最終更新: 2026年5月
テレアポのヒアリングで最もよく起きる失敗は、「答えてもらいにくい質問から入ってしまう」ことです。担当者が答えにくい質問に直面すると、警戒心が高まり「必要ありません」「今は検討していません」という表面的な返答に終わります。その結果、本当のニーズや購買意向が把握できないまま架電が終わります。
プロセルトラクションの2025年度ナレッジ賞を受賞した担当者の実践事例から、「YES回答を引き出すヒアリング設計」と「BANTC情報を自然に取得する技術」を組み合わせた、確度の高いアポ獲得の方法を解説します。
この記事の目次
テレアポのヒアリングが失敗する原因とは?
テレアポのヒアリングが失敗する最大の原因は、相手が答えにくい質問(社内情報の開示を求める質問やオープンすぎる質問)から入ってしまうことです。初期接触では「はい/いいえ」で答えられる質問や、個人的感覚で回答できる質問から始めることが成功の鍵となります。
答えてもらえる質問と答えてもらえない質問の違いとは?
テレアポでのヒアリングには、「相手が答えやすい質問」と「相手が答えたくない質問」の2種類があります。この区別を理解しないまま架電を続けると、ヒアリング自体が成立しない状況が繰り返されます。
以下の2つの質問例を比較してみます。
質問A(答えてもらいやすい)
「査定サイトからの反響は通電率やアポ率が悪いとよくお聞きするのですが、御社も同じように感じられてますか?」
質問B(答えてもらいにくい)
「反響件数は何件来てますか?」
質問Aに対しては「はい」という同意を得やすいですが、質問Bに対しては「回答を控えたい」という反応になります。
この2つの質問の違いは何でしょうか。
違い1:「はい」か「いいえ」で答えられるかどうか
質問Aは同意・不同意で答えられます。質問Bは社内の数値情報の開示が求められるため、初対面の相手には開示したくないという心理が働きます。
違い2:個人的感覚で回答できるか、社内情報の開示になるかどうか
質問Aは「感じる・感じない」という個人的な感覚を聞いています。質問Bは具体的な社内データの提供を求めています。初対面の営業担当者に社内情報を開示することへの抵抗感は、相手企業の立場からすると自然な反応です。
なぜ「お困りごとはありませんか?」はうまくいかないのか?
ヒアリングの入り口でよく使われる「お困りごとはないですか?」や「いかがでしょうか?」というざっくりとした質問は、関係構築ができてから使う質問です。初期接触では逆効果になります。
このような質問は相手に複数の回答権を与えてしまうため、こちらがヒアリングしたい内容に対して「うちにはない」「間に合っている」という、本来ヒアリングしたかった回答が返ってこない事態を招きます。
ヒアリングで成果を出すためには、最初から「ほぼYESの回答を得られる」問いかけの設計が必要です。
YES回答を引き出す「決めつけ型ヒアリング」の設計方法とは?
「決めつけ型ヒアリング」とは、「このようなお声が多いのですが、御社も同じように感じられてますよね?」と断定的に問いかけることで、高確率で「そうですね」という同意を引き出すヒアリング手法です。相手の共感を得ながら信頼関係を構築し、段階的に深い情報を引き出す設計が特徴です。
「同じように感じられてますよね?」から始める理由とは?
ヒアリングを成立させるための有効な手法が、「決めつけ型」の質問設計です。「このようなお声が多いのですが、御社はいかがでしょうか?」という問いかけではなく、「このようなお声が多いのですが、御社も同じように感じられてますよね?」と決めつけた形式で問いかけることで、高い確率で「そうですね」という同意を引き出せます。
この設計の核心は、「御社だけでなく、他社も同じ状況・気持ちである企業が多いことを伝えた上で、この状況はよくあることだよね?」と相手に思わせる点にあります。
企業・個人(代表者や営業担当者)、どちらの観点からでも回答しやすい内容で問いかけることが、ヒアリングの入口での成功を左右します。
実践例(不動産業界へのテレアポ):
IS担当:「査定サイトからの反響はお客様の質が低下している等で通電率やアポ率が悪い。媒介に繋がりにくい。というお声をよくお聞きするのですが、査定サイトによっては御社も同じように感じられてますよね?」
相手:「そうですね(そうだけどこんなものじゃないかな?)」
IS担当:「やはりそうですよね!ちなみに、ご利用されている査定サイトさんって○○さんですか?」
相手:「そうです。それと○○も利用してるよ。(そこは最悪だったからやめた等申告してくる事も多い)」
IS担当:「反響数は凄く多いけど質が悪っていつもみなさまに仰られてるのでお気持ちわかります!ちなみに反響数って月に何件くらい受けてますか?」
相手:「○件くらいかな?」
最初に「そうですよね?」でYESを引き出し、同意を得た状態で共感を重ねながらヒアリングを深掘りしていきます。一度YESと答えた相手は、心理的に反論しにくくなり、次の質問に対してもYESを返しやすくなります。
共感で信頼関係を構築しながらヒアリングを深掘りする方法とは?
