最終更新: 2026年6月
受注率改善とは、商談から受注に至る確率を高めるために商談設計・マインド・行動量を見直し、成約数を増やす営業改善の取り組みです。
インサイドセールスで「アポは取れているのに受注につながらない」という状態は、行動量だけ増やしても解決しません。問題の根本が「商談での進め方」にある場合、改善すべきは架電数ではなく「商談中の動き方」と「マインドの設計」です。
プロセルトラクションの2025年度1Q準MVP賞を受賞した担当者T氏の実践事例から、障害福祉施設向け業務支援SaaSのインサイドセールスにおいて、「マインド改善」「相談力の強化(三本の矢の教え)」「ベイビーステップによる行動量の積み上げ」という3つの取り組みで、前期(4Q)達成率69%から1Q達成率121%へ+52pt回復した設計を解説します。
この記事の目次
アポは取れるのに受注につながらない原因──「商品説明だけの商談」の限界
商品説明だけでは課題合意ができない
障害福祉施設向け業務支援SaaSの営業では、次のような状況が課題になっていました。
- リストの約1/3が直近でアポNGをもらっている先
- 限られたリストの中から架電を続けて受注する必要がある
- アポは取れても商談で「商品説明だけ」になってしまい、受注まで至らないケースが多い
「アポが取れている」状態でも受注につながらない場合、問題は商談中の「課題合意の深さ」にあることが多いです。「商品の機能を説明する」のではなく「先方の課題に合わせた提案をする」という転換が求められていました(プロセルトラクション実績, 2025年度)。
アプローチ1:「また」を「まだ」に変換するマインド改善で達成率+52pt回復
「絶対達成できる」という前提から動く
数字が伸び悩んでいる状態で最初に必要なのは、マインドの整備です。1%でも「どうせ無理かも」と思って架電している状態と、「絶対達成できる」という前提で動いている状態では、顧客に伝わるトーンと雰囲気が変わります。
「また」を「まだ」に変換するフレームワーク:
「またダメだったか…」という言葉が出た瞬間に、「まだダメだったか!」に変換します。「また」は「もう何度もダメだった」という諦めの解釈を含みますが、「まだ」は「達成の余地がある」という積み上げの解釈になります。言葉の変換は、行動の変換の入口です。
役になりきる:
テレアポや商談の時間だけ「スーパー営業マン」だと思い込みます。「自分はスーパー営業マンだ」という役に入り切ることで、声のトーンや雰囲気が変わり、顧客に自信のある印象を与えられます。インサイドセールスにおけるスクリプト構築と同様に、マインド面の設計も営業成果を左右する重要な要素です。
アプローチ2:一人で悩まない──三本の矢の教えと相談力の強化
「1人で考えない・行動しない・悩まない」の3原則
成果が出ないときに一人で抱え込む状態を脱するために必要なのが「三本の矢の教え」です。
- 闇雲に1人で考えない
- むやみに1人で行動しない
- 無駄に悩まない
この3つの「しない」に対して、積極的にアドバイスをもらいに行き、もらったアドバイスを愚直に実行します。ハイパフォーマーの思考・行動を徹底的にパクる(TTP)。この姿勢が突破口を開きます。
相談時に意識する3段階:
- 現状の整理・把握(客観的視点):リストの状況・NG理由などを客観的に整理する
- 一旦、自分なりの答えを出す:「自分が思う課題は何か」「自分が考えた打ち手は何か」を先に言語化する
- 相談相手が同じ状況ならどう動くか:自分の答えとの違いを確認し、引き出しを増やす
「答えをもらいに行く」相談ではなく、「自分の考えと相手の考えのズレを確認する」相談が、引き出しを広げ自律的な改善につながります。VOC(顧客の声)の活用と同様に、チーム内のナレッジ共有もPDCA改善サイクルの重要な構成要素です。
アプローチ3:ベイビーステップで毎日+10分・+2〜3件を積み上げる行動設計
「1〜2日頑張って終わり」ではなく「毎日少しだけ多くやる」
行動量を増やす時に陥りやすいのが「1〜2日だけ頑張って元に戻る」パターンです。ベイビーステップは「小さな前進を毎日続ける」方法で、急激な変化を目指すのではなく、「いつもより少しだけ多くやる」を継続することで行動量の底上げを図ります。
ベイビーステップの具体的な行動例(ミニマム値):
- リスト・案件整理:始業前・終業後に+10分多くやる → リストに埋もれていた架電先や案件の発見につながる
- 架電数:休憩前・終業前に+2〜3件多く架電 → 未通電・不在先への接触事例が増える
- テレアポ時の切り返し:1〜2回多く粘る → 最後の切り返しでアポにつながった事例が多数
- 壁打ちの準備:+15分行う → 見落としていた法人情報の発見や、商談時の仮説の深度が上がる
- ベストプラクティスの視聴:2日に1回 → 言い回し・伝え方のレパートリーが増える(TTP)
