新規開拓の営業と聞いただけで、難易度が高そう、大変そうというイメージを持つ方は少なくありません。ただし初めてのお客様と、既存客(リピーター)とでは、売り方も売るまでのアプローチが違うのは当然のこと。初めて購入していただくためには相応の準備が必要です。
もちろん既存客にも繰り返し購入いただくための営業活動は別に必要です。追加する形で、新規顧客が獲得できれば、売上は伸び、事業や会社が拡大していくことでしょう。加えて特定の既存客への依存度が低下しますので経営リスクの分散にもなります。
本記事では、新規営業の考え方、戦術、具体的な進め方までを解説していきます。
新規開拓の営業を行うには
まず新規営業を「これまでに取引のない顧客に対して、自社サービスや製品を売り込んで買っていただくこと」と定義します。対して、既存顧客への営業活動は考え方や業務のフローがまったく異なります。
そのため既存客への営業のみを行ってきたセールスパーソンが突然新規営業を命じられても「自社や製品のことを知らない方にどうやって買ってもらうのか…」という思考になるのは当然です。ただ最終的に「購入していただく」という着地点は同じですから、既存客への営業フローに下記のプロセスが追加されるイメージです。
ターゲットの選定
まず決めるべきは、誰に向かって営業をかけるかです。
新たに自社製品を買ってくれそうな方、どこにニーズがあるかをイメージする必要があります。最も有力な方法は現在の顧客を分析すること。
今のお客様はなぜ自社製品を選んでくれたのか、どんなことで役に立っているのかを調べれば、同様の課題を持っている顧客像が浮かび上がってくるはずです。
最初のアプローチ
アプローチが最初の関門です。
自社や製品のことを認知してくれていれば儲けもの、名前すら聞いたことのない方に対して、まずは知ってもらうことが第一歩です。とはいえ、未知のものに対しては誰もが本能的に警戒心を抱くもので、ましてや「売り込み」と思われてしまったら防御壁はさらに強固になってしまいます。
まず警戒心を解きほぐしたうえで話を聞いていただき、興味を持ってもらう。できれば「好感」を抱いてもらいたいものです。確かに難しい関門であるのですが、営業の腕前やスキルが効果を発揮する場面でもあります。
ヒアリングと提案
ヒアリング、相手のことを知るフェーズは重要です。
相手が既存顧客ならば、こちらは相手の困っていることやニーズをある程度理解しています。相手もこちらがもっている製品がどんな役に立つのかも分かってくれているかもしれません。しかし新規では互いを知りません。
新規開拓の営業に最も必要なこと、それは相手の課題を聞き出して、「それ、弊社なら解決できるかもしれません」と解決できるイメージを提案できるかです。
課題やニーズと、こちらのソリューションがかみ合えば、商談は前進するはずです。逆に言えば、互いにすり合わせる段階まで行けないために、多くの人は新規開拓の営業を特別に難しいものと捉えているのでしょう。
取引開始に向けた企業調査、審査
企業間の新規取引の場合、口座開設を行います。そのために与信管理、企業としての信頼度調査を行うことが一般的です。
提案が見事に相手のニーズに響いて「ぜひ取引を始めましょう」となっても油断は禁物なのです。
支払い能力はあるか、組織としてのコンプライアンスは問題ないかなど、この企業と取引することが、売上のプラス以上にリスクをもたらすなら慎重になるべきです。
大きい取引になれば、代金の回収が遅れると自社の支払いが遅滞するリスクが増してしまい本末転倒です。継続的な付き合いにふさわしい企業か調査するのはとても重要なのです。
新規開拓の手法
新規開拓の営業を行うために、どのようにアプローチを行うのか。その手法を詳しく見ていくとともに、有効性、長所・短所などを考えていきます。
自社または自社の製品に興味をもっていただき、接点(コンタクト)の機会をいかに獲得できるかに注目しましょう。
テレアポ
テレアポは実行までのスピードが早く、まとまった件数を実行でき、顧客の反応も集約できるバランスの取れた策です。
専門のテレアポ会社に依頼をかけて、アポイント獲得1件につき成果報酬を上乗せする方法が一般的ですが、おすすめは自社の営業マンやマネージャーも電話がけに加わることです。実際の見込み客と会話することで、生の声が聞けるので、その後の営業の質向上が期待できます。
