最終更新: 2026年5月

チーム全体の平均アポ獲得率が13.5%のなかで、個人平均35.5%を達成する。受注率も全体平均18.6%に対して個人平均32.4%を維持する。この数字は、特別な才能や運によって生まれたものではありません。架電設計と案件管理の両面で具体的な手法を持ち、それを継続的に実践した結果です。

実際の現場で全体平均の2倍以上のアポ獲得率を実現した担当者の取り組みを、「アポ獲得のための架電設計」と「受注に向けた案件管理」の2つの軸で解説します。

なぜ同じリストで大きな差が生まれるのか

難易度の高いリストで結果を出すための視点転換

この担当者が直面していた状況は、決して有利なものではありませんでした。担当していたセグメントでは未達が続いており、ジョインした直後の2ヶ月間も目標に届かない状態が続いていました。

直面していた問題は以下の2点でした。

問題1:リスト難易度が高く、再アプローチ時に断られ続ける
1週間前に架電して断られたリストに対して再度アプローチするが、同様に断られる状況が続いていました。「一度断られたリスト」に対してどう価値ある再接触を設計するかが、成果を出すための最初の課題でした。

問題2:商談後に「検討」で止まってしまう
アポを獲得して商談に進んでも、アナログ主体の業界でのデジタル化移行の難しさから、商談後に「検討します」という返答が多く、受注に繋がらない状況が続いていました。事前に確度を高めたアポを獲得できていないことが根本的な課題でした。

この課題に対して取った解決策が、「会話形式ヒアリングによるアポ獲得設計」と「カタヨミを起点にした案件管理」です。

会話形式ヒアリングで確度の高いアポを獲得する

フロントトークの設計が成否を決める

アポ獲得において最も重要な要素は、フロントトーク(架電の入口部分)の設計です。「どのような目的でお電話しているか」を顧客に明確に認識してもらった上で、ヒアリングを会話形式で行うことが、確度の高いアポに繋がります。

ポイントとなるのは以下の2点です。

1. 間や会話のスピードを意識し、パート毎に分けて訴求する
電話でのコミュニケーションは、対面と異なり非言語情報(表情・身振り)がありません。声のトーン・スピード・「間」の取り方が、相手の聞く態度を大きく左右します。話すパートと聞くパートを意識的に分けることで、顧客が「聞かされている」ではなく「対話している」という感覚を持ちます。

2. 電話口でこちらを向いて対話しているイメージを作る
顧客が電話を切りたい状態(作業の手を止められた・一方的に話を聞かされている)から、「こちらに向いて話を聞く状態」に移行させることが、ヒアリング成立の条件です。この状態を作れないままでは、いくら訴求しても「営業本位の質問」になってしまい、明確な回答が得られません。

現状把握→課題収集→示唆質問→アポ獲得の4ステップ

会話形式のヒアリングを通じてアポを獲得するためのフローは、以下の4ステップで設計されています。

STEP1:現状把握(この段階ですべてを把握しない)
最初の質問では、刺せる情報を収集することに集中します。「御社では現在◯◯はどのように行っていますか?」という開いた質問で、顧客の現状の断片を得ます。この段階では詳細を深掘りせず、課題収集のためのきっかけを探します。

STEP2:課題収集(顧客が自分で問題を言語化できるよう促す)
現状に対する課題や変更したい点の言語化に焦点を当てます。「それについて、何か気になっていることはありますか?」という問いかけで、顧客自身が問題を特定する間を大切にします。顧客が自分の言葉で課題を語ることで、「自社の問題として認識している」状態が生まれます。

STEP3:示唆質問(適度な煽り)
このステップが、アポ獲得の成否を分ける最重要パートです。「課題解決をしなければならない」という自覚を促すような質問を投げかけます。嫌みにならない程度にさらっと煽ることで、顧客の本音を引き出します。

例:「実はシステム検討したいと思っていたんですよね…」「確かに対策打たないとだよね…」という顧客の本音が出るような問いかけを設計します。

STEP4:アポ獲得
「問題解決にはシステム検討は必要だ」と顧客自身が感じた状態を作った上で、「具体的に◯◯の部分でお役立ちできると思っております。つきましては、オンラインでご案内の時間を」と日切りでアポを獲得します。

このフローの核心は「示唆質問」にあります。顧客が自ら「検討が必要だ」という認識に至ることで、アポが「断らなければならないもの」から「取りに行くもの」に変わります。

案件管理の設計──「カタヨミ」から逆算して行動量を決める

月内達成を確実にするカタヨミ管理

アポ獲得と並んで重要なのが、獲得したアポを受注に繋げる案件管理の精度です。「アポ数は多いのに売上が上がらない」という状態は、案件管理の設計が機能していないことが原因である場合が多いです。

