法人営業は、対象が個人ではなく、株式会社や社団法人などをターゲットにして行う営業活動です。個人向けの営業と比べると、ビジネス経験が問われる傾向にあり、成約までの手続きも長期化・複雑化することが多いことから難易度が高いと思われがちです。
今回は、法人営業の業務内容や求められるスキルを解説するとともに、法人営業に挑戦したいという方に向けて、メリット、デメリットなども紹介します。
この記事を参考にして、法人営業の仕組みやノウハウを学び、業務成績を伸ばしていきましょう。
この記事の目次
法人営業とは
法人営業というのは、法人を対象にした営業活動です。主に企業や学校、社団法人といった組織や団体に対して自社のサービス・製品の購入を促すもので、個人の購入に比べて規模や金額が大きくなりやすいという特徴を持ちます。
同じスマートフォンを販売する場合でも、個人なら1台ですが、組織で購入するとなると100台・1000台の一括購入ということも考えられます。扱われる金額に大きな違いがある分、法人営業ならではのプロセスが必要です。
法人営業と個人営業の違い
企業や学校を相手に交渉する法人営業では、予算や決裁権がとても重要です。中小企業なら、社長ひとりがOKを出せば、すぐに契約につながる可能性があります。ただし、これは社長個人に営業している流れとさほど変わりがありません。
一般的に法人営業では、ターゲットに予算を確保してもらい、購入決定までの社内決裁プロセスを経て初めて契約につながります。
個人営業と比べると時間がかかり、商談の回数も重ねなくてはならないでしょう。どれだけ準備に時間をかけても、失注すれば売り上げはゼロということも珍しくありません。
一方で、売上の単価は大きく1件でも契約を取れればインパクトは大きくなります。個人営業は住宅や自動車のように高額な商品を除いて、単価が小さいために、受注する件数の最大化が求められます。
法人営業の種類
法人営業には大きく分けて2つの種類があります。「新規開拓営業」と「ルート営業」です。
新規開拓
新規開拓営業とは文字通り、これまでに取引のない新しい顧客を対象にしています。飛び込み営業やテレアポなどを接点にして初回の訪問に繋げていきます。訪問後、商談を重ねて契約を獲得し、新しい取引を始めていくのです。
このほか新規開拓営業の方法は多岐にわたり、展示会出展やセミナー開催などを通じて、顧客となる可能性のある企業と接点を作る方法も取られます。メールやWEBサイトの問い合わせフォームからコンタクトする手法も、近年は急速に増えました。このように色々な手法を通し新規顧客を獲得し、売上を上げていくというのが新規開拓営業の1つのミッションです。
ルート営業
ルート営業は、既存顧客を巡回してフォローアップしていく営業活動です。顧客を回る順番を決めて、週に一度、月に一度など、順番通りに訪問していくという手法が取られるためルート営業と呼ばれています。
既存顧客、つまり同じ企業や店舗などに訪問し続けるため、先方との信頼構築が重要です。現在、契約している商品の使用状況や改善点などを聞いていき、その上で追加注文の可能性を探るのが役目です。
新しい商品が発売される際にもいち早く情報を届け、興味を喚起します。
顧客の関心や課題を常に把握するとともに、適切なコミュニケーション能力が求められるでしょう。
法人営業に求められる4つのスキル
新規開拓、ルート営業いずれの場合にも、法人営業で業績を伸ばすには、担当営業パーソンのスキルが重要です。
どのようなスキルを獲得し、磨けばよいか、4つに絞って紹介します。
1. コミュニケーションスキル
法人営業を円滑に進めるためには、コミュニケーションスキルが不可欠です。取引先の立場になって物事を考え、話を引き出していくためには、コミュニケーションスキルがあった方が上手くいくケースが圧倒的に多くなっています。
コミュニケーションスキルがあれば取引先の担当者との信頼関係も築きやすいので、コミュニケーションスキルは必須であると言えます。
会話が上手である必要はありません。
・相手が伝えたい内容をよく理解できる
・相手の課題や困っていることを聞き出す質問ができる
・相手が「この人になら話してもいい」と思ってもらえる
・こちらの伝えたいことを過不足なく伝えられる
・他社の情報や、こちらが不利になる内容など伝えてはならないことを判別できる
こうした点を意識すると、スムーズなコミュニケーションが実現できるはずです。
2. 論理的に考えるスキル
論理的に物事を思考するスキルも重要です。自分が提案したい商品の良さを正確に説明し、良さを判ってもらうためには「伝える」前に、論理的な組み立てができなくてはなりません。
