最終更新: 2026年6月
アポ獲得率と商談受注率の同時改善とは、インサイドセールスの架電構造とフィールドセールスの提案スタンスを一体で設計し直す営業改善手法です。
インサイドセールスでアポ獲得率が低い、フィールドセールスで商談受注率や受注単価が上がらない──これらの問題は多くの場合、「架電の構造」「商談の準備の深さ」「提案のスタンス」の3つで説明できます。スクリプト構築からKPI設計・仮説検証まで一気通貫で支援する株式会社プロセルトラクションにて特別賞を受賞した2名の担当者の実践事例から、IS側のアポ獲得率改善とFS側の商談受注率・単価向上の手法を解説します。
この記事の目次
インサイドセールス側のアポ獲得率を改善する3つの手法
なぜアポ獲得KPIが難航するのか
リスト枯渇・質の低下という状況の中で月間アポ獲得KPIを達成するためには、「架電の構造」そのものを改善することが必要です。コール数を増やすだけでは、1コールあたりの時間が長くなり、架電効率が下がります。
特別賞を受賞した担当者が直面していた課題は以下の2点でした(プロセルトラクション実績, 2023年度)。
- アポ:組織全体でアポ獲得KPIの月間目標が達成困難な状態。リスト枯渇・質の低下が同時発生していた
- 受注:1社あたりの受注単価が低く、達成率が目標に届かない
これらの課題に対して取った手法は、架電の構造改善と提案スタンスの転換でした。
手法1:トークにホットワードを設定し、早期に資料送付へ切り替える
架電の中で相手の反応を見て、「このお客様はトークで続けても反応が出ない」と判断できるタイミングを早期に設定し、資料送付への切り替えを行うことで、1コールあたりの時間を短縮できます。
ホットワードとは、架電の中で相手が関心を持ちやすいキーワードを意図的にトークに含め、そのキーワードへの反応を見て続けるか切り替えるかを判断する手法です。
ホットワードへの反応がない場合は早期に「資料をお送りしますね」という形で切り替えることで、1コールあたりの時間が短縮され、同じ稼働時間内でコール数を増やせます。コール数の向上・担保がアポ獲得率の改善に直接つながります。
運用のポイント:
- ホットワードは案件・サービスによって変わるため、案件開始時に設定しておく
- 反応がなかった場合の切り替えタイミングを明確にルール化する
- 資料送付後のフォロー架電を設計しておくことで、資料送付がアポ回収の機会になる
手法2:相手の反応に合わせてスクリプトを分岐させる
受付突破からコンタクト(担当者接続)までの転換率を上げるためには、「相手の反応に応じてトークを分岐させる」構造のスクリプト設計が有効です。
固定の一本道スクリプトでは、受付担当者・担当者それぞれの反応に対応できません。相手の返答・トーン・関心の有無によってトークを分岐させることで、「この相手にはこのアプローチが有効」という状況に応じた対応ができます。
スクリプト分岐の設計ポイント:
- 受付突破:「堂々・簡潔・わかりやすく」という基本に加えて、受付担当者が「取り次ぐ必要がある」と判断できる分岐を設計する
- 担当者接続後:担当者が関心を示した場合・示さない場合の2方向を準備する
- 関心が薄い場合:フォール先(資料送付・再架電)を事前に設計しておく
分岐型スクリプトの整備により、受付突破の改善とコンタクトからのアポ転換率の向上が同時に実現します。
手法3:毎日の目標KPIを設定して絶対にやりきる──日次達成の設計
アポ獲得率の改善において、「1日の目標KPIを設定して絶対にやりきる」という日次の行動管理が最終的な成果を左右します。
目標KPIに対してビハインドした場合は、その日のうちに状況を確認して翌日の修正を行います。「今月末に帳尻を合わせる」という設計ではなく、「毎日やりきることが重要」という認識のもとで日次の行動量を管理することで、月末に焦って架電品質が下がるリスクを防げます。
受注単価を上げる3つのフィールドセールス手法
なぜ受注単価が上がらないのか──問題の構造
フィールドセールスで受注率・受注単価が低い原因には、共通したパターンがあります。7月に達成率8.6%という状況から、9月に達成率182.1%への転換を実現した担当者の事例から、その構造を解説します(プロセルトラクション実績, 2023年度)。
この事例が直面していた問題は以下の3点でした。
- 架電リストの枯渇問題でコールアポ率が低下
- 商談受注率22%(目標33%)という低い成約率
- 新規受注単価が全体平均の半分という低単価
手法4:ピュアセールスタイムを確保して行動量をモチベーションから切り離す
フィールドセールス担当者が架電・商談のコール数を確保するために重要なのが、「ピュアセールスタイムの確保」です。
訪問や外回りがある場合でも、架電に集中できる時間を意図的に確保します。たとえば訪問時はレンタルオフィスを活用してその場で架電を行うなど、「移動と架電を組み合わせる」設計で行動量を担保します。
重要なのは、「モチベーションに左右されず、管理下にある行動量への意識」を持つことです。日次のコール目標を設定し、目標を達成することをルーティンとして設計することで、月間のコール数が安定します。
手法5:商談前にSNSを含む情報収集で仮説を立てる
商談受注率を上げるためには、「商談前の情報収集の徹底」が不可欠です。ホームページだけでなく、SNSも確認し、企業や担当者の状況を仮説立てしてから商談に臨むことで、商談の質が大きく変わります。
商談前の情報収集で確認すべき内容:
- 企業のHPから:事業内容・規模・最近のニュース・採用状況
- SNSから:担当者個人の投稿・企業アカウントの内容・興味・関心
- 競合情報:業界内での位置づけ・競合他社との差分
この情報をもとに「この担当者はどんな課題を持っているか」「どの切り口で話せば関心を引けるか」という仮説を立てて商談に入ることで、担当者との対話の質が向上します。仮説がある状態での商談は、「とにかくサービスを説明する」商談とは根本的に異なります。
