最終更新: 2026年5月

インサイドセールスの現場でよく起きる問題があります。「受付で断られるケースが多い」「担当者には接続できるが、断られるケースが多い」「スクリプト通りに話しているが、途中で切電される」──このような状態が続いても、「感覚的に何かがうまくいっていない」という認識にとどまり、具体的な改善策が出てこないケースです。

改善に必要なのは、個人の感覚ではなく、フェーズ管理による「数値」に基づいた改善策の構築です。さらに、個人の架電履歴を次の架電者が活用できる構造で記録することで、チーム全体の架電効率が大きく向上します。

実際の現場で蓄積された実践事例から、「フェーズ管理と改善トリガーの設計」と「架電履歴の記録手法」を解説します。

インサイドセールスの架電品質をフェーズ管理で改善する方法とは?

インサイドセールスの架電品質をフェーズ管理で改善する方法とは、架電結果を「受付拒否」「担当者NG」「リード取得」「アポイント取得」などのフェーズに分類し、各フェーズの件数・率を数値で管理することで、「どのフェーズで詰まっているか」を特定し、具体的な改善策に直結させるアプローチです。

なぜフェーズ管理は感覚から数値への転換に不可欠なのか?

インサイドセールスのフェーズ管理は、成果の報告だけでなく、稼働中の改善に重要な役割を果たします。「何かがうまくいっていない」という感覚的な認識を、「どのフェーズで詰まっているか」という数値的な特定に変換するためのツールです。

たとえば以下の状態を比較してみます。

  • 「受付突破がうまくいっていない気がする」→感覚的な認識
  • 「受付拒否率が35%あり、業界標準の30%を超えている」→数値的な課題特定

後者の状態では、「受付突破のトークスクリプトを改善する」という具体的な打ち手に直結します。前者のままでは、改善のアクションが曖昧になります。

基本的なフェーズ分類にはどのようなものがあるのか?

インサイドセールスにおける一般的なフェーズ分類は以下の通りです。各フェーズに対して件数・率を記録することで、「どこで詰まっているか」が数値で見えるようになります。

フェーズ内容
受付拒否受付段階で取り次ぎを断られた
担当者NG(再アプローチ可)担当者と接続できたが断られた。ただし再度アプローチする余地あり
担当者NG(再アプローチ不可)担当者と接続できたが断られた。かつ再架電を断られた
担当者不在接続を試みたが担当者が不在だった
リード取得担当者情報・パーミッション等のリード情報を取得できた
アポイント取得商談のアポイントを獲得できた
再コール対象後日の再架電が必要な状態
電話不通電話が繋がらなかった

これらのフェーズを案件ごとに設定し、架電結果を都度記録していくことで、チーム全体のパイプライン状況が一目で把握できます。

稼働開始後の架電数と改善トリガーはどのように設計するのか?

稼働開始後は最初の100コールを「分析のための投資期間」として設計し、受付拒否率30%超・担当者接続率30%割れなどの改善トリガーを事前に設定しておくことで、数値に基づいた改善を素早く実行できます。

なぜ最初の100コールは「分析のための投資」として設計すべきなのか?

インサイドセールスのプロジェクトが始まった際、いきなりフル稼働でコールを回してしまうと、トークスクリプトやリストに問題があった場合に、工数やリストを無駄に消費してしまうリスクがあります。

そのため、稼働開始直後は「100コールを目途に架電結果を分析する」というアプローチが有効です。最初の100コールは、成果を出すための投資期間として設計します。この段階で架電結果を分析し、フェーズごとの状況を把握した上で、必要な改善を行ってから本格稼働に移行することで、無駄なリソース消費を防げます。

改善を判断するための4つのトリガーとは?

