クロスセルは、多くのビジネスにおいて顧客単価を上げる手段として取り入れられています。少子化や競争の激化によって、クロスセルのニーズが高まっていますが、基本的な実施方法やタイミングなどを効果的に活用すれば、さらなる売上アップが期待できます。

ここではクロスセルの基本情報や実施方法、成功事例などを解説します。クロスセルのアイデアを活かして、自社の営業戦略に活かしたい方はぜひご覧ください。

クロスセルとは

クロスセルとは、商品の購入を検討している顧客や過去に商品を購入した顧客に、プラスαで別の商品を提案し購入を促す営業方法です。業種や業態を問わず、あらゆるビジネスで顧客単価を上げる方法として使われています。

パソコンを購入する際に、Wi-Fiのセット契約を勧めたり、ECサイトで過去の購入履歴からおすすめ商品を提示することなどが、事例として挙げられます。

クロスセルの目的

クロスセルを導入すれば既存顧客のLTV(顧客生涯価値)のアップにつながります。購入した商品だけでなく、他の魅力的な商品もあわせて購入することでより満足度が上がり、結果的にファン化しリピート率が向上するためです。一般的に新規顧客に販売するコストよりも、既存顧客の販売コストのほうが抑えられます。

クロスセルが注目されている背景

クロスセルが重要視されるのは、ITの普及によってビジネス環境が変化したことと、人口減少によって顧客単価アップがより重要になったことなどがあげられます。

オンラインでの情報収集や商品の検討・購入までが一般に広く浸透し、AIのデータ分析やレコメンドの精度が向上したため、クロスセルの方法が多様化し、LTVの向上にも取り組みやすくなりました。

日本国内だけに目を向けると人口減少、すなわち顧客数も年々減っています。そのため、顧客数の増加に頼るのではなく、顧客単価をアップして売上を向上するために、クロスセルが一層注目されています。

アップセルとクロスセルとの違い

アップセルとは、顧客が購入を検討している商品よりも上位で高価な商品を薦めて購入単価を上げる方法です。

クロスセルとアップセルは、どちらも顧客単価の向上を狙いますが、手法が異なります。クロスセルは関連商品とセットで販売し、アップセルは上位モデルを販売することで、1人あたりの販売単価を上げるのです。

クロスセルのメリット

クロスセルを導入すれば、企業は売上アップを見込めます。ここでは、クロスセルのメリットを3つ紹介します。

顧客単価が上がる

クロスセルによって購入点数が増えるため、顧客単価が向上します。新規顧客の獲得のために多くのコストをかけるよりも、既存顧客にリピートしてもらうほうがLTV(生涯顧客価値)アップを目指せるため、多くの企業で取組まれています。

LTVの算出方法は一般的に以下の通りです。

LTV=購入単価×購入回数×継続期間

顧客をファン化しやすい

関連商品とセットで提案すれば、より便利に商品を活用できるため、顧客満足度の向上が期待できます。そのため、次回も同じ店舗やECサイトで購入する可能性が高まります。

顧客の信頼を得てファンになってもらえば、リピート率が向上し、長期的にみて売上も安定するでしょう。

営業効率が向上する

一度の商談で複数の商品を契約できれば、営業効率がアップします。個別の商品ごとにアポを取ったり、提案するのは時間や労力などリソースがかかります。提案時には契約できなくても、関連商品の認知につながるため、後日の購入につながることもあるでしょう。

クロスセルの成功事例

クロスセルに取り組むことで、売上アップや顧客のファン化が期待できます。

ここでは、クロスセルの成功事例を紹介します。

飲食店

飲食業では、クロスセルがよく活用されます。居酒屋では「プラス〇〇円で飲み放題」になるメニューが見られますが、サービスを追加することでお得感を出すクロスセルの手法です。追加注文、時間延長などで単価アップを狙えるでしょう。

ファストフードチェーンで、ハンバーガーを注文すると「一緒にポテトはいかがでしょうか」と販売員が薦めてくるのも、典型的なクロスセルです。飲食店は、客単価のアップに熱心な業種だと言えるでしょう。

Web制作企業

あるWeb制作企業では、主力のサービスであるホームページ制作だけでは他社と差別化できず、競争力が不足していました。

基本的にクライアントがWeb制作を依頼するのは「新たに作ったWebを通じ、新規ユーザーへの訴求を促し最終的に売上アップにつなげる」という目的があります。あくまでもホームページは手段の一つに過ぎないことから、顧客ニーズを分析し、競合他社よりも効果的なSNS運用代行やプロモーション企画の立案・実施をクロスセルとして訴求しました。

ワンストップで対応できることはクライアントにも大きなメリットがあり、Win-Winの関係が生まれやすいでしょう。

ECサイト

大手のECサイトでは、出品する企業に商品管理から配送、支払い管理までを行うフルフィルメントを薦めています。

消費者には「よく一緒に購入している商品」や「関連する商品」を提案します。膨大な商品を取り扱うECサイトでは、顧客が目的の商品を見つけられないことがあります。解決策として、レコメンド機能による最適な提案ができ、売上につながっています。

プロセルトラクションがクロスセルをサポート

この記事でクロスセルの概要は説明していますが、新規事業のビジネスモデルを構築することはかんたんではありません。そこでプロセルトラクションではあなたの会社にマッチしたインサイドセールスのご提案から実践までサポートしています。

まずは話を聞いてみる

クロスセルを実施するタイミング

新規顧客にクロスセルを行うタイミングは、「購入を決定する直前」が一般的に適しています。顧客の購買意欲が高まっている購入直前のタイミングに、他の商品やサービスを併せておすすめすれば、成約につながる可能性が高まるでしょう。

