最終更新: 2026年6月

新規事業における自走力とは、変化する方針やフローの目的を自ら理解し、指示を待たずに適切な行動を選択できる能力です。

新規事業の営業・オペレーション現場では、「マニュアルが追いつかない」という状態が常態化しています。プロダクトの仕様・業務フロー・方針が週単位で変わる環境では、「指示が来るまで待つ」という姿勢をとった瞬間に、業務が停滞しクライアントに影響が出てしまいます。100を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ株式会社プロセルトラクションにてMVP賞を受賞した担当者の実践事例から、変化の激しい新規事業環境で自走し続けるための「4つの思考ステップ」と、期待を超えるパフォーマンスを生み出す考え方を解説します。

この記事の目次

なぜ新規事業の現場では「自走」が必須なのか──2つの構造的理由

指示待ちが生む業務停滞の構造

新規事業のオペレーション現場では、週次で方針や業務フローの変更が発生することが珍しくありません。プロダクト仕様の変更、クライアント対応フローの修正、チームの体制変更──これらが重なる環境において、オペレーションマニュアルの更新が現場の変化スピードに追いつかない状態が常に発生します。

この状況で「具体的な指示が来るまで待つ」という姿勢を取ると、以下のような問題が発生します。

  • 業務開始タイミングが遅れ、クライアントへの影響が出る
  • 状況を確認するための確認コストが増え、管理側・現場側の双方に負荷がかかる
  • 変更の都度、全員が同じ情報待ちになり、チーム全体の動きが止まる

マニュアル更新を待つよりも、「方針変更の背景と目的を理解した上で、自分でどう動くべきかを判断する」という自走の思考を身につけることが、新規事業の現場では最も重要なスキルになります。

「自走」とは何をすることか

自走とは、「上司の指示なしに勝手に動く」ことではありません。変化に対して以下の判断ができる状態を指します。

  • なぜこの方針変更が行われたのか、目的と背景を自分で把握できている
  • その変更によって起こり得るリスクや影響を事前に想定できている
  • 問題があれば自分から提起し、改善案も合わせて出せる

自走できる担当者は、変化が起きるたびに確認コストをゼロに近づけられます。チームリーダーや管理側からすると、「確認しなくても適切に動いてくれる」という信頼が生まれ、より大きな裁量が与えられる好循環につながります。

自走するための4つの思考ステップ

ステップ1:変化の「目的と背景」を理解してから動く

方針変更や業務フロー変更が起きた際に、最初に問うべきことは「なぜこの変更が行われたのか」という目的と背景の把握です。

変更の表面的な内容(何が変わったか)だけを把握して動くと、次に別の変更が起きたときに同じ確認が必要になります。目的と背景を理解していれば、次の変更が起きた際にも「前回の変更の目的に照らすとこう動くべき」という判断が自分でできます。

目的・背景を把握するための確認ポイント:

  • この変更はどんな問題を解決するために行われたのか
  • この変更によって、誰の何が改善されることを意図しているか
  • 変更後の状態として、どんなアウトプットが期待されているか

ステップ2:メリット・デメリットとリスクを先に想定する

変化に対して動き方を決めたら、次にその動きによって「何が起こりうるか」を事前に想定します。

新規事業の現場では、誰もが初めて経験する状況が頻繁に発生します。過去の事例や成功パターンがないため、「やってみたら問題が発生した」という状態になりがちです。これを防ぐには、行動する前に「このやり方を取った場合のメリット・デメリット」と「発生しうるリスク」を想定しておく習慣が必要です。

事前想定のフレームワーク:

  • メリット:この動き方によって何が改善されるか
  • デメリット:この動き方にはどんな副作用があるか
  • リスク:最悪のケースとして何が起こりうるか、それをどう防ぐか

リスクまで想定して動いている担当者は、問題が起きた際のリカバリーも早くなります。

ステップ3:違和感は改善案とセットで提起する

自走の思考を持ちながら業務を進めていると、「このやり方はおかしいのではないか」という違和感を感じる場面が出てきます。この違和感を感じた際に、「自分には関係ない」「指摘して波風を立てたくない」という判断をすることが、業務品質の低下を放置することになります。

違和感を感じた時点で、改善案のアイデアと合わせてクライアントや上司に提起することが、業務の質を上げるための重要な行動です。

提起の際のポイント:

  • 違和感だけを伝えるのではなく、「なぜそれがおかしいと思うか」の根拠も合わせて伝える
  • 「こうすれば改善できるのではないか」という提案も必ずセットにする
  • 「指摘したのに動かない」という状態になった場合は、上位のステークホルダーへのエスカレーションも検討する

ステップ4:経験を積み上げて「より良い方法」を模索し続ける

同じ業務を繰り返しながら、「この方法よりも良いやり方があるのではないか」という視点を持ち続けることが、自走の最終ステップです。

最初の段階では、与えられた方法を正確に実行することが求められます。しかし経験が積み上がるにつれて、「この順番を変えると効率が上がるのではないか」「この確認ステップは省略できるのではないか」という改善の視点が生まれてきます。

「より良い方法」の模索を習慣化するポイント:

  • 業務が終わった後に「今日の進め方でうまくいかなかった部分はどこか」を振り返る
  • チームの他のメンバーが取っている方法との差分を観察する
  • クライアント側から「こうしてほしい」という要望があった際に、なぜそう感じているかを深掘りする

