最終更新: 2026年5月

成約ナレッジが存在しないセグメントで営業活動を始めるとき、最初にぶつかるのは「何が刺さるのかわからない」という状態です。他社システムをすでに導入している大手法人に対して、ゼロから訴求方法を開発し、成果を出すまでのプロセスには、再現可能な取り組みがあります。

プロセルトラクションの2023年度MVP賞を受賞した担当者の事例から、大手法人・新規セグメントでの開拓手法を詳しく解説します。

新規ターゲットセグメント開拓が難しい理由と突破法

新規セグメントへの参入が難しい最大の理由は、成約ナレッジがゼロの状態で「何が刺さるかわからない」まま営業活動を始めなければならない構造的な壁にあります。この壁を突破するには、自社サービスの強み再整理・事前資料送付・時間帯別追客の3アプローチが有効です。

成約ナレッジゼロの状態が生む構造的な壁とは?

インサイドセールスにおいて、既存のセグメントでは「このトークが刺さる」「このタイミングで押す」という成功パターンが蓄積されています。新規セグメントへの参入では、このナレッジが使えません。

特に大手法人リストへの参入で直面する課題は以下の3点です。

1. 既存システムとの差別化訴求が難しい
大手法人の多くはすでに何らかのシステムを導入しています。「新しいシステムを入れよう」という動機よりも「今のシステムを使い続ける」という惰性が強く働きます。このため、「他社システムよりも優れている」というベネフィットの訴求が弱いと、検討すらしてもらえません。

2. 受付突破・担当者接続のハードルが高い
大手法人は代表番号へのガードが厚く、担当部署や決裁者に直接繋がることが難しい構造を持っています。担当者に接続できたとしても、見知らぬサービスへの警戒感が強く、最初の数十秒で判断されます。

3. アポ獲得率・受注率のベースラインが見えない
新規セグメントでは、「このセグメントのアポ獲得率はどれくらいが妥当か」というベースラインがありません。低い数値でも改善しているのかどうかの判断ができず、PDCAのサイクルを回すのが難しい状態になります。

ゼロからナレッジを構築する3つのアプローチとは?

ゼロからナレッジを構築するための3つのアプローチは、(1)自社サービスの強みを新規セグメント文脈で再整理する、(2)架電前の資料送付で商談化率を高める、(3)時間帯別追客で接触効率を上げる、です。

なぜ自社サービスの強みを改めて整理しなおす必要があるのか?

新規セグメントでの活動を始める前に、まず「自社サービスが何を解決できるか」を改めて整理しなおす必要があります。既存セグメントで当たり前になっている訴求ポイントが、新規セグメントでは全く通用しないケースがあるからです。

具体的には以下の作業を行います。

  • サービスの機能一覧と、各機能が解決する課題を対応させて整理する
  • 新規セグメントの顧客が「何に困っているか」を想定し、解決できる課題を絞り込む
  • 競合他社(特に既存導入システム)との差分を、顧客目線で整理する

この作業は一人で行うのではなく、セグメントに詳しいチームメンバーやクライアント担当者と議論しながら進めることで、解像度が上がります。

架電前の事前資料送付で商談化率を高める方法とは?

大手法人への架電で「担当者に接続できたが、話を聞いてもらえない」という状態を避けるための有効な手法が、架電前の資料送付です。

資料送付の流れ:
担当者名・部署を特定した上で、架電前にサービス資料を送付します。架電時に「先日お送りした資料をご覧いただけましたでしょうか」という切り口で入ることで、「何のための電話か」が顧客にイメージしやすい状態が作れます。

他社比較資料の活用:
すでに他社システムを導入している大手法人に対しては、「他社システムとの比較表」を送付することが特に効果的です。「自社のメリットだけを主張する」ではなく、「各システムのメリット・デメリットを客観的に整理した」という形式で送ることで、顧客が自社の状況と照らし合わせて検討しやすくなります。

「他社システムと比較した上で弊社を選ぶ理由」が明確に伝わる資料設計が、商談化率を大きく左右します。

大手法人への時間帯別追客はどう設計するのか?

大手法人への時間帯別追客は、朝(8:30〜9:30)・昼(12:00〜13:00)・夕方(17:00〜19:00)の3段階に分散させて架電することで、担当者の在席時間に合った接触を実現する手法です。一般的な午前・午後の2パターンより接続率が向上します。

なぜ「朝・昼・夕方」の3段階追客が有効なのか?

