セグメンテーションとは、市場をさまざまな切り口で細分化するマーケティング手法です。

近年はインターネットの普及に伴って顧客ニーズが多様化しており、従来のマスマーケティングは限界を迎えつつあります。競合他社と差別化を図り、競争を勝ち抜くためには市場を細分化してターゲットを絞る必要があるのです。

この記事ではセグメンテーションの基本的な概念や分類例、活用方法を解説します。実際の成功事例も紹介するので参考にしてください。

セグメンテーションとは

セグメンテーションとは、市場や顧客を共通のニーズ・特性を持つグループ(セグメント)に細分化することです。分類の基準は顧客の年齢や性別、商品の販売地域など多岐にわたります。

セグメンテーションは市場調査を実施したあと、ターゲットを絞り込む前の準備段階として行うことが一般的です。

競争が激化しているビジネスの世界では、自社商品・サービスを売り込む市場を見極めることが重要です。市場を細分化してターゲットを絞り込むことで、効果的なマーケティング戦略を展開できるようになります。

セグメンテーションが重要な理由

セグメンテーションが重視されている理由は大きく2つあります。

顧客ニーズの多様化に対応するため

おおむね2000年代初頭までは、不特定多数の顧客に対して画一的なアプローチを行う「マスマーケティング」が主流でした。しかし、インターネットの普及やライフスタイルの変化に伴い、顧客ニーズは多様化しています。

すべての人のニーズに応えようとするとコンセプトが曖昧になり、誰からも必要とされない商品・サービスになってしまう可能性があります。顧客に魅力を感じてもらうためには、細分化した個々のニーズに対応することが重要です。

自社の利益を最大化するため

事業を安定させるためには、できるだけ少ないコストで利益を最大化しなければなりません。

セグメンテーションを活用すれば、限られた経営資源をどこに投下すべきか見極められます。そして、利益が見込めそうなセグメントに対して重点的にアプローチすることで費用対効果を高められるのです。

この戦略を「選択と集中」と呼び、競合との差別化にもつながります。

セグメンテーションの分類方法

市場を細分化するための切り口は、大きく4つに分類できます。それぞれの分類項目や具体例について解説します。

人口動態変数(デモグラフィック変数 Demographic Variables)

人口動態変数は、人の属性に基づいて市場を細分化するための変数です。顧客ニーズとの結びつきが強く簡単に測定できるため、マーケティング戦略においてよく使用されます。

分類項目分け方の具体例
性別男性、女性、その他
年齢10代、20~30代、40代以上
最終学歴高校、専門学校、大学、大学院
職業事務職、営業職、技術職
所得~500万円未満、500万円以上、1,000万円以上
家族構成一人暮らし、夫婦のみ、子どもあり、その他


新商品のプロモーション方法について考えてみましょう。年齢別に顧客を分類すれば、若年層にはSNS、シニア層にはメールや新聞広告を活用するなどアプローチを変えることができます。

地理的変数(Geographic Variables)

地理的変数は、地域や地理的な要素に基づいた変数です。家電製品や衣料品など、気候や生活習慣によって売上が変動しやすい商品を扱うときに有効です。

分類項目分け方の具体例
世界の国・地域・アジア、ヨーロッパ、北米…など
・アメリカ合衆国、中国、インド…など
日本の地域・都道府県・東日本、西日本、中四国…など
・東京都、北海道…など
気候気温、湿度、降雨量…など
人口密度大都市圏、地方都市、郊外
文化・生活習慣・宗教自家用車が必須、識字率が低い、イスラム教徒が多い…など

一般的に、寒い地域では防寒グッズや暖房器具の需要が高いでしょう。地理的な要因を考慮して商品を選定することで、売上が向上するだけでなく、売れ残りを減らすことにもつながります

心理的変数(PsychographicVariables)

心理的変数とは、人の内面的な要素に基づいた変数です。

心理的変数は定性的であることから、従来は分類が難しいと考えられてきました。しかし、インターネットやSNSの普及によって、顧客の価値観やライフスタイルを詳細に把握できるようになっています。

分類項目分け方の具体例
ライフスタイルアウトドア派、インドア派
価値観環境問題に関心が高い、節約志向
パーソナリティ社交的、内向的

たとえば食品を選ぶときの基準は人それぞれです。味や量を重視する人もいれば、オーガニック食品にこだわる人もいるでしょう。年齢や性別などの属性が同じでも、心理的変数ではセグメントが分かれる場合があります。

行動変数(Behavioral Variables)

商品購入時の行動パターンで顧客を分類する変数です。インターネット販売の増加や、POSシステムの技術向上により測定が容易になりました。

分類項目分け方の具体例
購入頻度ライトユーザー、ヘビーユーザー
購買パターンネットで比較後、SNSで口コミ確認後
製品に対する知識量よく知っている、名前を聞いたことがある程度

購買率を高めたい場合、SNSで特定のコンテンツに関心を示した顧客に対して、関連する商品・サービスの広告を打つと効果的です。

セグメンテーションを評価する4Rの原則

セグメンテーションを行ったあとは、市場を正しく細分化できているか検証する必要があります。その際によく用いられるのが「4R」の原則です。

「4R」とは次の英単語の頭文字をとっています。

Rank(優先順位)