この経験の積み上げによって、単なる「業務の実行者」から「業務設計に貢献できる担当者」へと成長できます。

「期待値」を常に意識する──成果の質を上げる2つのスタンス

「期待されていること」から逆算して動く

4つの思考ステップに加えて、成果の質を根本的に上げるためのスタンスがあります。それは「常に相手が何を求めているのか、期待しているのかを考え、その期待を超えるために何をすべきかまで考える」という視点です。

期待値を把握するための確認事項:

  • クライアント・上司が「この業務を通じて達成したいこと」は何か
  • 「よくやった」と評価されるのはどんな状態が実現した時か
  • 現時点でのパフォーマンスと、期待値のギャップはどこにあるか

期待を超えた先に生まれる信頼

期待を超えるパフォーマンスを継続的に提供できると、クライアントとの信頼関係が強化されます。「この担当者に任せておけば、言わなくても動いてくれる」という評価が定着すると、より重要な業務を任されたり、意思決定の場に参加できる機会が増えたりします。

新規事業の現場で自走しながら期待を超え続けることは、担当者個人の評価を上げるだけでなく、クライアントとの関係の質を根本的に変えます。この積み上げが、長期的なプロジェクトの継続・拡大につながります。

自走とオペレーション品質向上の実践事例──3つの成果

某SaaS企業の新規事業オペレーション現場(オンボーディング業務担当)での実践として、以下の成果が報告されています(プロセルトラクション実績, 2024年度)。

成果1:稼働開始日の見立てを一切ずらさなかった

プロダクト仕様の変更が週次で起きている中、自走の意識を常に持ち続けることで、オンボーディング業務に携わるメンバーの中で最も安定した稼働スケジュール管理を実現しました。「変更があったから開始が遅れる」という状態を回避し続けたことが、クライアントからの評価につながりました。

成果2:改善提起でオペレーション品質を向上

オンボーディングオペレーションが確立していない中で、違和感を感じた部分に対して改善案とセットで発言し、業務の質向上に貢献しました。クライアントへの説明スライドについても、自身のアイデアを採用してもらい、説明品質の向上に貢献しました。

成果3:営業50%ミッションと兼務しながら両方で達成

営業ミッション50%を持ちながら、オンボーディング業務でクライアントの期待以上のパフォーマンスを発揮し、営業側でも手持ち案件をコンスタントに受注することで、全体の達成率向上に貢献しました。

よくある質問

自走力はどうすれば身につきますか?

まず方針変更があった際に「なぜこの変更が行われたのか」を自分で確認する習慣をつけることから始めます。目的と背景を理解してから動く癖がつくと、指示がなくても適切な行動を選択できるようになります。4つの思考ステップを日常業務の中で意識的に繰り返すことで、2〜3ヶ月で変化が実感できます。

自走と勝手な判断の境界線はどこですか?

自走は「目的と背景を理解した上で行動する」ことであり、「自分の判断だけで進める」こととは異なります。判断に迷う場合や影響範囲が大きい場合は、事前に上司やクライアントに確認を入れます。ポイントは「確認すべきこと」と「自分で判断して進めて良いこと」の線引きを、日常のコミュニケーションの中で明確にしていくことです。

新規事業の現場で最初に意識すべきことは何ですか?

「マニュアルや指示が完璧に整っている状態は来ない」という前提を持つことです。その上で、変化に対して「なぜ」を問い、自分なりの判断基準を持つ習慣を早期につけます。最初は先輩や上司の判断基準を観察し、自分の中に取り込んでいくことが効果的です。

チームメンバーに自走力を身につけてもらうにはどうすればよいですか?

まず「なぜこの変更を行うのか」という目的・背景を共有する文化をチーム内に作ることが出発点です。指示を出す際に結論だけでなく理由も伝えることで、メンバーが自分で判断する材料を持てるようになります。次に、メンバーが自分で考えた判断を積極的にフィードバックし、正しい判断を強化していきます。

自走力とインサイドセールスの成果にはどんな関係がありますか?

インサイドセールスの現場では、営業プロセスの標準化と個別対応の両立が求められます。スクリプトやフローが変更された際に「なぜ変わったのか」を理解して動ける担当者は、変更後も安定してKPIを達成しやすくなります。自走力はIS組織のPDCA速度を加速させる基盤スキルです。

まとめ──新規事業の現場で自走し期待を超え続けるための思考設計

変化が激しい新規事業の現場で成果を出し続けるための思考ステップをまとめます。

自走するための4ステップ:

  1. 方針や業務フローの変化に対して、目的と背景を理解してから動く
  2. 動き方を決めたら、メリット・デメリット・リスクを事前に想定する
  3. 違和感を感じたら改善案とセットでクライアント・上司に提起する
  4. 経験を積み上げながら「より良い方法」を常に模索し続ける

期待を超えるためのスタンス:

  • 「相手が何を求めているか・期待しているか」を常に起点にして動く
  • 期待値から逆算して「言わなくても動く」という評価を積み上げる
  • 期待を超えた実績の積み上げが、クライアントとの信頼関係を深化させる

マニュアルが追いつかない・指示が来ない、という状況を「動けない理由」にするのではなく、「自走の必要性」として捉え直す思考転換が、新規事業の現場での成果を左右します。

新規事業の営業体制について無料で相談する

この記事の執筆者

長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役

リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。100を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。