ただ、多くの企業には一日に何十件、何百件と電話がかかってきています。見ず知らずの相手からの電話でも、きちんと対応してもらえるか、相手に疎まれないためのテクニックが必要です。
飛び込み営業
飛び込み営業は最も古典的な営業方法で、「キツそう」「怒られそう」「効率悪そう」というイメージを持つ方も多いでしょう。
実際に嫌な顔をされる、門前払いされる、断られるのは当たり前の手法なので、メンタルが弱い方にはお勧めできません。
メリットは直接顔を見て話せること、またターゲットが固まっている場合に効率がよいことです。例えば、オフィス向けのセキュリティシステムを販売したいなら、都心の50階のオフィスビルを1階から50階の全テナントを回るのは効率のよい手段になります。
また営業パーソンは「短時間で何を話せば、相手が聞く耳を持ってくれて、興味に繋がるか」をテレアポ以上に真剣に考えます。そのため、どんどんセールストークが磨かれていきます。受付窓口の「ブロック」をいかに突破し、キーパーソンにたどりつけるかが醍醐味です。
メールや問合せフォームでのプッシュ
手持ちのリストにメールを一斉に送る方法は、低コストで実行でき、効果的な手法です。
また1通ずつ少しだけ相手にあわせた文言を加えてから送ると、効率は下がるもののレスポンス率が向上することが知られています。
さらに各企業のWebページに設置された問合せフォームを通じて「一度、情報交換しませんか。メール返信ください」という趣旨のメッセージを送る方法も便利です。
大半のメールやメッセージは無視されてしまうものの、なんらかのレスポンスがあった場合は、一定の興味を持っている証拠です。したがって、精度の高いアポイントが獲得しやすいメリットがあります。
プル型広告、Webサイト、オウンドメディア
ユーザーが検索するキーワードに連動して広告を表示するリスティング広告や、自社のWebサイトのSEOを高めることで検索表示順位を上げる手法も重要です。顧客がニーズを顕在化させた状態で自社の門を叩いてくれるので営業効率はとても高くなります。
オウンドメディアは、ブログ、note、その他のSNSなど、独自のコンテンツを制作し、見込み客を惹きつけて徐々に育成していく方法です。課題意識をもった顧客にアプローチしやすくなりますが、メディアそのものに集客力がつくまでコンテンツを生み出し続ける必要があります。軌道に乗るには最低でも1年程度かかると言われ、時間とコストを継続投資できるかはポイントとなるでしょう。
展示会、セミナー
展示会へのブース出展、セミナーの開催は似た属性をもった顧客を一か所に集客できるメリットがあります。頻繁に実行するには費用や手間暇がかかりますが、ピンポイントで行えば新規開拓の大きな助けとなることでしょう。
また「単純に名刺を獲得して終わり」ではなく、提案やヒアリングの場所として活用すれば次回以降の営業がやりやすくなります。
紹介営業
新規顧客の対象となる企業を、第三者から「紹介を受けて」営業するスタイルです。
紹介または推薦してくれるのは、主に既存の顧客というケースが多いでしょう。ここまでに紹介した営業手法と比べて、決定率が抜群に高く強力な武器となります。
既存客と会う際は常に「新たな紹介を受けられないか」を頭の片隅に置くことが重要です。自分が買って満足したものは他の人にも薦めたい心理を利用するのです。
紹介してくれた方の名前を出すと、紹介先とのアポが取れる確率は大幅に高まります。
「A社の●●社長から、絶対B社長のところにも行った方がいいよと言っていただいて…」など、名前を使う許可を取っておくのもポイント。
簡単にアポが取れるだけでなく、提案内容も無下に断られる確率が減ります。「あの●●社長が勧めてくれたのだから…」と真剣に検討をしてくれることでしょう。
一度に多数の方にコンタクトはできませんが、ここぞというケースで効果を発揮します。
プロセルトラクションが新規開拓営業の実践をサポート
この記事で新規開拓営業の概要は理解できますが、それを自社に当てはめることはかんたんではありません。プロセルトラクションではあなたの会社にマッチした営業方法のプランニングから実践までサポートしています。ご興味あればお気軽にご連絡ください。
「プッシュ営業」より「プル営業」が優れている?
