ここ数年、営業効率や業績が大きく向上した企業の背後にインサイドセールスの活躍があるのは間違いないでしょう。コロナ禍で訪問営業が難しくなったことも一層、重要性に拍車をかけました。
かつてはフィールドセールス一辺倒だった組織が、インサイドセールスを導入して変革した事例も生まれています。
この記事では、インサイドセールスの導入方法、具体的なメリットや注意点など詳しく解説します。
この記事の目次
インサイドセールスとは
インサイドセールスは相手を訪問しない非対面営業のことを指し、内勤営業などと訳されます。
アメリカが発祥とされ、古くからインサイドセールス専門の部門が設置されてきました。
一説には、アメリカは国土が広大なため、移動を伴う訪問型営業の限界が早い時期から指摘され、インサイドセールスが発達してきたと言われています。しかし、この解釈はインサイドセールスの一部の特徴しか表していません。
本質は、大量にある見込み客のデータベースの中から、すぐに受注につなげられそうなホットな案件をフィールドセールスに渡すことです。
現時点では、成約の可能性が低い見込み客に対しても、定期的に情報を届け、関係性をつなぎ留めておくのは重要。彼らは「購入したくなる状況まで育つ」可能性があるからです。
日本で長く採用されてきたスタイルとは真逆
顧客を育てる作業には、フィールドセールスとの分業が必須ですが、日本で長年とられてきた営業スタイルは真逆でした。
見込み客の名刺集めも、電話で訪問のアポイントを設定するのも、実際にプレゼンするのも、さらに成約した企業のアフターフォローや請求書発行まで、一人でやりきることが当然とされてきたからです。
インサイドセールス導入により、営業の業務量が均一化され、新規顧客の開拓時にも確度が高い案件が分かった状態で営業できるのが大きなメリットです。
フィールドセールスとは
フィールドセールスは、直接顧客のもとを訪問する営業です。
移動時間を伴うため、インサイドセールスに比べ効率が落ちますが、確度の高い見込み客から確実に受注をとる手段と考えればよいでしょう。LTVが高い、高額商材などではフィールドセールスが有効です。
インサイドセールスの対義語のように使われますが、手段ではなく役割が違う点に注意。
オンラインセールス、テレアポとの違い
Web会議システムを使って、画面越しに営業することをオンラインセールスと呼びます。
インサイドセールスは、オンラインも含め、電話やメール、SNSなどあらゆる非対面でのコミュニケーションすべてを指します。また訪問アポイント獲得を目的とするテレアポも、インサイドセールスの一部と捉えられます。
このようにインサイドセールスは、訪問営業までの部分を分業し、受注の見込みの高さを見極めてフィールドセールスにパスするので、結果として受注率、営業効率を向上できます。
インサイドセールスへの注目が高まる理由
IT分野など一部の業界を除いて日本では注目されなかったインサイドセールスですが、最近は急速に増えてきました。
効率アップするから、働き方改革への対応、コロナ禍でやむを得ず…などさまざまな要因がインサイドセールスの導入に追い風になっています。
直接訪問の営業機会が激減したため
2020年のコロナ禍以降、企業間のコミュニケーションでもオンラインセールスが急増しました。
リモートワークが増え、企業間の行き来も激減したのです。以前は「客先を訪問しないなどありえない」と考えていた比較的年齢の高い層も変化に対応せざるを得ませんでした。
やむを得ず、オンラインを導入したところ、十分コミュニケーションとして成立したことが広く知られたこと。環境の変化はインサイドセールスの認知向上にもつながったのです。
働き方改革で求められる業務効率化
長時間労働が当たり前では今の時代に合わず、優秀な人材ほど流出してしまいます。
従来型の営業は、担当者の業務範囲が膨大になってしまっていました。労働人口の減少が進む中で、そもそも営業職はもっとも不足している職種と言われます。
限られた人数で売上を伸ばすには効率を高めるしかありません。その効率化策として分業を進め、インサイドセールスにたどり着く企業が増えていると見られます。
営業コストをおさえる効果
企業が新たなサービスを導入する際、Web検索やWeb広告がきっかけとなることが増えたと言われます。