営業したい商品やサービスのメリットやデメリットを、どの順番で、どのように伝えたらよいか。
人間同士のコミュニケーションには感情的な要素も重要ですが、特に法人営業では、客観的なデータ、論理性といった「誰の目にも明らかな購入すべき内容」が必要です。そして、商品の強みが複数ある場合に、どれを強調すれば契約確率が高まるかは、企業の置かれた状況や課題、予算などを把握したうえで、的確に使い分ける必要があります。まさに論理的な思考そのものが求められます。
この点では、感覚や感情よりも論理のほうが再現性に優れたスキルといえるでしょう。
3. プレゼンテーションスキル
自社の商品やサービスを提案し、その良さを判ってもらうためには、プレゼンテーションのスキルも欠かせません。
個人営業では1人の営業に対して相手は1人~2人でしょう。しかし大企業に対して行うプレゼンテーションでは5~10名、内容の重要度が高ければ20名などというケースも想定されます。
人数が多いほど、そこには複数の部署、立場の役員・社員がいて、人によっては自社の商品・サービスに否定的な見解を持つ人がいる可能性も高まります。
プレゼンテーションは基本的に一発勝負です。競合他社とのコンペにかけられることもあります。
あらゆる参加者にとって、自社の商品やサービスがいかに良いかを認識してもらい、賛成意見を増やせるかが、重要です。
場数をこなす、上司や先輩に学ぶ、ロープレを行う、スライドの構成をブラッシュアップするなど、さまざまなトレーニング方法があります。
4. 事務作業スキル
意外かもしれませんが、法人営業をはじめとする営業活動には、営業以外のスキルとして、事務作業の能力があると良い傾向があります。
複数の案件の状況をまとめる、営業日報の記入、社内会議用の準備など、直接的な営業活動以外の事務も多く、勤務時間が長くならないように効率的な処理が求められます。
いくら話が上手い人でもプレゼンテーション資料が雑に仕上がっていると、せっかくのプレゼンテーションの質が下がるのは言うまでもないでしょう。
営業先のデータを書面でまとめる力があると、商談の際の傾向と対策が立てやすくなります。従って、事務作業のスキルも高めておいた方が法人営業を行う時に有利になります。
法人営業の効果的な4つのテクニック
法人営業は規模の大きな商談になりやすく、契約を取るのは簡単ではありません。しかし、法人営業を効果的に進めるためのテクニックがあります。
法人営業で有効なポイントを4つ解説します。
営業ターゲットに新設法人を加える
法人営業では、企業や学校などターゲット選びが重要です。その中で、新設企業は、会社設立から年月が経過しておらず、経営面の設備・リソースなどが揃っていないケースが多くあります。
予算が潤沢でない場合もありますが、成長フェーズに入った新設企業に対し、これからの事業展開に必要になる商品やサービスなどを上手く提案できれば、契約してもらえる可能性は高くなるでしょう。
設立後すぐに営業活動できれば、競合他社とのサービス合戦や価格競争などを避けられるので、より効果的な営業活動が期待できます。
商談初期は売り込まずヒアリングに徹する
営業活動の「商品やサービスを売り込まなければならない」という先入観を捨てることも大切です。長期化することの多い法人営業を円滑に進めるには、商談初期に売り込みをかけるのは得策ではありません。
とくに新規開拓の初期段階は、取引先の担当者が警戒しています。相手のことを十分に理解せずに、こちらが売り込みたい商品の紹介に注力すると、相手は一層警戒し商談を継続するのは難しくなるでしょう。一度、関心が遮断されてしまうと、再び商談のテーブルについてもらうのは困難です。
商談初期に過剰な売り込みをするのではなく、聞き役に回り取引先の抱える問題や課題に耳を傾ける必要があります。しっかりと相手の話を聞き、そこから有効な解決先を自社の商品やサービスを通し提案できれば、契約の可能性が上がります。
決算月から逆算して営業をする
相手の決算月を把握して、そこから逆算して営業活動する手法も、法人営業の重要なポイントです。企業の予算組みは、決算月の2ヶ月前あたりから行われます。
決算期が変わって、一旦予算が固まると、後から変更するのは企業の方針や予算内容によっては、ほぼ不可能です。そのため、いくら優れた提案でも、予算組みが終わった後では、契約の見込みは無くなってしまいます。
では「1年後なら契約できるか」というと、記憶が残っているかは相手次第になるため、適切なタイミングでのアプローチが欠かせません。
取引先の決算月を頭にいれながら、営業を仕掛けるタイミングを見極める必要があります。
決裁者を見極める