YES回答が来たら、共感スキルで相手の話を受け止め、心を開いてもらいながらヒアリングを深掘りしていきます。
共感の言葉の例:「そうですよね!」「大変ですよね!」「わかります!」
共感を挟みながら進める問いかけは、担当者に「この人は自分の状況をわかってくれている」という信頼感を生み出します。この状態まで持ち込めると、最初は答えてもらえなかった質問Bのような内容(社内情報)にも回答してもらえる状態が生まれます。
一度回答してもらっている質問Aに対してであれば、深掘りをしていったとしても、自身が「はい」と答えてしまっている以上、深掘りに対しても回答してもらえることが多くなります。
また、どのような質問にも回答いただける状態まで持ち込めると、仮にサービスがマッチしなかったとしても、真のNG理由を引き出すことができます。「とにかく断られた」ではなく「なぜ断られたか」が把握できるため、次の架電設計に活かせる情報を得られます。
BANTC情報とは何か?なぜ商談の質を決めるのか?
BANTC情報とは、Budget(予算)・Authority(決裁権)・Needs(必要性)・Time Frame(導入時期)・Competitor(競合他社)の5項目を指す、商談の質を左右する重要な顧客情報です。この情報が揃っているかどうかで、追客の精度と成約率が大きく変わります。
BANTCで取得すべき5つの情報とは?
アポイントを獲得する際、ただ「アポ数」を増やすだけでなく、「質の高いアポ」を獲得するためにBANTC情報の取得が必要です。
BANTC情報とは以下の5項目を指します。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| B(Budget:予算) | サービスを導入するための予算の有無および予算額 |
| A(Authority:決裁権) | 決済者の特定および相手がどの立場にあるか(選定担当など)と決済フローの把握 |
| N(Needs:必要性) | サービスの必要性・需費など、そのサービスを導入することでどのようなことを実現したいか |
| T(Time Frame:導入時期) | サービス導入までのスケジュールの把握(いつまでに導入したいか) |
| C(Competitor:競合他社) | 競合他社の検討・導入の可能性の有無(現在利用中のサービスも含む) |
このBANTC情報は、アポをトスアップされた営業担当者にとっても非常に重要な情報であり、商談の組み立て方や追客方法・クロージングなどにも多大な影響をもたらします。
なぜアポイント前後でBANTCを聞くタイミングを変えるべきなのか?
アウトバウンドコールでBANTC情報を明確に聞くことは難しい側面があります。アポイントの承諾をいただくことに集中するあまり、BANTCの確認が後回しになってしまうケースが多いためです。
しかし、アポイント承諾後にBANTCを聞くと、心理的に断りにくい状態になっているため、自然に情報を引き出せます。前職でインサイドセールスに携わっていた担当者の多くも、アポイント獲得後にBANTCを確認することが多く、「一度アポイントの了承をいただくと、ヒアリング内容に対して断りづらいという心理から来るもの」という観察が共有されています。
アウトバウンドコールでは、まずアポイント承諾までにいかに課題をしっかりと浮かび上がらせるかが重要です。
リプレイスを目的とした架電でBANTCを取得する方法とは?
競合他社のサービスを既に導入している企業へのリプレイスを目的としたアウトバウンドコールの場合、以下の順序でBANTC情報を取得することが効果的です。
C→CS(現在のサービス確認)→N→CS→T→B→Aの順序で進めます。
実際のトーク例(ビジネスチャットツール導入を目的とした架電):
CS:「御社にあった事例やご提案をさせていただきたいので、2〜3お聞きしたい点があるのですが…」(C→現在のサービス確認)
「現在お使いになられているサービスはどのくらい前からお使いですか?」
担当:「●年くらい前からかな?」
CS:「結構長くお使われているのですね。ちなみにどちらのサービスを使われているのですか?」
担当:「●●の○○○というサービスです。」
CS:「これから先、御社や●様としては、○○(コスト・工数削減)を実現したいという事がご要望ですよね?」(N→ニーズの確認)
担当:「そうですね。」
CS:「具体的な計画は社内で立てられていますか?」(T→タイミング確認)
担当:「具体的な計画はまだかな〜?」
CS:「●様としてはいつまでに実現出来たら嬉しいというご希望はございますか?」
担当:「今年度中に実現できると嬉しいかな。」
CS:「予算などは申請されていますか?」(B→予算確認)
担当:「予算は申請する準備をしているところです。」
CS:「最後に●様はこのようなサービスを導入される際、最終的な決済をされる立場の方ですか?」(A→決裁者確認)
担当:「いやいや、私は選定をする立場です。」
これらの情報が得られると、商談時にかなり有利な情報として活用できます。例えば、「C(競合)」の情報から導入後に他社製品が入れられないことをアピールする材料を作ったり、「B(予算)」から具体的な予算を聞き出して見積もりを調整したり、「T(タイミング)」から導入スケジュールに沿ってナーチャリングを設計することが可能になります。
ヒアリングとBANTC取得を組み合わせた架電設計の方法とは?