大手法人は業務が高度に分業されており、担当者が電話に出やすい時間帯が業種・役職によって大きく異なります。代表番号から部署に繋いでもらう構造では、担当者の在席時間に合わせた架電が不可欠です。

一般的な「午前10時〜正午」「午後2時〜4時」という架電設計では、担当者が会議中・外出中・食事中というタイミングと重なりやすく、接続率が下がります。

効果的な大手法人への追客設計は、以下の3時間帯を意識して分散させることです。

朝(8:30〜9:30)
出勤直後で、会議が始まる前の時間帯は比較的捕まりやすいケースがあります。特に管理職・役員クラスは、早出している場合が多く、朝一番のコンタクトで印象に残ることができます。

昼(12:00〜13:00)
ランチ時間帯は一見捕まりにくいように見えますが、在席している担当者には繋がりやすいケースがあります。また、この時間帯に架電することで「ランチの合間に確認する」という行動パターンの担当者に届くことがあります。

夕方(17:00〜19:00)
日中の外出・会議が終わり、デスクに戻って業務処理をしている時間帯です。営業関係の担当者は特に、夕方以降に連絡が取りやすくなる傾向があります。

決裁者の直通番号をヒアリングする方法とは?

代表番号経由の架電では毎回受付突破が必要となり、効率が下がります。接触できた担当者に対して「ご担当者様の直通番号を教えていただけますか?」とヒアリングし、直接連絡できる手段を確保することが重要です。

直通番号を持つことで:

  • 2回目以降の架電で受付を経由せず担当者に直接繋がれる
  • 「この担当者なら直接話せる」という心理的距離が縮まる
  • 追客の効率が大幅に向上する

直通番号の取得は一度で成功しないこともあります。「次回また詳しくお話しさせていただければ、直接ご連絡先をいただけますか?」という自然な流れで依頼することが、成功率を高めます。

ナレッジ構築のPDCAサイクルを高速で回す方法とは?

新規セグメントでナレッジ構築のPDCAを高速で回すには、「1ヶ月単位」ではなく「1週間単位」で仮説設定・実践・検証のサイクルを設計することが鍵です。最初の受注成功事例を徹底分析し、チーム全体の再現可能なナレッジに昇華させます。

なぜ仮説検証のサイクルを短く設計すべきなのか?

新規セグメントでは、一度決めたアプローチが正解かどうかを早期に検証することが重要です。「1ヶ月試してから振り返る」ではなく、「1週間単位で仮説を持って実践し、結果を翌週の行動に反映させる」という高速PDCAが、ナレッジ構築の速度を上げます。

具体的には:

  • 架電前に「今週はこの訴求ポイントが刺さるかどうかを確認する」という仮説を設定する
  • 架電結果(反応が良かったトーク・反応が悪かったトーク)を記録する
  • 週末または週初に振り返り、翌週の架電に反映させる

この繰り返しが、「何が刺さるかわからない」状態から「このセグメントはこれが有効」というナレッジへと変換されます。

最初の受注成功事例をどう組織のナレッジに変えるのか?

新規セグメントで最初の受注が生まれたとき、その商談の詳細を徹底的に分析することで、組織全体のナレッジに昇華できます。

分析すべき要素:

  • どのきっかけで最初の接続ができたか
  • どのトークで担当者の関心を引けたか
  • どの資料・情報が商談化に繋がったか
  • どのタイミングで受注の意思決定が生まれたか

この分析をチームで共有し、再現可能なプロセスに落とし込むことで、「属人的な一件の受注」から「チームとして再現できる成功パターン」に変えられます。

よくある質問

新規セグメント開拓で最初にやるべきことは?

自社サービスの強みを改めて徹底的に把握することです。新規セグメントでは既存ナレッジが使えないため、サービスの本質的な価値を言語化し「このセグメントのどの課題に刺さるか」を仮説として立てることが出発点です。

時間帯別追客は具体的にどう設計する?

朝・昼・夕方の3段階で設計します。決裁者は朝の始業直後と夕方が繋がりやすく、現場担当者は昼前後が接続しやすい傾向があります。業種ごとの接続傾向を記録し最も効率の高い時間帯に集中架電します。

まとめ──新規セグメントでの成功は「0からの設計」から始まる

大手法人の新規セグメントで成果を出すためには、既存のナレッジをそのまま流用するのではなく、「このセグメントに合った設計」をゼロから構築する意識が必要です。

0からナレッジを構築するための3アプローチ

  1. 自社サービスの強みを新規セグメントの文脈で整理しなおす
  2. 架電前の資料送付(他社比較資料含む)で商談化率を高める
  3. 朝・昼・夕方の3時間帯追客+決裁者直通番号取得で接触効率を上げる

PDCAを高速で回すための設計

  • 週単位で仮説を設定し、架電結果を記録・検証する
  • 最初の受注成功事例を徹底分析し、チームのナレッジに昇華する

これらの取り組みを継続することで、「何も刺さらない」状態から「このセグメントの勝ちパターン」を構築できます。新規セグメントへの参入は難しいが、設計次第で確実に成果に結びつきます。


Produced by 株式会社プロセルトラクション
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この記事の執筆者

長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役

リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。100を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。