既存顧客にクロスセルを実施するのは、「契約更新時」などのリピートするタイミングが良いと言えます。契約を更新する意思があることは、自社の商品に一定以上の満足感を覚え、関心も継続していると考えられます。クロスセルで顧客単価のアップを図ると同時に、今後もリピートされるように、顧客満足度を高めることも重要です。

クロスセルの基本的な実施方法

クロスセルの導入方法を手順ごとに解説します。フレームワーク「LWP」を使い顧客データを分析し、クロスセルを実行したら効果を検証、改善を繰り返します。

顧客データの収集・分析を行う

顧客データの収集・分析は、LWP分析とランク付けが効果的です。

LWP分析のフレームワーク

  • List……顧客リスト
  • What……行動内容
  • Pace……行動頻度

LWP分析では、対象となる顧客リストの抽出や、顧客のこれまでの購買行動や自社のアプローチに対する顧客の反応などをもとに、受注につながりやすい優良顧客の条件を定義します。

顧客情報を整理したら、顧客をマッピングしてランク付けを行いましょう。マッピングでは「拡大余地」と「実績」の2軸で見える化し、その結果から顧客を4つのランクに分類します。

拡大余地:大、実績:大→ランクA(購入実績が多く拡大余地もある)

拡大余地:大、実績:小→ランクB(開拓営業先)

拡大余地:小、実績:大→ランクC(現状維持)

拡大余地:小、実績:小→ランクD(購買につながりにくい顧客)

顧客データを分析すれば、どの顧客に優先してクロスセルを仕掛けたら良いかが明確になります。

商品設計をする

商品設計では、顧客のニーズに合致した商品プランを作ることが大切です。分析結果をもとに、どのような商品・サービスであれば購入につながるかを考えます。

商品設計には、2つの基本的なパターンがあります。

  • 関連商品を同時に購入してもらう
  • 定期購入のサービスを作る

関連商品をセットで販売する際は、価格の値引きや損失回避、満足度の向上などを訴求して提案しましょう。期間限定品などで、購買意欲を高めるのも有効です。

定期購入のサービスは、同じ商品をリピート購入してもらう手法です。事務用品などの、定期的に購入が必要な商品を定期購入する仕組みにすれば、継続的な売上に貢献します。定期購入プランは、基本的に値引きをして訴求を行います。継続的に契約を続けてもらうことで、トータルの売上を確保できます。

購入までのシナリオを作る

顧客データの分析結果から、最適なシナリオを作っていきます。

「買わされるのでは」という不安を与えずに、顧客が自然な流れで購入に至るようなプロセスを作りましょう。

以下のポイントを考慮し、自社に合うシナリオを構築します。

  • 購入のタイミング
  • 購入の頻度
  • 購入期間
  • 購入した商品の価格
  • 商品の種類

「40代女性セグメントは、商品Aと商品Bを同時購入する傾向がある」という分析結果であれば、今後いずれかの商品を検討する顧客に、もう片方の商品も積極的にレコメンドするシナリオを作成します。

実行・効果の検証・改善を繰り返す

シナリオを実行したら、継続的に効果を検証し、問題点を洗い出し、改善していきます。PDCAを回すことで、より売上にインパクトを与える方法が明らかになるでしょう。施策のデータを蓄積すれば経験値が増え、PDCAもブラッシュアップされるため、より売上アップにつながりやすくなります。

クロスセルを成功させるコツ

クロスセルを効果的に実施すれば、売上アップが見込めます。

ここではクロスセルを成功させるコツを紹介します。

顧客を分析しニーズを把握する

顧客データを分析してニーズを掴むことは、売上に直結するため大変重要です。分析結果から、営業のタイミングを狙ったり、ナーチャリングなどの営業に関するさまざまな施策を打てます。

メリット・ベネフィットを説明して購買意欲を高める

顧客に気持ちよく購入してもらい、リピートにつなげるためにも、商品のメリットやベネフィットを伝えて、顧客に購入した後の未来をイメージさせましょう。その上で成約に至れば、顧客の満足度も上昇します。

ナーチャリングで見込み顧客を育成する

すぐ購入につながる顧客でなくても、ナーチャリングを行えば、いつかは成約に至るかもしれません。ナーチャリングで、自社の商品を定期的に紹介すれば、顧客の購買意欲を育成することが可能です。定期的なメルマガ配信などで、継続的に自社の情報を送り、信頼感を育てることで、購買につなげる手法です。

アフターフォローをしてリピート率を高める

販売した後も、アフターフォローを行い、次の購入やファン化へつなげましょう。

商品に関する問い合わせ窓口を設けて、顧客の質問にすぐに対応できる体制を整えたり、顧客に商品の不具合や不明な点はないかヒアリングするなど、顧客と継続的にコンタクトを取れるシステムを作ります。

丁寧なアフターフォローによって、顧客から信頼され、継続的なリピート購入につながります。

クロスセルを推進することでLTV向上へ

クロスセルの基本情報や実施方法、成功事例などについて解説しました。クロスセルでは顧客の分析・ニーズの見極めや実施後のアフターフォロー、ナーチャリングが重要です。既存顧客をファン化してリピート率を高め、LTVを上げれば企業の売上アップにつながります。

ぜひ自社の戦略にクロスセルを取り入れてみてはいかがでしょうか。もしクロスセルのシステム構築が難しいと感じた場合は、プロフェッショナルに依頼するのもひとつの手段です。

プロセルトラクションがクロスセルをお手伝いします

プロセルトラクションではリクルートなどの大企業からスタートアップまで幅広く経験してきた営業のプロが、見込み顧客の分析からリピート率向上までを支援いたします。ぜひお気軽にご連絡ください。

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