最終更新: 2026年6月
ローパフォーマーからの転換とは、成果が出ない状態を行動量の増加ではなく行動の質の改善で打破する営業スキル向上手法です。
「がむしゃらにやれば成果が出る」という前提で動いても、成果が出ない時期は誰にでも訪れます。問題は行動量の不足ではなく、「成果を出す人間が何をしているか」を知らないまま動き続けていることです。KPI設計・仮説検証からPDCA実行まで一気通貫で支援する株式会社プロセルトラクションにて準MVP賞を受賞した担当者の実践事例から、ローパフォーマーからの転換を実現した「ハイパフォーマーへのインタビューで得た4つの共通傾向」と「業務時間外に実践するコソ練8項目」を解説します(プロセルトラクション実績, 2024年度)。
この記事の目次
1. 「がむしゃらにやる」だけでは成果が出ない構造
才能への過信とがむしゃら行動の限界
「自分には才能がある。とにかくがむしゃらにやれば成果を出せるはずだ」──この前提で仕事に取り組んでいた時期、成果はまったく出ませんでした。行動量は多い。気持ちは入っている。にもかかわらず数字が出ない状態が続く時、多くの担当者は「もっと頑張ればいつか出る」という方向に走りがちです。
しかし、この状態を打破するために必要なのは「さらなる行動量の増加」ではなく、「成果を出す人間が実際に何をしているか」を正確に把握することです。
ハイパフォーマーへのインタビューという解決策
「仕事ができる人たちは、1日に何をしているのか。それを細かく聞いて真似をすれば、同じ成果が出るのではないか」──この仮説のもと、ハイパフォーマーの上司・同僚・成果を出している友人に対して「1日に何をしているか」を具体的にインタビューしました。このインタビューで得られた回答の中に、ハイパフォーマーに共通する4つの傾向が見えてきました。
2. ハイパフォーマーに共通する4つの傾向
傾向1:PDCAをデイリーで回す
ハイパフォーマーの最も大きな特徴は、「数値が出ていない現状を放置しない」ことです。PDCAを月次・週次で回すのではなく、デイリーで回すという習慣があります。「今日の架電数・アポ数・商談数が計画から外れているか」をその日のうちに確認し、「なぜずれたか」「明日何を変えるか」を当日中に言語化します。
「今月は調子が悪い」という月単位の感覚的な認識ではなく、「今日の接続率が昨日より3%下がっている。原因は架電時間帯のずれだ」という日単位の数値把握が、翌日の行動修正につながります。
デイリーPDCAの実践方法:
- 当日の行動数値(架電数・接続数・アポ数)を終業前に記録する
- 目標との乖離を確認し、原因を1行で言語化する
- 翌日の行動で変えることを1つ決めてから退勤する
傾向2:フィードバックをもらったら次の日に実行する
「フィードバックをもらったのに、実行しない人が結構多い」──これはハイパフォーマーへのインタビューで繰り返し出てきた指摘です。ハイパフォーマーは、年上・年下・社内・社外を問わず、成果を出している人に積極的に意見を求めます。そして、もらったフィードバックを「次の日に実行する」という速度で動きます。
フィードバックが成果に結びつくには2段階のプロセスが必要です。まず「もらうこと」、次に「実行すること」です。多くの担当者はフィードバックを求めることが少なく、求めたとしても実行するまでに時間がかかります。ハイパフォーマーはこの2段階を圧倒的に速く実行します。
フィードバック即実行の習慣を作るための設計:
- 週に1回以上、具体的な行動に対してフィードバックを求める場を設ける
- もらったフィードバックはその日中にメモし、「翌日に試す」と宣言する
- 実行した結果を同じ人に報告することで、さらに深いフィードバックを引き出す
傾向3:論理的思考力──数値で状況を把握し行動の根拠を説明できる
ハイパフォーマーは、「なぜ今日この行動をしているか」を数値と論理で説明できます。「今日の架電は50件」という状態と「月末までに受注3件が必要で、受注率40%なら商談8件必要、アポ率20%なら架電40件必要。今日はその中の50件を消化する予定」という状態とでは、同じ50件の架電でも行動の精度が全く異なります。
この論理的な数値把握は、状況が悪化した時の原因特定を早くします。数値で状況を把握している人は「どの指標がずれているか」を即座に特定し、「どこを変えれば改善するか」を導けます。感覚で動いている人は、成果が出ない原因を特定できないまま「頑張る」しかできません。
論理的思考力を鍛える実践:
- 自分の行動目標を常に数値で管理し、根拠(逆算)をセットで持つ
- 「なぜ今日この行動をしているか」を他者に説明できる状態を維持する
- 数値が計画から外れた時に「感覚で補う」ではなく「原因を特定する」
傾向4:業務時間外にコソ練を積む
ハイパフォーマーが業務時間内だけで成果を出しているという認識は、ほぼ例外なく間違っています。業務時間外に「誰も見ていない場所でスキルを磨く」という習慣、いわゆる「コソ練」が成果の土台を作っています。
コソ練は「残業して架電する」ではなく、「架電以外のスキルや準備に時間を使う」という概念です。ロープレ・トーク録音の聞き直し・リスト準備・メール設計──これらを業務時間外にコツコツ積み上げることで、業務時間中の行動密度が上がります。
3. 業務時間外コソ練8項目
ハイパフォーマーへのインタビューと自身の実践から導き出した、業務時間外にできるコソ練の具体的な8項目です。
コソ練1:問い合わせフォーム・メールを送りまくる
架電時間外でも接触できるチャネルとして、問い合わせフォームやメールを活用します。業務時間外にまとめて送信することで、翌朝の返信対応につなげられます。
