マーケティングやセールスの裏側では頻繁に心理学が活用されています。「返報性の原理」もその1つで、消費者・購入する側の行動に大きな影響を与えるものです。人間関係を良好に保つために「お返し」をしたいという潜在的な心理が誰にもあり、SNSや近隣のスーパーの店頭でも利用されています。

この記事では、返報性の原理の仕組みを解説するとともに、セールスやマーケティングで活用する具体的な方法を解説します。

返報性の原理とはなにか 

返報性の原理は人の行動に大きな影響力を持つ法則性です。米国の社会心理学者、ロバート・B・チャルディーニは、著書「影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか」(誠信書房)の中で、交渉において有利に事を運ぶその道のプロを観察し、いくつかの原理を見つけ紹介しています。

そのうちの1つに「返報性の原理」すなわち、何かを与えられるとお返しをしたくなるという心理があります。

返報性の原理の心理

返報性の原理によってお返しをしたいと考える心理は、合理的とは言えません。

しかし、人間は社会性が強く1人では生きられないという意識が強く働くため、社会生活を送る上で返報性は大切にされてきました。特定の人だけでなく、集団全体が互いに返報性を示すことで集団全体の関係が円滑に構築されます。

日本でも「恩返し」という言葉が古くから使われ、金銭や恩義にの貸し借りを大切にする人は「義理堅い」と評されます。

返報性の原理の対象

お返しをしたいと感じるものには次のようなものが挙げられます。

  • 好意
  • 贈り物
  • 援助
  • 譲歩
  • 敵意
  • 自己の開示 

好意や親切に対して、お返しをしたいと思うのは日常に見られる自然なことです。相手が道を譲ってくれたから、自分も譲歩したくなるなどという思考プロセスも同様。

自己の開示とは、相手が名前や勤務先を名乗ると、「自分も名乗るべきだ」などと感じる場面に見られます。

返報性の原理の実験

先述のチャルディーニ博士は次のような実験を行い、返報性の原理の存在を示しています。

<実験内容>
実験対象となった大学生がキャンパスを歩いていると、青少年カウンセリングプログラムの担当者と名乗る者に次のような要求をされます。

パターン1.「ボランティアで非行少年たちと動物園で一日過ごして欲しい。」

パターン2.「週2時間、最低2年間カウンセラーとして非行少年に奉仕して欲しい。」
この要求を相手が断ると、続けて1.と同じ要求が行われる。

結果は1.の場合17%、2.では50%の大学生が承諾しました。最初に大きな要求を断った方が約3倍の被験者が承諾したことになります。

これはドア・イン・ザ・フェイス・テクニックと呼ばれるもので譲歩の返報性です。相手が譲歩したことに、お返しをしようとする心理が働いています。

プロセルトラクションが返報性の原理を用いたセールスをサポート

この記事で返報性の原理の概要は説明していますが、実際の場面で効果的に実施することはかんたんではありません。そこでプロセルトラクションでは、あなたの会社にマッチした返報性の原理を用いたセールスのご提案から実践までサポートしています。

まずは話を聞いてみる

返報性の原理を実践するためのステップ

ここからは、「返報性の原理」を実践するにあたっての3ステップを解説します。

1, 与えるものを事前に準備し計画する

好意、贈り物、援助、譲歩、自己の開示などが返報性の原理の対象になります。何が返報性の原理を生みだすかを踏まえて相手に提供できるものを考えます

試食販売では提供する食品を準備し、同時に調理方法などをアドバイスできるようにリサーチしておきます。衣服の試着や化粧品の販売では、こちらが譲歩する状況でも提案できるように複数の商品やアドバイスを準備しておきます。

2, 「返報性の原理」が生まれる対象を顧客に与える

お返しをもらうには、貸しをつくることが必要です。ただし与えるものは実在する物でなくてもかまいません。親切な対応でも返報性は生み出されます。接客では相手の要望を聞いてこちらができる援助をします。