対象となるセグメントに優先順位をつけられるか検証します。自社の事業戦略やマーケティング戦略と照らし合わせて、収益性、コストなどの観点でランク付けするとよいでしょう。

基本的には、優先順位の高いものからターゲットを定めます。優劣がつけられないセグメントでは、効果的なターゲティングができない可能性があります。

Realistic/Realistic Scale(規模の有効性)

対象となるセグメントに、利益を確保できる規模があるか確認します。市場規模があまりにも小さいと、十分な利益が得られず事業を継続することが難しくなるでしょう。

一方で、市場規模が大きいと、それだけ参入企業が多くなるので注意が必要です。競合が少なく、ある程度の利益が見込めるセグメントを見極める必要があります。

Reach(到達可能性)

対象のセグメントに対して、商品やサービスを届けられるか検証します。到達可能性が低い、あるいはコストがかかる市場は狙わないほうがよいでしょう。

たとえば海外市場にセグメントを置いた場合、輸送コストの高さや、コミュニケーションの難しさがアプローチの妨げになる可能性があります。

Response(反応の測定可能性)

プロモーションやセールスを実施したあとに、ターゲットの反応を測定できることが重要です。反応が測定できなければ、効果的なマーケティングが実施できているのか検証できません。

顧客満足度やリピート率など、複数の指標を数値化できるとよいでしょう。芳しくない結果が出た場合は原因を調査し、セグメントを修正するなどの改善を行う必要があります。

セグメンテーションをマーケティングに活用する方法

セグメンテーションは「STP分析」の要素のひとつです。STP分析はマーケティング戦略を考えるうえで欠かせないフレームワークであり、以下の単語の頭文字をとっています。

  • セグメンテーション
  • ターゲティング
  • ポジショニング

セグメンテーションを行うだけでは、マーケティング戦略を立てることができません。細分化したセグメントの中から狙う市場を絞り込み(ターゲティング)、自社の立ち位置を明確化(ポジショニング)する必要があります。

顧客に選んでもらうためには、ターゲットの選定が非常に重要です。さらに競合他社と差別化を図り、優位に立てるポジションを確立しなければなりません。効果的なマーケティング戦略を立案するためには、セグメンテーションを含むSTP分析を活用してください。

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この記事でセグメンテーションの概要は説明していますが、新規事業のビジネスモデルを構築することはかんたんではありません。そこでプロセルトラクションではあなたの会社にマッチしたインサイドセールスのご提案から実践までサポートしています。

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セグメンテーションの成功事例

セグメンテーションを活用して、マーケティングに成功した事例を紹介します。

事例1:差別化に成功したアイスクリーム

アイスクリームメーカーが、ターゲットを「経済的に余裕のある大人」に絞って差別化を図った事例です。セグメンテーションを行うことで、競合の少ない市場を創り出すことに成功しました。

高価な商品でありながら、あえて店舗販売を行わず、スーパーやコンビニで販売したこともポイントです。この戦略により「身近で購入できるプレミアムアイスクリーム」という価値を生み出しました。

事例2:外回り営業に特化したノートPC

PCメーカーがターゲットを法人、かつ外回りの営業担当に絞ってマーケティングに成功した事例です。

外回り営業が必要とするスペックに特化する代わりに、不要なものを思い切って切り捨てました。スペックや価格の競争を避けて、顧客が本当に求める製品を提供したのです。

セグメンテーションで細かな顧客ニーズを洗い出したことが成功の鍵といえるでしょう。

セグメンテーションを実施するときの注意点

セグメンテーションは、思いつくままに市場を細分化すればよいというわけではありません。効果的なマーケティングを行うための注意点を解説します。

細分化しすぎない

セグメントを細かく分類しすぎると、市場規模が小さすぎてマーケティング効果が出にくい可能性があります。

化粧品を売りたい場合を考えてみましょう。セグメントを「都内に住む30代の既婚女性、会社員」と定義してしまうと、地方に住む人や、専業主婦にはアプローチが届きにくくなります。

このように、必要以上に分類を細かくすると機会損失につながる恐れがあります。まずは広範囲に向けてアプローチをして、反応のある層にターゲットを絞っていくとよいでしょう。

市場の変化に対応する

インターネットが普及した昨今、顧客のニーズ・価値観はめまぐるしく変化しています。そのため、一度設定したセグメントを使い続けるのではなく、適宜修正しなければなりません。

市場の変化に柔軟に対応するためには、変化が起こった原因を分析し、スピード感を持って対応することが重要です。

セグメンテーションで営業を効率化しよう

セグメンテーションとは、効果的なマーケティング戦略を展開するために、顧客や市場を細分化する手法です。顧客ニーズの多様化に対応し、自社の利益を最大化するためにはセグメンテーションの活用が欠かせません。

セグメントの分類方法は大きく4種類あり、どの分類を用いるかは商品・サービスの性質によって異なります。この記事で紹介した成功事例のように成果を上げるためには、専門業者に相談することをおすすめします。

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