昨今、ビジネスでは「アクティブリスニング」というコミュニケーション技法の導入が進んでいます。
本来、精神カウンセリングで用いられてきた技法ですが、社内の「人間関係」や「コミュニケーション」を良好にできる技法として注目されています。
マネジメントの必須スキルとして挙げられるほど注目されているアクティブリスニングは、どのような目的でどういった方法で取り入れていくのか、以下の5つに分けて解説します。
・アクティブリスニングの概要
・アクティブリスニングがもたらす効果
・具体的な手法
・導入に求められる心構えとトレーニング方法
・導入時の留意すべきポイント
アクティブリスニングとは何か
アクティブリスニングとは「積極的傾聴」を指します。
ビジネスの現場では、社内のコミュニケーションを通じて、話し手の「成長」「課題解決力の向上」を促すことができる環境を、構築するために用いられます。
社内の管理職やリーダーといった、部下を統括している立場に必要とされる能力であり、働きやすく成果の上がりやすい環境構築には欠かせないと考えられています。
次項よりアクティブリスニングの「概要」「注目されている理由」の2つをピックアップして解説します。
アクティブリスニングの概要
アクティブリスニングを実施する際、聞き手は、単に聞き続けるだけではなく、相手の「感情」や「伝えたいこと」といった内容を整合性が保たれたまま把握する必要があります。
上司が部下の困りごとや疑問を、気軽に相談できる環境を構築することにより、コミュニケーションや人間関係の質を向上させることが期待できます。
アクティブリスニングを身につけることは、部下の成長以外にも、社内の活発化や生産性の向上を図るためにも欠かせない能力と言えます。
ビジネスで注目されている理由
ビジネス業界の競争が激化する現代において、どれだけ優秀な人材を育成していけるかが鍵になります。
アクティブリスニングには大きく分けて「聞く力」「質問する力」「振り返る力」「信頼関係を築く力」の4つが求められます。
その中でも「聞く力」「質問する力」これら2つの能力は、アクティブリスニングの実施により、スキルの向上を見込めるといった関係性があり、ビジネス業界でも強く関心を持たれるようになりました。
アクティブリスニングの効果
アクティブコミュニケーションにより、人間関係の良好化から生産性の向上まで様々な効果が見込まれます。
その中でも、生産性の向上に繋がる大きな効果をもたらすものを4つ紹介します。
コミュニケーションの活発化
聞き手による積極的な傾聴により、話し手は「話を親身になって聞いてくれている」と感じられるため、上司と部下の間の信頼関係の強化につながります。
気軽に相談や質問できる関係を築くことで、話し手は思ったままのことを正直に伝えられるようになり、聞き手も伝えられた内容から適切なサポートを行えるといった効果があります。
人間関係の円滑化
実際には、「本音で話せない」という上司と部下の関係がほとんどを占めるでしょう。
そこで上司と部下のコミュニケーションで、上司側から率先して耳を傾けることで、仕事や職場環境に関する本音を聞き出せます。
本音で語れる環境を構築すること、また上司が本音を受け止めてくれるという安心感が、上司の気づかなかった職場の問題や不満を解決に導けることも大きな効果と言えます。
ハラスメントの防止
上司と部下の間で良好な人間関係を築けている職場では、ハラスメントが起こる可能性が減少すると言われています。
ハラスメントによる職場内のトラブルが増えている現代で、ハラスメントの抑止は極めて重要な効果の1つです。
「上司が悪意なく発した言葉によって、部下が深く傷ついていた」などは結果的なパワハラと認定される可能性があります。これは上司と部下の相互理解の不足に原因の一部があると言えるでしょう。
課題解決力の向上
悩みや疑問を話すことは問題内容の再確認に繋がるので、話し手に対して上司が積極的に耳を傾けることにより、話し手自身が問題のポイントを整理できることがあります。内容によっては、自力で解決できることかもしれません。
自身で課題解決したという成功体験が得られ、きっかけを与えてくれた上司への敬意や感謝も生まれやすくなります。
アクティブリスニングの具体的な手法
アクティブリスニングの具体的な手法は、「バーバルコミュニケーション」「ノンバーバルコミュニケーション」の2種類があります。
2つの方法には、それぞれ重要なポイントが複数あるので、ピックアップして解説します。
バーバルコミュニケーション
バーバルコミュニケーションは、文字や言葉を用いてコミュニケーションをします。
定番の方法を3つに分けて解説します。
< 相槌を打つ >
話し手の内容に対して、適度に反応を返すこと。
「あなたの話を聞いているよ、理解しているよ」と反応を示すことで、「聞き手が興味を持っている」と感じてもらえるような反応をする工夫が大切です。
過度に行うと、話し手の違和感、不快感につながるので注意が必要です。
< 共感・繰り返し >
話し手の内容から今の感情を想像し、聞き手が同じ感情を示す言葉を発することです。
聞き手は、話し手の話を自分自身のこととして理解する必要があります。内容をよく理解したうえで、頷いたり共感の言葉といった適切な反応を示すことが大切です。
「それはうれしい」「私も悲しい」「すごい!」など、エモーショナルな反応を織り交ぜるとよいでしょう。
< 質問を投げかける >
相手の話を受け止めたうえで、さらに話の内容を深めるために質問を投げかけます。
質問は「はい」または「いいえ」で答えられない内容がよいとされます。
以下に、質問の例を2つ挙げます
・その時あなただったらどう答えますか?