販売員の個人的に使っている商品などを紹介すると、自己の開示の返報性が働き顧客が自分の好みを話してくれるようになり、お互いの距離が縮まるのもその一例です。

3, 無理なく自然に実施できるよう注意する 

こちらが好意を示しても、必ずお返しを貰えるわけではありません。過度に期待すると、あからさまに恩に着せようとしている印象を持たれてしまいます。無理なく、自然な形で好意を提供できれば、相手に安心感をあたえられます

返報性の原理を活用する

相手に試してもらう 

試食販売、衣服の試着などで、受けた好意を返したいと思ってもらいます。合わせて丁寧な接客をすると効果的です。試食販売では商品の調理のポイントや合わせて食べたい食品のアドバイスをすると好感がもてます。衣服の試着では、サイズ選びを手伝い、コーディネートのアドバイスなどを丁寧にすると、好意を感じてもらえます。化粧品店でのお試しメイクでは、相手の要望や悩みを聞いて解決する方法をアドバイスしデモンストレーションできれば、顧客の商品を買いたいと思う気持ちは強くなります。

SNSマーケテイングで活用する

SNSでは、いいねやコメント、フォローをしてもらうとそのお返しをしたくなります。自社の商品やサービスと共通の話題などを投稿しているユーザーにいいねやコメントをすると、興味をもってもらう良い機会になります。相手に興味を持ってもらったので自分も好意を返そうと思うわけです。

また、オンラインのマーケティングでは、いきなり商品を購入してもらうのではなく、まずはフォロー、ホワイトペーパーの閲覧、メールマガジンの登録など小さなことから始めてもらうことも、長期的な関係を築くためには大切なプロセスです。

ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック 

先に大きなお願いをし、相手に断られた後に、より小さなお願いをします。例えば、高機能、多機能な自動車のオプション製品を勧めて断られたあと、標準的な売れ筋のオプション製品を勧めます。はじめの要求をしたかったけれど、断られたので譲歩して小さな要求に変えたという印象が生まれます。譲歩してもらったので、要求を聞こうという心理が働きます。

shut the door in the face(門前払いする)に対して、ドア越しに顔を見てもらえれば購買のチャンスが生まれることがその名の由来です。

ありがたみを感じてもらう

特別なこと、めったに無いことだと感じてもらえれば、顧客はその好意にお返しをしたいと思うでしょう。自分が思っていた以上のことを相手からされたら、感謝し記憶にも残ります。相手の要望や状況に合わせた柔軟な対応ができると、特別に自分のためにしてくれたと相手に感じてもらえます。

他の原理と組み合わせる

試供品を受け取ったときには、お返しをしようとする返報性と、一度使ったものをそのまま使い続けようとする「一貫性」も働いています。初めに大きな要求をするドア・イン・ザ・フェイス・テクニックも、譲歩の返報性の他にコントラストの原理、つまり始めに行った依頼より次のお願いの方が小さく感じられる性質が利用されています。

対象者限定のクーポンにも返報性の原理は働きますが、同時に希少性の原理が働いています。SNSも人の行動を参考にする社会的証明の原理など、いくつかの原理と関連があります。

返報性の原理は必ずしも独立して働くわけではありません。状況に応じて自然な形で組み合わせます

返報性の原理を用いてROIを向上させよう 

返報性の原理とマーケティングには強い関係があります。もともと私たちは人間関係を良好に保つためにお返しをします。普段と同じようにマーケティングでも顧客との関係が良くなるよう心掛ける必要があります。

サービスを提供する側は、顧客が返報性を感じやすくするストーリー設計を行うとよいでしょう。顧客と良好な関係を築きながらROI(投資利益率)の向上を図れます。

プロセルトラクションがストーリー性を用いた効果的なセールスを実践します

プロセルトラクションではリクルートなどの大企業からスタートアップまで幅広く経験してきた営業のプロが、返報性の原理を用いたマーケティングの提案からセールスまで幅広くサポートいたします。ぜひお気軽にご連絡ください。

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