最終更新: 2026年6月
ISリーダーの行動原則とは、インサイドセールスチームを率いるリーダーが実践すべき目標共有・率先垂範・チームワークの3つの基本行動を体系化したものです。
インサイドセールスチームのリーダーとマネージャーが混同しやすいのが、「マネジメント」と「リーダーシップ」の違いです。数字を管理することと、チームメンバーが自律的に動ける状態を作ることは、求められる行動が異なります。この2つを両立させることが、継続的に高い数字を出し続けるチームを作る鍵になります。KPI設計・仮説検証からPDCA実行まで一気通貫で支援する株式会社プロセルトラクションの2024年度ML部門年間MVP賞を受賞した担当者が、3年4か月の障害福祉施設向け業務支援SaaSプロジェクト在籍を通じて整理した、「目標&目的の共有」「率先垂範」「チームワーク」という3つのリーダー行動原則と、マネジメントとリーダーシップを両立させる視点を解説します(プロセルトラクション実績, 2024年度)。
この記事の目次
1. チームの数字が伸び悩む時、リーダーに何が足りないか
「管理している」だけではチームは動かない
チームの数字が低迷している状態を観察すると、リーダーが「管理」を行っている状態であることが多いです。数字を報告させる・進捗を追う・改善を指示するという行動は、マネジメントとして必要です。しかし、それだけではメンバーが「自ら動く理由」を持てないまま、指示待ちの状態が続きます。
リーダーに向けて問いかけるべき問いは3つです。
- 「メンバーは月次・週次・日次の目標と、その目標を達成する意味を共有できているか?」
- 「リーダー自身が、メンバーに見せるべき行動を率先してやっているか?」
- 「メンバーが相談しやすく、互いにサポートし合えるチームの環境を作れているか?」
これら3つの問いに対してすべて「はい」と答えられるリーダーは、マネジメントとリーダーシップの両方が機能している状態です。一方で、数字の管理だけに意識が向いているリーダーは、チームの数字が一時的に上がっても、継続的に成果を出し続ける環境にはなりにくいです。
2. リーダーの行動原則1:目標&目的の共有
「数字を追う」前に「なぜその数字を目指すか」を共有する
メンバーが目標に向かって自律的に動けない原因の一つが、「目標の数字は知っているが、なぜその数字が必要なのかを理解していない」状態です。
目標&目的の共有は、以下の3段階で設計します。
段階1:チーム定量確認・逆算
- 月次目標を確認し、週次・日次に分解して「今日何件獲得すれば月次に届くか」を常に逆算できる状態にします
- 「今週何件足りているか」を全員が把握しているチームは、自然に行動量と質の改善意識が生まれます
段階2:状況キャッチから課題感の抽出
- 月次・週次・日次の定量を追いながら、「数字がずれていると感じた時に何が原因か」をチームで共有します
- 「遅れている」という事実だけでなく「なぜ遅れているか」の課題感をリーダーがキャッチして引き出すことが重要です
段階3:メンバーとの課題・原因のすり合わせ
- メンバーが「自分の課題と原因」を報告した際に、リーダー側の認識とズレがある場合は、対話を通じてずれを修正します
- 「課題→原因→対策」という振り返りの構造をメンバーとリーダーが共通言語として持つことで、「指示する」から「一緒に考える」関係が生まれます
この3段階が機能すると、メンバーは「数字を言われたから追う」のではなく「自分のチームの目標を自分で管理する」状態に変わります。リーダーは管理業務が減り、より重要な判断に時間を使えるようになります。
3. リーダーの行動原則2:率先垂範
「率先垂範してますか?」──先頭に立ち、模範を示すこと
「率先垂範」の意味は「先頭に立ち、模範を示すこと」です。リーダーが口でメンバーに伝えることと、リーダー自身がやっていることが一致していなければ、メンバーはリーダーを信頼しません。
率先垂範には4つの要素があります。
要素1:信頼を得る──背中を見せる
- 困難な状況の時こそ、リーダー自身が先に打ち手を示します
- 「こうすれば突破できる」という実体験を自分の行動で証明することで、メンバーの信頼が生まれます
- 背中を見せることで初めてリーダーシップが発揮されます