このようにKPI設計の視点から行動量を分解し、毎日の「ミニマム追加量」を設定することで、無理なく成果につながる行動の積み上げが可能になります。
切り返しで受注につなげた商談事例4選
「消えそうだった商談」を受注に変えたアプローチ
事例1:3回商談リスケ後「検討は1年後でいい」という顧客
「ちょうどよかったです」で切り返し、4度目の商談設定に成功しました。商談してみたら代表に業務負担があることが判明し、即受注につながりました。
事例2:「他社利用でうちは結構」と警戒心強めの顧客
一瞬ひるんだものの「そういった方こそ〜」で切り返し、会話ベースで商談化しました。利用中のシステムへの不満が多数発覚し、翌月受注に至りました。
事例3:半年近く追客・未通電続きで失注寸前の顧客
1週間に1〜2回の代表架電を継続しました。約半年の追客後「契約したい」と連絡があり受注に成功しました。
事例4:約束架電の1ヶ月前にバージョンアップ連絡を入れた案件
先方への伝え方をチームに相談してキャンペーン情報を連絡しました。予定より1ヶ月前に受注を実現しました(プロセルトラクション実績, 2025年度)。
実践成果──4Q達成率69%から1Q達成率121%へ+52pt回復
前期(4Q)の達成率69%という状況から、マインド改善・三本の矢・ベイビーステップの3つのアプローチを継続した結果、以下の成果が得られました(プロセルトラクション実績, 2025年度)。
- 1月:達成率25%
- 2月:達成率38%
- 3月:達成率143%
- 4月:達成率144%
- 5月:達成率121%
- 6月:達成率100%
1Qトータル達成率:121%(前期4Q69%から+52pt)
「商品説明だけの商談」から「先方の課題に合わせた切り返しができる商談」への変化が、受注率の回復を支えました。新規事業・SaaSの営業においては、プロダクトの機能訴求よりも顧客課題への共感と合意形成が受注率に直結することを示す事例です。
受注率を高める商談設計・インサイドセールスの仕組みづくりについて、プロセルトラクションがご支援します。
よくある質問(FAQ)
Q. 「また」を「まだ」に変換するマインドは、チーム全体に展開できますか?
はい、展開可能です。言葉の変換は個人の習慣ですが、朝会や振り返りの場で「今日の『まだ』エピソード」を共有する仕組みを作ることで、チーム全体に浸透させることができます。重要なのは、マネージャーが率先して使うことと、「まだ」の視点で成果が出た事例を可視化することです。
Q. ベイビーステップは具体的にどの程度の期間で効果が出ますか?
本事例では、3ヶ月目(3月)に達成率143%と大きく改善しました。最初の1〜2ヶ月は行動量の積み上げフェーズであり、すぐに数字に表れるわけではありません。「小さな追加行動を毎日続ける」ことで商談の質と量が底上げされ、3ヶ月目以降に成果として現れる設計です。
Q. 三本の矢の教えで「相談」する際に、何を準備すればよいですか?
3つの準備が必要です。(1)現状のリスト状況・NG理由を客観的に整理すること、(2)自分なりの課題仮説と打ち手を先に言語化すること、(3)「相手が同じ状況ならどう動くか」を聞く姿勢を持つことです。「答えをもらう相談」ではなく「自分の考えとのズレを確認する相談」にすることで、引き出しが広がり自律的な改善につながります。
まとめ──受注率を改善する3つのアプローチと実践のポイント
アポは取れているのに受注につながらない状態を脱するための実践的な取り組みをまとめます。
マインド改善:
- 「また」を「まだ」に変換する。諦めの言語ではなく積み上げの言語で自分に語りかける
- 架電・商談時は「スーパー営業マン」の役に入り切り、声のトーンと自信を演出する
三本の矢の教えと相談力の強化:
- 一人で考えない・行動しない・悩まない
- 自分の考えを先に言語化してから相談し、相手との違いを確認して引き出しを増やす
- ハイパフォーマーの思考・行動をTTP(徹底的にパクる)
ベイビーステップによる行動量の積み上げ:
- 「いつもより少しだけ多くやる」を毎日続ける
- リスト+10分・架電+2〜3件・切り返し+1〜2回・壁打ち準備+15分・ベストプラクティス視聴2日1回
これらの取り組みにより、4Q達成率69%から1Q達成率121%へ+52ptの回復を実現しました。標準化・再現性のある営業設計として、チーム全体への展開も可能な実践事例です。
この記事の執筆者
長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役
リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。200を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。