フェーズ管理の数値が一定の基準を超えた・下回った場合に、改善を実施するタイミングを設計しておくことが重要です。以下の4つが、改善を判断するトリガーとなります。

トリガー1:受付拒否率が30%を超えた場合
トークスクリプトもしくはリストの改善が必要です。受付突破率は、扱うサービスや架電先の業種によっても異なりますが、受付拒否率30%を一つの基準として改善を検討します。

トリガー2:担当者接続率が30%を切った場合
リストもしくはトークスクリプトのプレゼン部分の改善が必要です。担当者接続率が低い原因として、リストの精度(担当者情報が古い・適切な担当者に繋がっていない)またはスクリプトの受付突破部分に問題がある可能性があります。

トリガー3:想定アポ率を著しく下回った場合
この場合は、2つのケースに分けて対処します。

  • 担当者接続率が30%以上の場合:トークスクリプトの改善(接続できているがアポが取れていないため、スクリプトに問題がある)
  • 担当者接続率が30%以下の場合:トークスクリプトまたはリストの改善(接続自体ができていないため、より根本的な部分の見直しが必要)

トリガー4:複合的な問題が同時発生している場合
複数の指標が悪化している場合でも、改善策は必ず1つずつ実施することが重要です。

なぜ改善は「1つずつ」実施すべきなのか?

改善を行う際は、一度にトークスクリプトとリストを両方変えないことが原則です。

仮に2つの改善を一度にやり、改善がうまくいったとしても「何が原因だったか」が特定できません。逆に改善効果が出なかった場合も、「どちらの改善が間違っていたのか」が判断できなくなります。

改善活動は必ず1つずつ実施し、原因をつぶしていく必要があります。改善→効果確認→次の改善という手順を踏むことで、「何を変えたから成果が変わったか」という再現可能な知見が積み上がります。

架電履歴の記録方法を改善して架電効率を上げるには?

架電履歴の記録方法を改善するには、「確認した情報」と「聞きたかったヒアリング」の2軸で記録し、接続時間帯・営業時間などをSFAのtodoやカレンダーで管理する仕組みを導入します。これにより、次の架電者が前回情報を活かした効率的な架電が可能になります。

なぜ「不通・留守電」だけの記録では非効率なのか?

SFAなどのツールに架電履歴を残す際、「不通:留守電」「不通:担当者不在」といったシンプルな記録だけでは、次の架電担当者が架電前に過去のやり取りを確認するために時間がかかります。

また、先方への接続タイミングが把握できないため、架電しても接続できない状態が続いたり、ヒアリング実施のタイミングを逃したりといった問題が発生します。

不通が続いている先に架電する際、「どのような状況で不通になっているのか」「どの時間帯であれば接続できる可能性があるのか」といった情報が記録されていないと、毎回同じ失敗を繰り返すことになります。

「確認した情報」と「聞きたかったヒアリング」を記録する方法とは?

架電履歴の記録方法を改善することで、次の架電者が同じ情報を一から調べる手間を省き、チーム全体の効率が上がります。

改善された架電履歴の記録内容は以下の2軸で構成されます。

1. 確認した「情報」
架電前に調べた情報や、架電中に相手から得た情報を記載します。

  • 先方の営業時間(例:9:00〜13:00、15:00〜18:00 木曜定休)
  • 利用中のサービス名やその状況
  • 組織構造や担当者の役割
  • 次回架電に向けて確認した先方の状況

2. 聞きたかった「ヒアリング」
今回の架電で聞こうとしたが聞けなかった内容、または次回の架電で必ず確認すべき内容を記載します。

  • 次回確認すべき課題・ニーズ
  • まだ取得できていないBANTC情報
  • 先方が言いかけた気になる発言の深掘り

この2軸の記録が残っていることで、次の架電担当者は「架電前に確認した内容を次回架電者のために記載しておく」という引継ぎが自動的に完成します。

todoと営業時間の記録で接続効率を上げる方法とは?

時間指定で先方へ架電したい場合は、SFAのtodoに期限なしで設定しておき、カレンダーにも記載しておく運用が有効です。営業時間外の架電希望がある先については、所属先の担当者に必ず報告します。

特に医療機関など、診療時間・休診日が明確に決まっている業種への架電では、「午前9:00〜13:00、午後15:00〜18:00、木曜定休」といった情報を履歴に記載しておくだけで、次の架電者が無駄な架電をせずに済みます。

この営業時間の記録運用は、架電担当者自身だけでなく、クライアント担当者からも評価を受け、実際にSFAのシステム上のオブジェクション(必須確認事項)として正式に追加された事例があります。

架電履歴改善で得られる具体的な効果とは?