要素2:手法・動機・方針の浸透──「だからやろう」を伝える
- 「○○をしてください」という指示ではなく、「実体験をもとに、○○をするとこのような効果がある。だからやろう」という形でメンバーに伝えます
- 動機を含めて伝えることで、メンバーが「なぜやるのか」を理解した上で行動できるようになります
要素3:自立を促す──メンバーが「+α」を生み出せる状態を作る
- リーダーが自身の打ち出した手法を実践した上で、「この手法を土台に、自分のやり方を加えてみてほしい」という形でメンバーの自立を促します
- 最終的にメンバーがリーダーの手法を超えていくことがチームの成長につながります
避けるべき3つのNG行動
- 何もしないで根拠のない指示を出す
- 干渉しすぎて自律の機会を奪う
- メンバーの状況を見ない・聞かない
率先垂範は「自分がやって見せる→なぜやるか伝える→メンバーに任せる」という順序で設計します。この順序を逆にすると、メンバーは「なぜやるのか分からないまま、やらされている」状態になり、自律的な改善が生まれません。
4. リーダーの行動原則3:チームワーク
「相談しやすい環境」がチームの底上げを加速する
数字が出ているメンバーと出ていないメンバーが混在するチームで、一人ひとりが黙々と架電している状態は、チームの成長が止まっている状態です。メンバーが「うまくいったこと・うまくいかなかったこと」を自然に共有できる環境が、チーム全体の改善速度を上げます。
チームワークを生む2つの行動を解説します。
メンバーサポートの積極化と風通しの良い環境整備
リーダーが積極的にメンバーの状況をキャッチし、困っているメンバーには先手でサポートする姿勢を示すことで、「相談していい環境」が生まれます。メンバーが「自分から声をかけなくても、リーダーが気づいてくれる」と感じることが、心理的安全性の土台になります。
相談しやすい環境の構築
「この質問は馬鹿にされないか」「弱みを見せていいのか」という心理的ハードルを下げることで、メンバーが早い段階で問題をオープンにできるようになります。問題の早期発見は、チームの改善速度を大幅に向上させます。
チームワークは「仲の良さ」ではなく「情報が流れる速度」で測ります。成功事例も失敗事例も自然に共有されるチームは、個人の経験をチーム全体の資産として活用できます。
5. マネジメントとリーダーシップを両立させる4つの視点
「管理する人」と「引っ張る人」の両方であること
ISリーダー・マネージャーに求められるのは、「マネジメント(管理・育成・環境整備)」と「リーダーシップ(目標共有・率先垂範・方向付け)」の両立です。
マネジメントが担う4つの視点:
| 視点 | マネジメントの役割 |
|---|---|
| 視点(着地点) | 数字の目標・育成の目標・チーム環境の目標を明確にして管理する |
| 業務 | 課題・原因・対策の把握。メンバーの振り返りを正確に認識し、ズレを修正する |
| チーム方向性 | リーダーとメンバーの目線が揃っているか・メンバーがリーダーを信頼しているか・チームビルディングを継続する |
| 注力 | メンバーのモチベーション管理とPDCAの継続 |
リーダーシップが担う4つの視点:
| 視点 | リーダーシップの役割 |
|---|---|
| 視点(方向) | 目標と目的をメンバーに共有し続ける |
| 業務 | 手本になる動き・自身の見え方の意識・率先垂範 |
| チーム方向性 | メンバーに道を示す・適切なコミュニケーションでメンバーの状況をつかむ |
| 注力 | 月→週→日の逆算での動き。数字の到達から逆算した今日の行動を常に考える |
マネジメントが「現状を正確に把握して管理する」役割を担い、リーダーシップが「チームが向かう方向を示して引っ張る」役割を担います。この2つが揃って初めてチームは動きます。
多くのISリーダーは、マネジメント側のスキル(KPI管理・進捗確認・1on1)は身につけていますが、リーダーシップ側のスキル(率先垂範・目的共有・方向付け)が不足しているケースが見られます。両方の視点を意識することで、「数字も出るし、メンバーも育つ」チームに変わります。
6. よくある質問
ISリーダーのマネジメントとリーダーシップの違いは何ですか?
