がプレスリリースです。

PR TIMESや@pressなど配信サイトが定着しており、誰でも数千のメディアに新商品の情報を届けられることが長所です。

ニュース性を感じさせることで、ニュースや情報番組、サイトなどで拡散される可能性があります。費用もほぼかからないというメリットもあります。

テレアポ

ここから先はプッシュ型に分類されるものです。

電話でアポイントを獲得し、オンラインや訪問での商談につなげます。以前は、「数百件のリストを上から潰す」のが普通でしたが反応の良い顧客に出会える確率が低くコストパフォーマンスが疑問視されています。現在は、ここまでに説明したマーケティング施策と併用し電話をかける相手を絞り込んで効果を高める工夫をします。

例えば「ウェビナーに2回以上参加してくれた20名の潜在顧客にはこちらから電話でアプローチしてみよう」などです。

メール・DM送付

メールマーケティングは、何万件に大量配信してもほぼコストがかからないため、多用されています。

テキスト、HTMLのメール原稿や、LP(ランディングページ)を制作する手間はかかりますが、取り組みやすい手段と言えるでしょう。多くの宣伝メールがはん濫していることや、メーラーにブロックされるケースが増えており実効性は下がっているという報告もあります。

郵送によるDMはコストが高い分、確実にカタログなどを届けられることがメリットですが、オフィスに出勤する人が減ったためデジタルへのシフトが加速しています。

オンライン商談

Zoom、Meet、Webex、Teams…など、コロナ禍で対人接触を避けたことで一気に社会に浸透しました。

顔を見て、画面共有ができて、複数の拠点を結べるため、訪問営業より効率的な点が多いと言えるでしょう。

通信やマイクのトラブルの対応と、クロージング時に熱量が伝わりづらいなど、訪問営業とは異なるノウハウが必要になるため、オンライン商談が得意なセールスパーソンの市場価値はますます高まっていくでしょう。

ABM(アカウントベースドマーケティング)

ABMは手法というより「考え方」ですが、従来のリード(個人の名刺)重視の営業方法から、ターゲットを企業(アカウント)で捉えて、マーケティング、営業を行う発想が広まっています。

自社全体で持っている顧客情報を統合したデータベースを作成したうえで、ターゲットとなる企業を定め、興味を育てていきます。

ここまでに紹介した手法の効果を最大化するためにも必要な仕組みです。

手法のかけ合わせで成功をつかむ

ここまで紹介した手法はどれも万能ではありません。また単体では効果が薄そうでも、かけ合わせることで威力を発揮するケースもあります。

以下に紹介する2つの事例では、どちらも複数の手法をからめて計画的に実施することで結果が得やすくなる共通点があります。

展示会出展×メール一斉送信を行った場合

従来、展示会に出展しても集まった名刺は、営業担当に振り分けて個人ごとにフォローしていたとしましょう。

新たに、すべての名刺を管理ソフトに入れる仕組みを導入しお礼・フォローのメールを一斉送信したら、見積もり依頼は増えるでしょう。案件がホットなうちにフォローするのは成果を出す上で必須。動きが遅かったら競合に先を越されるかもしれません。

リファラル営業×ウェビナーを行った場合

これまでリファラル営業をやろうとしても、既存客が単発的な紹介をくれるだけでたいしたインパクトがなかった例を想定します。

新たにウェビナーを計画し、リファラルで送客してくれた場合にインセンティブを設定。また紹介をうながすメール配信や、電話でも紹介の依頼を行った結果、成約が向上するかもしれません。

リファラル経由で集客した人はウェビナー参加との相性がよいのは想像できます。他のファネルで集客した人よりも確度が濃いのは十分あるでしょう。

インサイドセールスの新規構築に向けて

インサイドセールスは、これまで本格的に取り組んでこなかった企業ほど、今からでも売上アップが期待できます。ただ、長期的に取り組めるようにいくつかの準備をしてから取り組みたいところです。

インサイドセールスの体制作り

営業に兼務させず、インサイドセールス専門のチームを発足させて、スキルをもった人材を採用しましょう。

PCスキルや、コミュニケーションが得意、とくにお客様の課題をヒアリングできる方。コールセンター業務の経験者は重宝される傾向にあります。

専用のシステムやツールを導入する

多数の潜在顧客を管理するMA(マーケティングオートメーション)や、ABMのシステムを取り入れるのがよいでしょう。

名刺の管理方法1つとっても、社内の運用ルールを決めなくてはなりません。もしオウンドメディアを立ち上げるならコンテンツの生産体制を組む必要もあります。

システムと人材の両方を一気に揃えるのは難しいので、まずは外部の専門家を入れ、最初の運用を任せて、社内の体制作りについてもアドバイスを求めていくのがいいでしょう

営業手法は次々に新たなアイデアが生まれる

営業手段と考え方を幅広くお伝えしましたが、現在も新たな手法が次々に生まれています。

今回紹介しなかった動画マーケティング、オフラインの広告など細かなものをあげればきりがありません。

どれが有効か、どれとどれを組み合わせると成果が上がるかは、会社によっておかれた環境やリソースによって異なります。組織として結果を最大化するための研究と実践に取り組むことをお勧めします。

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