記録方法を改善することで得られる効果は以下の通りです。

  • 不通先に対してどのようなネクストアクションを取ればいいかが1つの履歴確認で判断できる
  • 過去の履歴を統一化でき、整理できる
  • 接続時間帯を把握して架電することで、先方への架電回数を抑えられる(必要のない架電が減る)

特に不通先が多い案件では、「どの時間帯に架電すれば接続できるか」の情報蓄積が、チーム全体の接続率に直結します。

フェーズ管理と架電履歴記録を組み合わせた運用設計の方法とは?

フェーズ管理と架電履歴記録を組み合わせた運用設計とは、フェーズ別の数値管理で「何を変えるべきか」を特定し、2軸の架電履歴記録で「次の架電者が同じ失敗を繰り返さない」環境を整える仕組みです。この2つを組み合わせることで、チーム全体の架電品質が継続的に向上します。

チーム全体に展開するための仕組み化はどのように行うのか?

フェーズ管理と架電履歴記録を個人の工夫として終わらせるのではなく、チーム全体に展開するための仕組みとして設計することが重要です。

フェーズ管理の展開方法:

  • フェーズ分類を案件ごとにカスタマイズし、架電リストのマスタタブで管理する
  • 週次でフェーズ別の件数・率を集計し、チームで改善トリガーを確認する
  • 改善策の実施・効果確認をチームで共有することで、ナレッジとして蓄積する

架電履歴記録の展開方法:

  • 「確認した情報」と「聞きたかったヒアリング」の2軸を記録する書式をチームで統一する
  • 接続時間帯・営業時間などの情報をSFAの固定フィールドとして追加する
  • todoの活用方法をチームで統一し、期限なしtodoの活用ルールを明文化する

なぜ数値改善と履歴活用の組み合わせが成果を安定させるのか?

フェーズ管理による数値改善は「何を変えるべきか」を特定し、架電履歴の記録は「次の架電者が同じ失敗を繰り返さない」ための環境を整えます。この2つを組み合わせることで、インサイドセールスチームの架電品質が継続的に向上する構造が生まれます。

取り組み改善される要素
フェーズ管理・改善トリガー設計どのフェーズで成果が出ていないかの特定と、改善策の方向性の明確化
架電履歴記録の2軸化次の架電者が前回情報を活かした架電ができる。無駄な架電・調査時間の削減
todoと営業時間記録先方の接続可能な時間帯での架電が可能になり、接続率が向上する

よくある質問

フェーズ管理の基本的な分類は?

「不通・留守電」「受付NG」「担当者接続」「ヒアリング完了」「アポ獲得」の5段階です。各フェーズの転換率を数値で管理することで改善ポイントが明確になります。

架電履歴に何を記録すべき?

「不通・留守電」だけでは不十分です。「確認した情報」と「聞きたかったヒアリング項目」を記録し、次の架電者が同じ情報収集をやり直す時間を削減します。todoと営業時間の記録も接続効率改善に繋がります。

まとめ──架電の「感覚管理」から「数値管理」への転換

インサイドセールスの架電品質を上げるための実践的な手法をまとめます。

フェーズ管理と改善トリガーの設計

  • 受付拒否・担当者接続・アポ獲得の各フェーズを数値で管理する
  • 稼働開始直後は100コールを目途に架電結果を分析し、課題を特定してから本格稼働する
  • 改善トリガー:受付拒否率30%超→スクリプト/リスト改善、担当者接続率30%割れ→スクリプト/リスト改善
  • 改善は必ず1つずつ実施し、原因を特定できる形で進める

架電履歴記録の2軸設計

  • 「確認した情報」と「聞きたかったヒアリング」を記載する
  • 接続時間帯・営業時間・休診日などをtodoとカレンダーで管理する
  • 次の架電者が前回情報を活かして架電できる引継ぎ環境を整える

これらの運用を徹底することで、「なんとなく成果が出ていない」という感覚的な状態から、「どこが課題でどう改善するか」が具体的に設計できる架電管理体制へ転換できます。


Produced by 株式会社プロセルトラクション
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この記事の執筆者

長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役

リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。100を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。