・今からやるべきことは何だと思いますか?
このような質問をオープン・クエスチョンと言います。オープン・クエスチョンを受け取った話し手は、何を伝えたいのかや伝えたい意図を再確認できます。
ノンバーバルコミュニケーション
一方、ノンバーバルコミュニケーションは、文字や言葉を一切使わない非言語の手法です。
使い方によって効果を発揮する代表的な方法を3つ紹介します。
< 声量やトーン >
聞き手が声量やトーンに気を配ることで、話し手は落ち着いて伝えることができます。
ただ、聞き手によって聞き取りやすい声量やトーンはそれぞれなので、聞き手の反応をよく見て、合わせるといった工夫が必要です。
< 表情 >
話し手が伝えている内容は、喜怒哀楽のなかで、どの感情が含まれているのか、よく考えて適切な表情をすることが大事です。
苦労していたり困っている話をしていたら、沈んだ表情を浮かべるなど、共感して傾聴することを意識しましょう。大げさな演技は禁物で、あくまでも自然に合わせてください。
< 目線・態度 >
話し手が落ち着いて話すために必要な要素として、聞き手の聞く態度と目線も挙げられます。
聞き手が、腕や脚を組むといった高圧的な態度を示してしまうと、話し手は萎縮してしまって、伝えたいことが上手く話せないといったリラックスできない状態になります。
不快感を与えないために、話し手に対して体を正面に向けて目線を合わせるといった、真剣な姿勢を見せることが大切です。
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求められる心構えとトレーニング方法
アクティブリスニングを進める際、留意すべきポイントが3つあります。
留意すべきポイントを押さえたうえで、傾聴能力の向上を図るトレーニングを行うことで、効率的に取り入れることができます。
これから、アクティブリスニングを導入するタイミングを想定して、「求められる心構え」「具体的なトレーニング方法」の2つを解説します。
聞き手に必要な心構え
アクティブリスニングは、現在の職場環境を改善するために用いるものです。
話し手に対して、マイナスとして捉えられる発言や聞き手の自我を強く出すことは、職場環境を悪化させてしまいます。
アクティブリスニングを実施する際に求められる、心構えや基本姿勢をきちんと理解して実施しましょう。
聞き手として必要な心構えを3つ紹介します。
< 共感的理解 >
共感的理解とは、自身と相手の価値観が違えど、相手の目線に立って理解しようとする態度のことを指します。
聞き手は相手に寄り添って話を聴くことが大事ですが、自身に対して共感の姿勢を見せる相手に、意見や希望を発しやすくなるという人間の特徴から、共感的理解を示すことが大切と言えます。
聞き手によっては、話し手の意見に違和感をもつ、受け入れられないと思う内容もあるでしょう。しかし、それをその場で否定したり、説得を試みたりすると、たちまち話し手は心を閉ざしてしまいます。
< 純粋性 >
聞き手の人間性に裏と表があった場合、話し手の心に疑惑・疑念が生じるため、適切なコミュニケーションを交わすことが難しくなります。
両者の信頼関係を築くためには、自らの「経験・価値観・感覚」などを基に、アイデンティティを確立しつつ、心理的に安定した状態を維持する必要があります。
誰もが背景にかかえている組織や上司としての利害を超越し、ひとりの人間として、友人として向き合えるかがポイントです。
< 無条件の肯定的配慮 >
聞き手は話し手に対して、否定的な意見や提案を出したり、発言を遮るといった不適切なアプローチをしてしまうと、話し手は不快感や威圧感を覚えます。
アクティブリスニングでは、聞き手が話し手に対して、始めから解決策を提示するのではなく、傾聴に重きを置いた会話を続け、話し手に気付きを与えることが大切です。
課題解決に繋がる気付きを与えるために、話し手の年齢や性別、話の内容といった要素を肯定的に受け取りましょう。
有効的なトレーニング方法
先に述べた通り、アクティブリスニングは元々、精神カウンセリングで扱われていたコミュニケーション技法なので、ビジネスシーンにいきなり取り入れることはそう簡単ではありません。
自社の環境改善を目的としてアクティブリスニングを取り入れる際に、有効的なトレーニング方法を2つ解説します。
< 自我を抑えて、積極的な傾聴を心がける >
相手を尊重して傾聴する能力が求められるため、聞き手からアイデアや見解を述べることは不適切です。
始めは、聞き手となる担当者の間で目標を定め、ロールプレイなどを通じて「傾聴する能力」を身に着けるとよいでしょう。
< 研修を通じて経験を積む >
昨今では、多くの企業がアクティブリスニングに関する研修の場を設けています。
研修に参加することにより、参加者や講師からフィードバックをしてもらえるので、自社に持ち帰り活用することができます。
より良い環境を構築するために
アクティブリスニングは、上司と部下の人間関係を良好にしつつ、コミュニケーションの活発化を図れます。
ただ、聞き手には自我を出さずに傾聴するスキルや高い集中力が必要とされるため、場合によっては、大きなストレスとなる可能性があります。
聞き手となる担当者に手厚い教育を行い、どのような理由で導入するのかといった目的を理解したうえでアクティブリスニングも導入を始めましょう。
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