営業をかける側も、メールやSNSでコミュニケーションを取ったほうが効率的でしょう。膨大な件数の電話をかけて、アポが取れたところを順番に訪問する場合に比べ、大幅にコスト低減できます。
SaaSのように月額定額制のサブスクリプションビジネスは、インサイドセールスとの親和性が高くなっています。
プロセルトラクションがインサイドセールスの実践をサポート
この記事でインサイドセールスの理解はできますが、それを自社に当てはめることはかんたんではありません。そこでプロセルトラクションではあなたの会社にマッチしたインサイドセールスのプランニングから実践までサポートしています。
インサイドセールスのメリット
インサイドセールスは、「意欲が高くすぐに受注できそうな顧客」から「興味はあるもののまだ購入までは時間のかかる顧客」まで、それぞれの状況にあった情報を提供し「ニーズ」を探る専門部隊です。
新たに企業に設置、導入すればさまざまなメリットが得られます。
成約率の向上
見込みの高い顧客から優先的にアプローチするため商談アポも取りやすくなります。それに加え、さまざまなオンラインでの策を講じるので1日に接触できる顧客の数も大幅に増えます。
営業成績は「営業の質×アプローチ件数」によって決まるため、どちらも向上すれば、かけ算的に成約率が向上するでしょう。
セールスもれと流出を防ぐ
集められた見込み客の情報(リード)は、すべてインサイドセールスに集まりアプローチされます。
フィールドセールスは、売上のすぐ見込める顧客ばかりに集中するため、彼らの手元で将来的な顧客の名刺が眠る事態も防げます。さらにインサイドセールスが定期的にコンタクトを続けるので知らないうちに競合他社と契約する流出もおさえることができます。
プロセスが「見える化」され、売上予測の精度が向上
インサイドセールスはマーケティング、フィールドセールスと常にやり取りを行うため記録が残ります。
また多くの活動は数値としても残るので分析も容易です。そのため、営業活動量から売上見込みを立てる際も大きなブレがなく高精度の予測ができるでしょう。
セールスのプロセスが「見える化」されると、改善の余地が明白になり、対策が立てやすくなります。
顧客のロイヤリティが高まる
インサイドセールスは長期的に顧客をナーチャリング(育成)します。
その間、こちらの製品を売り込むよりも、顧客に課題解決の方法を情報提供することに主眼を置きます。
顧客の中で製品購入の必要性が増したら営業をかけますが、それまで寄り添ってくれていた企業に対しては好感をもつ人も多いでしょう。顧客から自然と「買いたい」というアクションが起こるのです。
こうした顧客の態度の変化は、丁寧なインサイドセールスの賜物と言えるでしょう。
インサイドセールスのデメリット
一方、インサイドセールスのデメリットとしては、導入して軌道に乗るまでに時間とパワーを要する点があります。一時的に営業効率がダウンする懸念はあるので備えが必要です。
社内の体制と理解が必須
インサイドセールスの導入のメリットを社内で説明し、協力を取り付ける必要があります。
インサイドセールスを一から導入すると、従来の営業の仕組みを大きく変えることになります。
マーケティングとセールスは分業ではあるものの、これまで以上に情報共有をする必要があります。同じベクトルを向く意識がないと、うまくいかなかったときに責任を押し付け合うことになってしまいます。
初期投資と人材採用にかかるコスト
インサイドセールス、たとえばリードナーチャリングで必要とされる能力やノウハウは別物ですので、業務経験のある人材を採用するなどが必要です。
もちろんフィールドセールスの重要度も下がりません。これまで以上に成約率にこだわった訪問営業が求められるので、プロとしての役割は増すでしょう。
インサイドセールスを外注化するのも一つの手ですが、相応のコストがかかります。
自社で完結する場合も、MA(マーケティングオートメーション)による顧客管理や営業支援システムの導入には費用が発生します。
インサイドセールスを導入するまでの流れ
インサイドセールスに初めて取り組む企業は、これから大きな売上アップが期待できます。
ただし成果が表れるまでには一定の時間が必要となります。行き当たりばったりでは、効果も半減してしまうため、「長期的に」「安定的に」をキーワードに準備を進めましょう。
