最終更新: 2026年6月
チアリーダー型マネジメントとは、リーダー自身がプレイヤーとして動くのではなく、メンバーが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を設計・整備するリーダーシップ手法です。
「ある日突然リーダーに就任し、目標数値すら設定されていない」──このような状況は、特にBtoB営業の現場では珍しくありません。仕組みやルールが存在しない組織で、メンバーごとの成果にばらつきが大きい状態からチームとして連続達成を実現するには、「自分でなんとかする」リーダーシップではなく「チームが機能する仕組みを設計する」リーダーシップへの転換が求められます。KPI設計・仮説検証からPDCA実行まで一気通貫で支援する株式会社プロセルトラクションにてPL準MVP賞を受賞した担当者の実践事例から、KPI設計・ナレッジ共有の仕組み化・チアリーダー型マネジメントによって、1Q連続達成と年間受注数101%を実現した手法を解説します(プロセルトラクション実績, 2024年度)。
この記事の目次
突然のリーダー就任が生む2つの構造的課題
「仕組みがない組織」と「自分でやろうとするリーダー」が重なる状態
某医療機関向けサービスの営業プロジェクトにおいて、突然リーダーを任された際に直面した課題は2つの層に分かれていました。
組織側の課題:
- チームメンバーごとの成果に個人差が大きく、特定の担当者に成果が偏っている
- 仕組みやルールがない状態で運営されており、誰でも同じように動ける状態になっていない
- 目標数値が設定されておらず、何を達成すれば良いかが明確でない
リーダー自身の課題:
- 「自分でやれば早い」という思考でメンバーに任せず、一人でやろうとしてしまう
- 結果として自分の行動量は増えるが、チームとしての生産性は上がらない
この2つの課題が重なると、「リーダーが頑張っていても組織の数字が出ない」という状態が生まれます。突破口は「自分が動く」ではなく「チームが機能する仕組みを作る」という方向性への転換です。
解決の2軸
取り組みの方向性を2つの軸で設計しました。
- 数字を達成し続けるための強いチーム設計:KPI設計・ナレッジ共有・メンバー育成の仕組み化
- 一人一人が最大限に能力を発揮できるチーム設計:自己学習による知識補完・チアリーダー型リーダーシップ
強いチームを作るための3つの取り組み
取り組み1:チームKPIの設定と日次確認
目標数値が存在しない状態から始まった最初の仕事が、チームとして追うべきKPIの設計です。営業組織コンサルティングの知見を活かし、以下の3ステップでKPIを構築しました。
- チームKPIの設定:チームとして追うべき指標(受注数・有効化数・申込獲得数等)を設定し、目標値をメンバー全員と共有する
- 日次KPIの確認と即日修正:毎日の数値を確認し、計画からのズレをその日のうちに把握して翌日の行動修正につなげる
- 定量で課題を把握:「なんとなく悪い」という感覚ではなく、「どの指標がどのくらいズレているか」という数値での課題特定を習慣化する
日次でKPIを確認して即日修正するサイクルを回すことで、月末に「気づいたら達成が難しい状態だった」という事態を防げます。問題の発見が早ければ早いほど、リカバリーの選択肢が広がります。
取り組み2:行動と思考の言語化によるナレッジ共有
個人差が大きい組織で成果を均質化するためには、「成果を出している人が何を考えてどう行動しているか」を言語化してチーム全体で共有することが有効です。
ナレッジ共有の3つの手段:
- スクリプト化:架電トーク・商談トークを「どう話せばどうなるか」という形でスクリプトとして文書化する
- マニュアル化:業務フロー・報告基準・対応パターンをマニュアルとして整備し、誰でも同じ水準で動ける状態を作る
- ナレッジ共有ミーティングの実施:定期的にメンバーが集まり、「うまくいった事例」「困った事例への対応」を共有する場を設ける
「成果を出せる人」が組織にいることと、「組織として安定した成果を出せる」ことは別の問題です。ナレッジを個人の頭の中に留めず言語化・共有することが、チーム全体の底上げにつながります。
取り組み3:商談同席・フィードバック・対面育成
新しくジョインしたメンバーや成果が出ていないメンバーへの育成は、「任せて待つ」ではなく「一緒にやる」という伴走型アプローチを採りました。
育成のための4つのアプローチ:
- 商談同席:実際の商談にリーダーが同席してその場でフィードバックを行う
- 架電の同行:一緒に架電しながら、リアルタイムでトークの改善を支援する
- フィードバックの実施:録音や記録をもとに、具体的な改善点を明示する
- 対面での業務:可能な限り対面で作業することで、細かな疑問や詰まりをその場で解消する
一人一人が能力を発揮できるチームのための2つのリーダーシップ
「チアリーダー」としてのリーダー像
リーダー就任当初に陥ったのが「自分でやろうとしてしまう」という状態でした。これを転換するために採用した考え方が「リーダーはチアリーダー」というスタンスです。