前項で紹介した、次の営業手法は「こちらから売り込む」プッシュ型営業と呼ばれます。
- テレアポ
- 飛び込み営業
- メール送付
- 問合せフォームからの営業
一方で、以下はプル型営業に分類されます。
- メルマガ
- オウンドメディア
- SNS
- 広告出稿
- 展示会、セミナー開催
プッシュ型は前時代的で非効率であるという指摘があります。一方で、プル型は自らが情報を欲して問合せを行ってきたので営業を受け入れてもらいやすく、成約率も高いと言われます。
しかし、プル型の営業だけでいいという主張は違います。限られた営業リソースを優先的にプル営業に振り分ける戦略は否定しませんが、「知らせるだけでなく押し込む」製品の情報を新規ターゲットに確実に届けるにはプッシュも欠かせません。
また「当社の製品は商品力が高く、成約率も高いのでプッシュなどしなくても売れる」という人がいますが、そんな素晴らしいものならば「プッシュすればもっと売れる」はずです。
成約率の高いターゲットを設定し、適切にヒアリング、それに対応した提案力があれば、紹介営業のようなプッシュ型のほうが成果につながることもあります。「これだけやればいい」というものではなく、営業活動も様々な施策の組み合わせが必要です。
すぐ始められる新規開拓の進め方
新規開拓の様々な方法を説明してきました。しかし「あれもこれも」一度に進めるのは難しいでしょう。
また、「人材を雇って、体制を作ってから始めよう」「説得力ある資料を作ってからにしよう」と言っていては、いつまでも新規開拓を開始できません。
最低限、すぐに始められる項目にしぼって、新規開拓営業の進め方を解説します。
受注相手をイメージする
新規開拓の候補リストとして、最低でも50~100社程度の「アタックリスト」を作りたいところです。
しかし、リスト作りに時間がかかるなら、まず1社真っ先に営業に行く先を決めましょう。知らない会社でも構いません。「この企業、この人なら、自社の製品を喜んでくれるのではないか」と理由を考えたうえで、動き出すのが先決です。
アポイントを取る(既存顧客でもOK)
次に「訪問する」と決めて、コンタクトしましょう。
直接対面が難しければ、オンラインでも可能です。また第一歩としては既存顧客でもOKとします。既存顧客に対してはクロスセル、アップセルを仕掛けると同時に、改めてヒアリングし、顧客と共通点のある企業に営業をかけるヒントを得ます。もちろん前述したように「紹介営業」が最強の営業手法なので、知り合いの紹介を受けられないかを忘れずに。
仮にターゲティングした企業が連絡がつかない、またはアポを断られたら、すぐ次へ向かいます。立ち止まらないようにしましょう。
Webの改善とリスティング広告
アポイントと平行して自社に問い合わせが来やすい環境を整えます。
具体的にはWebページの問合せフォームを目立たせる、製品紹介の解説文を見直すなどです。
Webが改善できたら、サイトの訪問数が増えるように広告を開始。リスティング広告なら低予算でも長期にプロモーションできます。早めにスタートしておけば、早くからよい引き合いが舞い込むかもしれません。
検証する(PDCA)
これらの手法で、新規開拓につながりそうな案件が浮かび上がったなら、正しい手法を選んだ可能性が高いでしょう。
ただ短期的にうまくいっても、そうでなくても、大切なのは営業活動を記録し、分析することです。
アプローチ件数、商談件数など定量的な分析に加え、「顧客の反応は実際のところ、どうだったか」「私たちが気づいていなかった課題、ニーズを聞いた」など生の声を集約しましょう。今後の営業指針の重要な材料になります。
そのうえで、
- セールストークを磨く
- 優先的に営業する先を決めていく
- 製品やサービスの修正を検討する
などを通じて営業の精度を高めていきます。
新規開拓を楽しもう
新規開拓の営業、新しい顧客との出会いは予想もしないよい影響をもたらすかもしれません。新しいビジネスが生まれる可能性もあります。
思うようには、営業数字が上がらずに苦しさを味わうこともあるかもしれませんが、それを上回る醍醐味もあります。新規開拓を楽しむためのコツをお伝えします。
過度に売上目標にのみ追われない
「売上額が命」「営業目標達成は絶対」はまちがいなく重要ですが、数字のみに過度にとらわれると、近視眼的になり契約だけを追求する思考、行動になります。
そのことで自社製品の価値の再発見や、顧客との信頼関係の向上といった、新規開拓で得られるメリットが損なわれてしまう可能性があります。
「新しい取引先を作り、会社のフィールドを広げ、売上を伸ばす」こと。新規開拓は本来、営業パーソンがワクワクする機会であることを忘れないようにしたいものです。
自社製品を万全の自信とともに勧める
今、貴社の営業は「自社製品を購入することが、顧客にとって課題解決のための最高の方法だ」と、心底思っているでしょうか。ルーティンを繰り返すうちに、強い気持ちが薄まってしまうのはよくあることです。
新規開拓を行う際には、費用対効果、どれだけのメリットが得られるかをイメージさせられるかが勝負です。そのために、誰よりも売り手自身が最高のものを売っている、売って差し上げているマインドが原動力となります。良い商品だと、営業は一層売りたくなるものです。今一度、営業がマインドセットできているかチェックしてみましょう。
まとめ
新規開拓では心構え、準備、営業手法も、既存客への営業とは異なります。
これをやれば必ず新規受注が取れる魔法はありませんが、効果的な手法を組み合わせて結果が出やすい状況は作れます。【質×量】が営業結果につながる大原則にならい、スピード感をもって実行するとよいでしょう。
新規開拓によってつかんだ契約の喜びは営業職にしか味わえないものです。ぜひトライアンドエラーを始めてみてください。
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方法は理解したけど、自社のサービスや顧客の場合どうすればいいのか分からない、そんな悩みをお持ちの場合は是非一度ご相談ください。リクルートなどの大企業からスタートアップまでサポート経験豊富な営業のプロがあなたの会社にあった営業方法をコンサルティングいたします。