決裁者とは、購入を決められる人、ハンコを押せる人という意味です。企業のトップは社長ですが、すべての決裁を社長が行うという考え方は早計です。企業規模、導入する商品の内容や金額によっては、役員や部長、課長クラスが決裁する場合もあります。
営業パーソンには「決裁者はだれなのか」を正しく見極める能力と、その人にアプローチする能力の両方が求められます。
一般的に、企業規模が大きく、役職が上のキーパーソンほど、営業のアポイントを設定するのは困難です。うまくキーパーソンの名前を知り、連絡先を入手できても「検討は部下にさせる」というパターンも少なくありません。
それだけ困難だからこそトップセールスを実践できる営業パーソンの市場価値は高いともいえます。
プロセルトラクションが法人営業活動をサポート
この記事で法人営業の概要は説明していますが、新規事業で法人営業を取り入れ、業績を伸ばすことはかんたんではありません。そこでプロセルトラクションではあなたの会社にマッチしたインサイドセールスのご提案から実践までサポートしています。
法人営業のメリット3選
これまで法人営業を体験したことのない方には、ややハードルが高いと思われるかもしれません。
しかしそのぶん、やりがいに満ちた仕事ともいえます。法人営業のメリットを紹介します。
大きなビジネスに関われる
大企業などを相手にすると、億単位の規模の大きなビジネスになることも珍しくありません。
このような大きな規模のビジネスは、営業パーソンにとって仕事を進める上でやりがいに繋がりやすく、貴重な体験になります。商談が終盤になると、取引先の経営者や経営陣を相手にしてプレゼンテーションをするケースも増えるため、普通の仕事をしていたら会えないような人物に会えるでしょう。
社会にもインパクトを与えていると実感できる点が、法人営業の大きなメリットです。
課題をクリアした時の達成感
法人営業で契約を取るのは簡単ではありません。特に1から相手との絆を深め、契約までたどり着くには長い時間と大きな労力が必要です。このような難しい仕事だからこそ、課題をクリアした時の達成感は素晴らしいものがあります。
取引先の担当者と共に課題を見つけ、それを1つずつクリアしていく時の充実感、相手から組織の垣根を越えて感謝される経験も法人営業ならではといえるでしょう。
経験を活かす場所が多い
法人営業での経験は、その後のキャリアプランの大きなプラスになります。
法人営業で成果を出すために身につけた論理的な思考力やプレゼンテーション力といった力は、たとえばマネジメント、会社の管理業務などでも活かせます。
営業職でよりステップアップを目指す場合はもちろん、管理職や独立起業に移りやすくなるというメリットがあります。
法人営業のデメリット3選
法人営業はやりがいに繋がりやすいというメリットがある反面、少なからずデメリットもあります。
営業先が限定される
法人営業の顧客になってくれる層というのは、自社の展開している商品やサービスに関連を持っている企業だけになりやすいです。
例えば、専門的な商品やサービスを提案する場合、それを必要としている企業でなければ、契約の成立は難しいでしょう。
従って、自社の商品やサービスにより営業できる取引先が、かなり限定化されてしまうというデメリットがあります。
飛び込み営業のハードル高い
近年は、飛び込みで営業するケースが少なくなっています。成功率は非常に低く、門前払いされるケースもあるため、精神的なタフさが求められます。
ルート営業だけの仕事なら、飛び込み営業の心配は不要ですが、一から新規顧客を獲得し、自社の業績を上げていきたいと考える場合は飛び込み営業の有無も確認するとよいでしょう。
接待が必要になるケースがある
法人営業は企業間取引になるため、顧客の担当者と良好な関係を築く必要が出てきます。関係を深めていくために、仕事が終わった後や休日の接待などが必要になるケースも出てくるかもしれません。
ただし業界の慣習や営業のスタイルによっては、「接待を受けない、行わない」という企業もあります。
接待をしたくないと考えるのであれば、就職支援サービスなどを利用してみて、そこで業界の情報や慣習などをあらかじめリサーチしておくとよいでしょう。
【まとめ】法人営業の成績向上に役立てよう
法人営業の醍醐味は、ビジネスの規模の大きさです。個人同士では経験できない業務であり、困難を伴う分、達成した時の喜びは、営業パーソンの大きな自信になるでしょう。
この記事を参考にして、法人営業のノウハウを学び、業績向上に役立ててください。
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