チアリーダーは自らフィールドで試合をするのではなく、選手が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を整え、チームを鼓舞する役割を担います。リーダーも同様に、「自分が最も動く人」ではなく「メンバーが最も動ける環境を作る人」として機能することが、チーム全体の生産性を上げます。
チアリーダー型リーダーシップの実践:
- 働きやすい環境の整備:メンバーが質問しやすい・相談しやすい関係性を意識的に作る
- 個人の強みを活かした役割配置:メンバーのタイプと強みに合わせた役割を設定し、得意領域で力を発揮できる状態を作る
- チームとしての一体感:目標を共有し、全員が「プロジェクトの数字」を自分ごととして捉える文化を作る
困ったら素直に助けを求める姿勢
リーダーが「一人で解決しようとする」と、解決のスピードが遅くなり、問題が大きくなってから発覚するリスクが上がります。「困ったら素直に助けを求める」という姿勢を、リーダー自身が持ち続けることが組織の健全性を保ちます。
自己学習(書籍・ウェブセミナー等)でリーダーシップと営業マネジメントの知識を補いながら、わからないことは素直に上位職に教えを乞うことで、知識のギャップを最短で埋めていきました。「腐らずにチャンスを掴みにいく・困ったら素直に助けを求める・今できることを全力でやり切る」という3つの行動原則が、突然のリーダー就任からの連続達成の土台です。
実践成果──年間受注数101%・1Q連続達成
某医療機関向けサービス営業プロジェクトでのチームとしての実践成果は以下の通りです(プロセルトラクション実績, 2024年度)。
年間成果:
- 2023年度受注数:年間目標805件 → 実績810件(達成率101%)
1Q成果(2024年1〜3月):
| 月 | 申込目標 | 申込実績 | 有効化目標 | 有効化実績 |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | 40件 | 59件 | 69件 | 86件 |
| 2月 | 40件 | 43件 | 83件 | 90件 |
| 3月 | 40件 | 41件 | 85件 | 67件 |
| 1Q累計有効医療機関数 | – | 753件 | 759件(100%) | |
Salesチーム・OBチームともに1Q連続達成を実現しました。「仕組みがなく個人差が大きい状態」から「チームとして安定して達成できる状態」への転換が、1Q内で実現しました。
よくある質問
突然リーダーに就任した場合、最初に何から取り組むべきですか?
まずチームとして追うべきKPIを設計し、メンバー全員に共有することが最優先です。目標数値がない状態では「何をどこまでやれば良いか」が曖昧になり、メンバーの行動がばらつきます。受注数・有効化数・申込獲得数など、チームの成果に直結する指標を定め、日次で確認・修正するサイクルを初週から回すことで、チームに方向性が生まれます。
チアリーダー型マネジメントと従来型マネジメントの違いは何ですか?
従来型マネジメントでは、リーダー自身が最もプレイヤーとして動き、メンバーに自分のやり方を指示するスタイルが多く見られます。チアリーダー型マネジメントでは、リーダーは「メンバーが最も動ける環境を作る人」として機能します。具体的には、質問しやすい関係性の構築・個人の強みに合わせた役割配置・チーム全体の目標共有を通じて、メンバー一人一人が自律的にパフォーマンスを発揮できる状態を設計します。
ナレッジ共有を仕組み化するためのポイントは何ですか?
ナレッジ共有を属人的な取り組みにしないためには、3つの手段を併用することが有効です。架電トーク・商談トークのスクリプト化、業務フロー・報告基準のマニュアル化、定期的なナレッジ共有ミーティングの実施です。特にスクリプト化では「どう話せばどうなるか」という因果関係を言語化することが重要で、単にトークを記録するだけでなく、成功パターンの再現性を高める設計にします。
まとめ──突然のリーダー就任でも連続達成する組織設計の原則
目標数値がない・仕組みがない状態からリーダーとして連続達成を実現するための実践手法をまとめます。
強いチームを作るための取り組み:
- チームKPIを設定し、日次確認・即日修正のサイクルを回す
- 成功事例・トーク・業務フローをスクリプト化・マニュアル化してナレッジを共有する
- 商談同席・架電同行・フィードバックで伴走型の育成を実践する
一人一人が能力を発揮できるチームを作るための取り組み:
- 「自分でやる」リーダーから「チームが動ける環境を作る」チアリーダー型に転換する
- 困ったら素直に助けを求め、自己学習と周囲への教えを乞う姿勢を維持する
- メンバーの強みと役割を明確にし、一体感のあるチーム文化を設計する
これらの設計を組み合わせることで、突然のリーダー就任からでもチームとして連続達成を実現できます。
この記事の執筆者
長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役
リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。100を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。