業務範囲を決める
インサイドセールスは、マーケティングとフィールドセールスの間に位置することが一般的です。
マーケティングから引き継いだ見込み客を、受注が狙える状態にしてフィールドセールスに渡すまでがインサイドセールスの業務。引継ぎ方法やタイミング、どのレベルに達したら引き継ぐかなどをすり合わせておく必要があります。
体制を作る
最初からインサイドセールスの独立部隊とするか、あるいはフィールドセールス、マーケティングどちらかの管轄にするかは企業によって異なります。いずれの場合でもインサイドセールスの適性をもった既存の人材を移動させながら、専門職を採用する手も打ちたいところです。
責任者にはツールを使って営業の状況を正しく分析し、営業プロセスのPDCAを回せる能力をもった人がふさわしいでしょう。同じく下につけるメンバーとしてはPCスキルが高く、コミュニケーションが得意な人。また顧客の課題をヒアリングできる方が適任です。
コールセンター業務の経験者は重宝される傾向にあります。
KPIの設定
会社全体の売上目標から逆算し、必要な受注数、そのための商談数、必要な架電数を算出します。
いきなり高い数値をかかげるのではなく、背伸びをする程度の目標に設定するのがコツです。また最初は受注数よりも、架電数のようにシンプルで管理しやすい指標のほうが、仕組みに慣れていくステップとしても有効と言えるでしょう。
次のステップに進んだら、「行動量」だけではなく、商談単価のように1件あたりのコストも算出して、KPIを測るのが大事です。
シナリオ(ストーリー)の作成
顧客の反応によって次にどのようなアプローチを行うかを設計します。
例えば、ベネフィットを強調したメールで開封されない場合、次は角度を変えて課題解決の事例で「ユーザーの声を届けよう」など作戦立てします。その都度決めるのではなくあらかじめシナリオを設計しておき、臨機応変に修正するのが重要。
顧客の興味にあったタイミングで情報を届けられるようにします。
シナリオの流れができていれば、個別の担当者の直観に頼らず、標準化、統一化ができます。その蓄積によって再現性の高い営業ができるようになるのです。
ツールの導入と運用開始
インサイドセールスは、さまざまなシステムによって効果を最大化できます。代表的なツールはマーケティングオートメーション(MA)と、セールスフォースオートメーション(SFA)です。
大掛かりなものを導入するとスペックオーバーで使いこなせなくなる可能性があるので、まずは無料版で社内に浸透させるのがよいでしょう。
ツール導入ありきの運用は避けたほうがよいです。現場から「顧客管理をもっと楽にしたい」など、ニーズが生まれてきた段階で導入すると劇的に効果が高まります。
MA(マーケティングオートメーション)ツール
MAツールは、顧客情報を一元管理し、過去のコンタクト回数、Webへのアクセス頻度などを集計し、その人にふさわしいメールを個別に届けます。シナリオを設定して、アプローチを自動化すると、よりタイムリーで緻密な営業ができます。
またMAツールを使って、ユーザーのWeb上での行動を分析し、一人ひとりの興味がどう変化し、行動にどう反映されるかを可視化できるので、より最適なアプローチ方法を生み出すことにもつながります。
SFA(セールスフォースオートメーション)とは
SFAは自社営業が、顧客とどんな会話をし、どんな反応を得たかをデータベース化するものです。
営業全員が、それぞれの営業状況を可視化できるようになります。全体の営業レベルの底上げにもなり、適切な顧客対応が誰にでもできるようになります。
営業のノウハウ、結果を蓄積でき、それに基づいた営業戦略を立てられることもメリットです。
インサイドセールスの成果を最大化するポイント
インサイドセールスの仕組みを導入しただけでは成果は十分に得られません。
早期に体制を軌道に乗せ、インサイドセールスで得られる恩恵を受けるにはインサイドセールス以外の部署に求められる意識の変化もあります。
また同じくPDCAを回して、インサイドセールスの重要な要素である「データ」の扱いも重要。感覚的な分析ではなく、データドリブンなセールス組織への進化がカギになるでしょう。
社内の情報共有と意識統一
部署の垣根を越えた情報共有、また意識統一が欠かせません。