コソ練2:夜間に送信設定してヨミ案件にメールを送る
「明日の朝一番に読まれるタイミング」を意識したメール送信設定を夜のうちに行います。担当者が出社直後に読む確率が高まる時間帯への送信設定が、返信率向上につながります。
コソ練3:セールスレターを作って送る
電話でアプローチしにくい案件・返答待ちの案件に対して、訴求力の高いセールスレターを作成して送付します。文章での訴求力を上げるための練習としても機能し、スクリプト構築のスキル向上にもつながります。
コソ練4:明日架電する一覧を作る
翌日の架電リストを前日の夜に整理しておくことで、翌朝の判断コストを削減します。「どの優先順位で誰に架電するか」を決めた状態で翌日を迎えられます。
コソ練5:ヨミ案件の漏れがないかリスト巡回する
「誰も当たっていない良いリストが必ずある」という認識で、定期的にリスト全体を巡回します。追客漏れ・架電漏れを発見することで、取りこぼしを防げます。
コソ練6:ロープレ(一人練習)
実際の架電を想定したトーク練習を、一人で繰り返します。声に出して話すことで、スクリプトの暗記だけでなく「実際に話した時のリズム」が身につきます。
コソ練7:ハイパフォーマーの通録を聞いて完コピ練習をする
成果を出している担当者の架電録音を繰り返し聞き、トークの流れ・間の取り方・言葉の選び方を完コピする練習をします。「なぜこのタイミングでこの言葉を使ったか」を考えながら聞くことで、表面的な真似から本質的な理解に進めます。
コソ練8:自分の失注理由から切り返し練習をする
失注した商談・アポが取れなかった架電を振り返り、「どの返答で流れが変わったか」「どう切り返せばよかったか」を言語化して練習します。失敗から学んだ切り返しパターンは、実践での再現性が高くなります。
4. 実践成果──目標達成率125%の実現
ハイパフォーマーへのインタビューで得た4つの習慣とコソ練8項目を実践した結果、某広告代理店向け営業プロジェクトにおいて目標68店舗に対して実績85店舗(達成率125%)を実現しました(プロセルトラクション実績, 2024年度)。
| プロジェクト | 目標 | 実績 | 達成率 |
|---|---|---|---|
| 某広告代理店向け営業PJ | 68店舗 | 85店舗 | 125% |
「がむしゃらにやる」から「成果を出す人間の行動を把握して真似する」への転換が、成果に直結しました。一方、別の不動産ポータル向けプロジェクトでは目標に対して大きくビハインドした結果に終わり、「何をすべきか」の把握だけでなく、規模感に応じた計画設計の精度向上が次の課題として残りました。
よくある質問
ハイパフォーマーへのインタビューでは何を聞けばよいですか?
最も有効な質問は「1日の行動を時間単位で教えてください」です。架電・商談・準備・振り返りにそれぞれ何分使っているか、どのタイミングでどんな判断をしているかを具体的に聞きます。抽象的な「コツは何ですか?」という質問よりも、行動レベルまで分解した質問の方が再現性の高い情報が得られます。
コソ練8項目のうち、最初に取り組むべきものはどれですか?
「明日架電する一覧を作る」(コソ練4)と「ハイパフォーマーの通録を聞いて完コピ練習をする」(コソ練7)の2つを最初に推奨します。前者は翌日の架電効率を即座に上げ、後者はトークの質を根本的に改善します。この2つを習慣化してから、他の項目に広げていくと効率的です。
デイリーPDCAを続けるためのコツはありますか?
「終業前5分」をPDCAの時間として固定することが最も効果的です。記録する内容も「架電数・接続数・アポ数」と「原因1行」と「明日変えること1つ」の3項目に絞ります。記録の粒度を細かくしすぎると継続が困難になるため、3項目を毎日欠かさず記録することを優先します。
まとめ──ローパフォーマーからの転換は「成果を出す人間の行動」を把握することから始まる
「頑張れば成果が出る」という前提が通用しない状況を打破するための実践手法をまとめます。
ハイパフォーマーに共通する4つの習慣:
- デイリーPDCA:数値が出ていない現状をその日のうちに分析し、翌日の行動を修正する
- フィードバック即実行:年上年下問わず意見を求め、もらったら次の日に必ず実行する
- 論理的思考力:「なぜ今日これをしているか」を数値と根拠で説明できる状態を維持する
- コソ練:業務時間外にスキルを磨く習慣を積み上げる
業務時間外コソ練8項目:
- 問い合わせフォーム・メールを送りまくる
- 夜間に送信設定してヨミ案件にメールを送る
- セールスレターを作って送る
- 明日架電する一覧を作る
- ヨミ案件の漏れがないかリスト巡回する
- ロープレ(一人練習)
- ハイパフォーマーの通録を聞いて完コピ練習をする
- 自分の失注理由から切り返し練習をする
これらを「真似する」という姿勢で実践することが、ローパフォーマーからの転換への最短経路です。才能や感覚に頼る前に、成果を出している人間の行動を把握して再現することが先決です。標準化・再現性のある行動習慣とVOCに基づくスキル改善が、属人的な才能依存から脱却する鍵になります。
この記事の執筆者
長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役
リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。100を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。