マネジメントは「現状を正確に把握して管理する」役割です。KPI管理・進捗確認・課題の把握と対策の実行が該当します。一方、リーダーシップは「チームが向かう方向を示して引っ張る」役割です。目標と目的の共有・率先垂範・メンバーへの道の提示が該当します。両方がそろって初めて、継続的に高い成果を出すチームが作れます。
率先垂範とは具体的にどんな行動を指しますか?
率先垂範とは「先頭に立ち、模範を示すこと」です。具体的には、困難な状況でリーダー自身が先に打ち手を示し、実体験をもとに「だからやろう」と動機を含めてメンバーに伝え、その上でメンバーの自立を促す行動を指します。口だけの指示ではなく、リーダー自身の行動で証明することがポイントです。
目標共有で最初にやるべきことは何ですか?
最初にやるべきことは、月次目標を週次・日次に分解して「今日何件獲得すれば月次に届くか」を全員が逆算できる状態にすることです。数字の目標だけでなく「なぜその数字を目指すか」という目的をメンバーと対話で共有することで、自律的に動ける状態が生まれます。
チームワークを高めるために最も効果的な施策は何ですか?
最も効果的なのは「相談しやすい環境を先に作る」ことです。リーダーが積極的にメンバーの状況をキャッチし、困っているメンバーには先手でサポートする姿勢を示すことで、心理的ハードルが下がります。「この質問をしても大丈夫」という安心感が、問題の早期発見とチーム全体の改善速度向上につながります。
リーダー育成のNG行動にはどのようなものがありますか?
主なNG行動は3つです。1つ目は「何もしないで根拠のない指示を出す」こと。2つ目は「干渉しすぎて自律の機会を奪う」こと。3つ目は「メンバーの状況を見ない・聞かない」ことです。いずれもメンバーのリーダーへの信頼を損ない、チームの自律的な改善を妨げる行動です。
マネジメントとリーダーシップのどちらを先に身につけるべきですか?
多くのISリーダーはマネジメント側のスキル(KPI管理・進捗確認)から身につける傾向がありますが、リーダーシップ側(率先垂範・目的共有)が欠けたままではチームの自律性が育ちません。まず「目標&目的の共有」から始め、率先垂範でメンバーの信頼を得てから、チームワークの環境整備へと段階的に両方を強化することをおすすめします。
7. まとめ──ISリーダーが実践すべき3原則とマネジメント×リーダーシップの設計
インサイドセールスチームを継続的に高パフォーマンスで運営するためのリーダー行動原則をまとめます。
目標&目的の共有:
- 月次目標を週次・日次に逆算して、「今日何をすべきか」を全員が把握できる状態を作る
- 「数字の目標」だけでなく「なぜその数字を目指すか」をメンバーと対話で共有する
- 課題・原因のすり合わせを通じて、「指示する」から「一緒に考える」関係に変える
率先垂範:
- 困難な時ほど先に行動で示す。背中を見せることでリーダーへの信頼が生まれる
- 「実体験+だからやろう」という形で動機を含めた手法浸透を行う
- メンバーの自立を促すために、手法を教えた後は「+α」を生み出す余地を与える
チームワーク:
- メンバーが相談しやすい風通しの良い環境を先に作る
- 心理的ハードルを下げることで、問題の早期オープンとチームの改善速度向上につながる
マネジメント×リーダーシップの両立:
- マネジメント:数字・育成・環境の管理と課題原因対策の把握
- リーダーシップ:目標共有・率先垂範・チームへの道の提示と月→週→日の逆算行動
これらの3原則と両立設計を実践することで、「数字も出るし、メンバーも育つ」チームを構築できます。
この記事の執筆者
長谷川 裕樹(はせがわ ゆうき)
株式会社プロセルトラクション 代表取締役
リクルートにてSMB〜エンタープライズの新規開拓・ソリューション営業・マネジメント・営業企画を経験後、新規事業責任者としてBtoB新規事業横断セールス統括を歴任。複数事業のセールス・マーケティング組織およびCSチーム立ち上げを経て、2018年コムレイズ・インキュベート設立、2021年プロセルトラクション設立。200を超えるBtoB新規事業のセールス・マーケティング支援実績を持つ。