月次目標を確実に達成するための案件管理は、以下の3階層で設計します。

1. 月内カタヨミ:確実に決まる案件と着地見込みを書き出す
月初または週次で「今月中に確実に受注できる案件」を一覧化します。この段階では、機能合意まで進んでいる案件を中心に整理し、着地見込み額を把握します。

2. 差分に対する中期見込み(落ち率30%で設定)
目標と確実に決まる案件の差分に対して、「機能合意まで進んでいるが受注確定ではない案件」を30%の落ち率で計算して積み上げます。この計算によって、「あとどれだけの案件をプールすれば目標に届くか」が明確になります。

3. 中長期・過去失注案件の前倒し提案(落ち率10%で設定)
さらに差分が残る場合は、中長期案件と過去の失注案件を10%の落ち率で計算し、前倒しの提案を行います。これにより、短期だけでなく中長期のパイプラインを常に維持することが目標達成の下支えになります。

この3階層の積み上げで目標に届く行動量を算出し、1週間前倒しで達成できるよう毎日の行動計画を設定します。

商談翌日の御礼架電が確度を決める

案件管理において特に重要なルーティンが、商談翌日の御礼架電です。目的は単なる礼儀ではなく、以下の3点の確認です。

1. 確度の見極め(本音を聞く)
商談の場では「検討します」という表面的な返答が出やすいですが、翌日の電話では商談直後の印象が残っており、より率直な反応が得られます。「昨日の商談を振り返ってみていかがでしたか?」という問いかけで、実際の温度感を把握します。

2. 商談後に出てきた懸念点の解消
商談の場では言い出せなかった懸念点が、翌日の電話で初めて出てくることがあります。この懸念点を放置すると、「結論を先送り→失注」というパターンに陥ります。翌日に丁寧にヒアリングし、懸念を解消することで、受注への道筋が開けます。

3. NAの具体的な設定で成約まで顧客と共通認識で伴走する
Next Action(次のアクション)を顧客と明確に合意することが、「検討します」を「具体的な次のステップ」に変えます。「では◯日に決裁者への説明を行い、その翌日にご連絡いただけますか?」という具体的な設定が、商談の進行を顧客側にも認識させます。

パイプラインと売上の相関性を意識した行動設計

「パイプライン相関性なし」という気づきが行動を変えた

今回の事例で興味深いのは、「パイプライン(商談数・見込み数)の多さと売上が必ずしも相関しない」という発見が、成果向上の転機になったという点です。

数字の分析から、各分母分子数値(架電数・接続数・アポ獲得数・商談数)を丁寧に把握しながら管理することで、「多くアポを獲得することより、確度の高いアポを獲得することの方が売上に直結する」という方向性が明確になりました。

この気づきが「会話形式ヒアリングによる確度の高いアポ獲得」と「案件管理の精度向上」という2つの行動にフォーカスさせた背景です。「とにかく架電数を増やす」から「確度を高める設計に時間を使う」への転換が、全体平均の2倍以上のアポ獲得率を生んでいます。

1週間前倒し達成の設計がプレッシャーを軽減する

月次目標を「最終営業日に帳尻を合わせる」という設計ではなく、「1週間前倒しで達成する」という設計に変えることで、月末のプレッシャーが大幅に軽減されます。

1週間前倒しで達成できる状態であれば、最終週を追加の上積みに使えます。逆に月末ギリギリまで目標を追いかける状態では、焦りからくる質の低い架電やクロージングが増え、受注率が下がるリスクがあります。カタヨミ管理→落ち率設定→前倒し行動の設計を月初から組み込むことが、安定した達成の基盤です。

まとめ──アポ率35%は「設計と習慣」の掛け合わせで再現できる

全体平均の約2.6倍のアポ獲得率を達成した背景には、架電設計と案件管理の両面にわたる具体的な手法があります。

会話形式ヒアリングによるアポ獲得設計

  • フロントトークで「対話している状態」を作ってからヒアリングを始める
  • 現状把握→課題収集→示唆質問→アポ獲得の4ステップを設計する
  • 示唆質問で顧客の自覚を促すことが、確度の高いアポ獲得の鍵

カタヨミ管理と落ち率設定による案件管理

  • 月内確実に決まる案件・30%落ち率の中期案件・10%落ち率の長期案件の3階層で積み上げる
  • 行動量を逆算し、1週間前倒しで達成できるよう毎日の計画を設定する

商談翌日の御礼架電

  • 確度の見極め(本音のヒアリング)
  • 商談後の懸念点解消
  • NAの具体的設定で顧客と伴走する

これらを組み合わせることで、難易度の高いリストでも安定した成果を継続的に出せる架電・案件管理の仕組みが構築できます。


Produced by 株式会社プロセルトラクション
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この記事の執筆者

長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役

リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。100を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。