インサイドセールスが軌道に乗ってくると、分業化の弊害としてフィールドセールスやマーケティングとの対立が起こりやすくなると言われます。短絡的な発想では、インサイドセールス担当者は「数多くアポを取っても、なぜフィールドセールスの受注率はあがらないのか」と考えます。逆に、フィールドセールス側「あがってくるアポイントの質が低いから、受注が伸びない」と、責任の押しつけ合いになるのです。
避けるには、それぞれが行っている活動の内容や課題について相互理解が第一歩です。
最終的には顧客が商品を買って満足してくれることが社内共通の目標だと常に認識する必要があるのです。それぞれが聞いた顧客の声、疑問や不満も含めて共有化するのも一つの施策でしょう。
結果が伸び悩んでいるときはもちろん、好調なときほど互いの業務へのリスペクトが安定的な売上成長の原動力となります。
定期的な振り返りと改善を繰り返す
これまで感覚に頼った営業をしてきたなら、定期的に数字をチェックして振り返りましょう。
架電回数、相手とセールスの話ができたか、アポイントにつながりそうな件数は何件あるかなど、さまざまな営業活動が簡単に可視化できるようになりました。
「KPIが達成できたからよかった」で終わらせず、もっと成果を伸ばす方法はないかという視点で改善に取り組みます。少なくとも1か月ごとにインサイドセールスの成果、貢献について振り返るようにしましょう。
これらは会議の仕組み化も可能です。
インサイドセールスは営業やマーケティングの全員に関わるので、一人残らず意識的な参加状態にすれば成功が大きく近づくはずです。
インサイドセールスは外部委託も可能
インサイドセールスは重要な営業の一部ですが、成果を高めるためには専門的な知識も必要となります。
営業担当の役員直下でインサイドセールスの導入を推進した経験がある人に話を聞くと、スムーズな導入、できるだけ早期に成果をあげるため、インサイドセールスにかかわる戦略立案と運用を外部の専門会社に委託したそうです。
当初は、インサイドセールスの導入そのものに社内から慎重な声もありましたが、社内の導入チームと専門会社とで社内の全部署に丁寧にメリットを説明し、スムーズな導入につながりました。
単にアポイント取りの部分だけを外部委託するのは、テレアポとほぼ同じです。ただの業務委託とあまり変わりありません。
外部委託した代行会社は戦略立案のプロ
上述の導入経験者は「せっかく外部の専門家を活用するならば、KPIの設定や、自社の営業フローのどこにボトルネックがあるのかなど、洗いざらい相談したほうがいい」と考えたそうです。そのほうが委託先も深くクライアント(当社のこと)を理解でき、より本質的な提案ができるだろうという狙いもありました。
当時の社内には、インサイドセールスに実績のある社員がいなかったため、外部の知見を利用したのは賢明だったかもしれません。委託先は、一蓮托生の精神で納得のいくまで何度も打合せを重ねたとのこと。
営業フローの見直しや、インサイドセールスとフィールドセールスの役割分担など社内のルール化を進め、狙い通り3か月ほどで営業数字に好影響が出てきました。
数年経過した今でも、当時のルールの骨格が残っていることからも、社風や事情にあったルールを作成できたと言えそうです。
代行会社からのフィードバックは重要
委託先がインサイドセールスを行いと、自社内の営業パーソンが見込み客と会話を行う機会が減ります。
その結果、生の声が社内に蓄積されづらくなる点がデメリットです。そこで委託先に依頼をして情報共有の機会を拡大。
アプローチ件数やアポの獲得件数など数字で表れる項目よりも、顧客がどんな反応だったか、アポが取れなかった理由などを重点的に報告してもらうことで、改善すべきポイントを把握しましょう。
インサイドセールスはさらに重要になるとの予測
コロナ禍で変わった営業環境は、そこまで劇的に変わる見込みはないのではないでしょうか。「足で稼ぐ営業」は効率面からも、働き手の都合を考えてもありないでしょう。営業の分業制は多くの人材がプロとして活躍するためにも必要なことです。
企業としてインサイドセールスへの適応は必須であり、また変革のチャンスとして取り組むことをお勧めします。
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