ヒアリングとBANTC取得を組み合わせた架電設計は、「YES引き出し→共感→BANTC取得→アポ転換」の4フェーズで構成します。この流れで架電を設計することで、「とにかくアポを取る」から「確度の高いアポを取り、商談の質を上げる」へと転換できます。
YES引き出し→共感→BANTC取得の流れはどのように設計するのか?
架電の全体的な流れを整理すると、以下のような設計になります。
フェーズ1:YES回答を引き出す入口設計
- 「はい/いいえ」で答えられる質問から始める
- 個人的感覚で回答できる内容を問いかける
- 「このようなお声が多いのですが、御社も同じように感じられてますよね?」という決めつけ型で入る
フェーズ2:共感で心を開いてもらう
- 「そうですよね!」「大変ですよね!」「わかります!」で相手の返答を受け止める
- 共感の言葉を挟みながら、次の質問に移る
- 相手が「この人は自分の状況をわかってくれている」と感じる状態を作る
フェーズ3:BANTC情報の取得
- アポイント承諾前後でBANTC確認のタイミングを設計する
- アポ承諾後は断りにくい状態を活用して自然に確認する
- C→N→T→B→Aの順序でリプレイス架電では特に効果的
フェーズ4:アポイントへの転換
- BANTC情報が得られた状態でのアポイント打診は、確度が高い
- トスアップする営業担当者への情報引継ぎを同時に整備する
BANTCが取れた案件と取れていない案件で追客精度はどう変わるのか?
BANTC情報が取得できている案件とできていない案件では、その後の追客の精度が大きく変わります。
| BANTC取得状況 | 追客の精度 | 次のアクション |
|---|---|---|
| BANTC全て取得 | 高(課題・タイミング・予算が明確) | 導入スケジュールに沿ったナーチャリング |
| N・Tのみ取得 | 中(ニーズとタイミングは把握) | 予算・決裁フローを次回確認 |
| Nのみ取得 | 低(課題は把握だが他が不明) | 継続接触で情報を追加取得 |
| 取得なし | 不明(温度感が把握できない) | 再度ヒアリングから組み立て直し |
BANTC情報は、「このお客様はいつまでに・どれくらいの予算で・誰が決裁して導入を検討しているか」を把握するための地図です。この地図なしに追客を続けることは、目的地のわからない旅を続けるようなものです。
よくある質問
「決めつけ型ヒアリング」とは何か?
仮説を断定的に提示して「はい」「そうですね」と答えてもらうヒアリング手法です。「同業でも◯◯で困っているケースが多いですが、御社でも同じですよね?」とYES回答を引き出しながら課題を深掘りします。
BANTCの「C」は何を指す?
Competitor(競合)です。Budget・Authority・Need・Timelineに加え競合サービスの利用状況を確認することで、リプレイス提案や差別化設計に活かせます。BANTCが取れた案件は追客精度が大幅に向上します。
まとめ──ヒアリング設計の改善がアポの質を変える
テレアポにおけるヒアリングの品質を上げるためのポイントをまとめます。
YES回答を引き出す質問設計
- 入り口は「はい/いいえ」で答えられる質問・個人的感覚で回答できる質問から始める
- 「このようなお声が多いのですが、御社も同じように感じられてますよね?」という決めつけ型で高確率でYESを引き出す
- 一度YESを引き出すと、その後の質問にもYESが返りやすくなる
共感スキルで信頼関係を構築する
- 「そうですよね!大変ですよね!わかります!」の共感フレーズを挟みながら深掘りする
- 共感で心が開かれると、最初は断られた質問にも答えてもらえる状態が生まれる
- どんな質問にも答えてもらえる状態になると、NG理由も正直に引き出せる
BANTC情報を自然に取得する
- アポイント承諾後のBANTC確認は、心理的に断りにくい状態を活用できる
- リプレイス目的の架電ではC→N→T→B→Aの順で自然に取得する
- BANTC情報が揃うと、追客設計・商談準備・クロージングの精度が大きく向上する
これらの設計を組み合わせることで、「とにかくアポを取る」から「確度の高いアポを取り、商談の質を上げる」へと架電の設計を転換できます。
Produced by 株式会社プロセルトラクション
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この記事の執筆者
長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役
リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。100を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。