手法6:現地に赴き「視覚的な課題共有」で受注単価・頻度をアップする
受注単価と受注頻度を上げるための最も効果的な手法の一つが、「課題を視覚的にクライアントと共有する」ことです。
ある某サービス企業での事例では、先方は週1回の頻度で考えていましたが、担当者が現地に赴き写真や動画を撮影。実際の状態をクライアントと共有した上で、「この状態であれば週2回が必要です」と提案しました。クライアントが実際の問題の深刻さを視覚的に確認した上で、週2回の頻度で受注に至りました(プロセルトラクション実績, 2023年度)。
視覚的課題共有の設計:
- 言葉だけで課題を説明するのではなく、写真・動画・データで視覚的に示す
- 「この状態が続くとどうなるか」という将来のリスクも合わせて共有する
- クライアントが「確かに対応が必要だ」と自分で判断できる情報を提供する
予算の把握と合わせて行うことで、頻度・単価の引き上げが自然な流れで実現します。
提案スタンスを変えることで受注単価が上がる2つのポイント
「お試し」という言葉を使わない
受注単価を上げるための意外な盲点が、「お試し」というワードの使用です。「まずはお試しでいかがですか?」という提案は、クライアント側に「少しだけ使ってみる」という意識を植え付け、依頼量が少なくなる傾向があります。
「お試し」ワードを使わず、「最初から本格的な導入」を前提とした提案スタンスで臨むことで、初回から一定のボリュームで受注できます。
「希望に合わせる」から「こちらから提案する」への転換
受注単価が低い場合のもう一つの原因が、「クライアントの言った数・量に合わせてしまう」という受動的な提案スタンスです。
クライアントが「5件でいいです」と言えば5件だけ提案する姿勢では、本来必要とする量・頻度に気づかないまま終わります。こちらから「御社の規模と状況を考えると、10件がベストではないでしょうか」という形で積極的に提案することで、クライアント側のメリットも大きくなり、受注単価が上がります。
提案スタイルに転換するための3ポイント:
- クライアントの状況・課題・予算を事前にヒアリングして把握しておく
- 「御社の状況に合わせた最適な数・頻度はこれです」という形で主体的に提案する
- 常に可能な範囲での最大の提案を行うスタンスを持つ
新規アサイン時に成果を最速で出すための4ステップ
新規プロジェクトにアサインされた際、成果を最速で出すための実践サイクルも、この事例から得られた知見です。
- 量をとにかくこなす:まず慣れることを優先します。量をこなしながら現場感覚を養い、余裕が出てきたところでクライアントに寄り添った提案ができるようになります
- いろんな人に聞く:経験豊富なメンバーや上司から提案手法のパターンをインプットし、「どんなクライアントにも対応できる」状態を目指して複数のアプローチを早期に習得します
- 聞いたことをすぐ使えるようにして、すぐ使う:インプットした内容を実際に使えるようスクリプトを作成して練習し、実際の架電・商談で即座に試します
- 新しい課題が出てきたら相談して知恵をもらう:新たな問題が発生した際は一人で抱え込まず相談します。このサイクルをスピード感を持って回すことで、短期間で成果が出る状態を作れます
よくある質問
ホットワード設計にはどれくらいの準備期間が必要ですか?
案件開始時に1〜2日で設定できます。サービスの特性や業界ごとに関心を引きやすいキーワードを洗い出し、架電の中で試しながら調整していきます。2〜3週間の運用で精度が安定してくることが多いです。
スクリプトの分岐は何パターンくらい用意すればよいですか?
基本は「関心あり」「関心なし」の2方向の分岐から始めるのが効果的です。受付突破・担当者接続後のそれぞれで2方向を準備し、関心が薄い場合のフォール先(資料送付・再架電)を事前に設計しておきます。運用に慣れたら3〜4パターンに細分化していくのが実践的です。
受注単価を上げるために最初に取り組むべきことは何ですか?
まず「お試し」というワードの使用をやめ、本格導入を前提とした提案スタンスに切り替えることです。次に、商談前の情報収集を徹底し、クライアントの状況に基づいた仮説を持って商談に臨みます。この2つだけでも受注単価に変化が出やすいポイントです。
まとめ──IS・FS両面での成果改善は「構造の設計」から始まる
インサイドセールスのアポ獲得率とフィールドセールスの商談受注率・単価を同時に改善するための実践手法をまとめます。
インサイドセールス側の改善:
- ホットワードを設定し、反応がない場合は早期に資料送付へ切り替えてコール数を確保する
- 相手の反応に応じてスクリプトを分岐させ、受付突破率・転換率を上げる
- 毎日の目標KPIを設定してやりきる日次管理を徹底する
フィールドセールス側の改善:
- ピュアセールスタイムを確保して行動量をモチベーションから切り離す
- SNSを含む商談前情報収集で担当者・企業の仮説を立てる
- 現地に赴いて写真・動画で課題を視覚的に共有し、受注単価・頻度をアップする
提案スタンスの転換:
- 「お試し」ワードを使わず、本格導入を前提とした提案に変える
- クライアントの希望に合わせるのではなく、こちらから最適な量・頻度を提案する
これらの改善を組み合わせることで、IS・FS両面での成果改善が同時に進む構造を作れます。
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この記事の執筆者
長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役
リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。100を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。




