限られた業務の時間をいかに効率的に使うか。直接的な営業活動の時間を増やすか。
働き方改革の流れもあり総労働時間が削減されるからこそ、成果を高めるめには業務のムダを省き、生産効率をあげなくてはなりません。とくに営業は「ムダの多い仕事」として認識され、多くの営業パーソンはが営業そのものの業務を行っているのは勤務時間の半分以下というデータがあります。言い換えれば、それだけ生産性の伸びしろが隠されているとも言えます。
この記事では、営業担当者が営業に集中し、より効率的に結果が出るためのマインドセットや業務改善方法を紹介します。
営業はなぜ効率が悪いのか
営業職は、働く時間の25.5%を「ムダ」であると回答し、年8,300億円もの経済損失につながっている。これは2019年にHubSpot Japanが行った調査結果です。
1日の勤務時間を8時間で計算すると、うち2時間を捨てていると働いている本人が自覚しているのですから、営業はそもそも効率の悪い仕事と言えるでしょう。また、さまざまな職種を通じても、これほど自身でムダが多いと感じている職種は営業のほかにないそうです。
営業職が具体的にムダだと感じる主な原因は次の3つです。
移動時間が長い
客先から客先への移動時間は他の職種にはない多さです。
Web会議の普及によって、訪問営業は減少しましたが、「とりあえずすぐ来て」という既存客もまだまだいるはずです。移動時間にもメール返信や打合せの準備などに活用はするものの能率は落ちます。
片道1時間以上かけた新規営業なのに反応が悪く10分で商談終了などの徒労感はムダそのものです。
成功率の低い営業手法が多い
飛び込み営業やテレアポを営業社員に行わせている企業もまだまだあります。新規顧客開拓に時間がかかるのは確かですが、闇雲に電話帳を上から順にかけるようなやり方は効率が悪すぎます。
逆に営業効率の高い手法を組み合わせ、受注見込みの高い商談に時間を使えれば売上も伸びるでしょう。
営業以外の事務や会議が多い
営業自らが行わなくてもよい、分業できる仕事で時間を失うことが多くあります。たとえば見積書や請求書の発行、納品業務、顧客データの入力、簡単な電話対応などでしょう。
さらに、追い打ちをかけるのが過剰な社内会議。単純な営業数字だけを報告するだけの目的で、しかも営業日報を提出しているのに「慣習で会議招集」など、現場にムダを感じさせていたら要注意です。
営業効率化の重要性
働き方改革で総労働時間の抑制は、すでに待ったなしの状態です。リモートワークが増える中、管理ばかりを重視していてはますます実業務時間は減ってしまいます。
今こそ売上アップに直結するための直接的営業時間の確保が重要と感じる企業も多いのではないでしょうか。営業時間を創出できれば、次のような好循環が生まれます。
- 既存顧客との対話、フォローができ売上アップ
- 新規開拓の商談件数が増えて売上アップ
- 現場のモチベーションが向上してさらに売上アップ
効率的な職場は、営業パーソンの離職率の低下にもなり、採用も優位になる可能性があるでしょう。これまで長時間労働や体力でカバーしてきた職場こそ、業務改善と効率化による大幅な生産性向上が見込めるとも言えます。
あるある…こんな場面で起きている営業職のムダ
ひとつひとつは小さな事象でも、積もり積もって大きなムダを生んでいる可能性があります。
思い切って古い慣習から脱却した組織ほど、効率化を実現している傾向にあり、ムダを続ける組織との業績の差はどんどん広がるかもしれません。
結論の出ない会議
結論の得られない営業会議はないでしょうか。
「個人の月間の営業目標が達成できそうか」見通しを報告する会議が月半ばころから定期的に開かれる組織も多いはず。達成済み、達成が確実な人にはあまり得るものはなく、見通しの厳しいメンバーも報告する時間よりも、1件でも多く商談を行ったほうがいいかもしれません。
有効な策が出るならともかく「月末までみんなでしっかりがんばろう」という言葉をかけるなら、何も集まる必要はありません。形式にしばられた時間のもったいないルーティンです。
その都度メールする時間、チャットでいいのでは
打合せの日程調整など、調整ツールを使えば煩わしいやり取りがなくなります。
しかし「メールで確認しないのは失礼だから」「チャットはビジネスにふさわしくないから」などの理由で、ムダなメール送信が余計に発生します。
「お世話になっております。xxです。日程承知しました。当日は宜しくお願いします」という返信や、さらに「了解」を打つための手間暇は必要でしょうか。ボタン選択だけで済むはずなのに、メールを使うことで送る方も送られた方も文章を書く時間を奪われているのです。
まとまった数の名刺入力、メール送信
集中的に見込み客を訪問した後、展示会やセミナーの後には手元に大量の交換した名刺が残ります。
エクセルに入力してもらうつもりが事務スタッフの手がふさがっているので、やむなく自分で半日仕事。さらには、お礼のメールを1通ずつ手作業で個別に送付したら1日が終わります。
翌日、ようやく営業活動をスタートするときは確度の高い見込み客にしぼってアプローチすべきです。しかしどれが優先的な案件か判別できないままであれば、隠れていた見込客は、アクションの速かった競合他社と契約してしまうかもしれません。
電話やメールで済むのに「来て」と言われ訪問
極力、電話やWeb会議システムで、打合せを済ませようという流れは多くの企業にあるはずです。しかし、まだ年配の方を中心に、直接顔を合わせてから用件を伝えるケースもあります。顧客に「できれば直接お会いしたい」と言われれば、「Zoomではだめですか」とは聞きづらいもの。
しかし、「訪問してみたら電話でも十分済む内容だった」場合も少なくないため、時間ロスにつながってしまいます。
慣れたころにまた新システム導入
ITシステムが比較的頻繁に更新されてしまうケースがあります。
たとえば請求書発行システム。経費精算システム、営業支援システムなど業務効率化のための新規導入やリプレイスは早ければ数年に一度行われます。使いこなせれば時間短縮につながる場合もありますし、覚えなければ仕事にならないこともあるでしょう。
しかし、がんばって習得して、慣れてきたころには次のシステムに移行してしまい再び勉強し直し。いったいなんのための効率化だったのかということもよくある話です。
営業効率化のためのステップ
ムダが多いことに気づいたら、効率化に向けて動き出せます。
ただし、何がムダになっているのかを個人差があるので、それぞれあぶり出す必要があります。ムダを減らせれば、業績が上がり給料も増える、自由時間が増えるなど、「未来」のイメージを共有して、組織全体で取り組む姿勢が重要です。
現状業務の棚卸しを行う
まず個々の営業パーソンが、1週間単位、1か月単位で使っている時間を洗い出しましょう。
営業以外の業務に取られている時間が長いのなら、仕組みから変えなくてはなりません。若手が託されやすい細々とした仕事も、チリ積もって山となります。ムダな会議などを1つ減らせば、参加予定だったすべての営業パーソンに恩恵があります。
また一時的な業務、本質的な仕事は、削減対象に入れるべきではありません。減らしたとしてもあまり効果がない、もしくは減らしたら営業成績に悪影響を与える可能性があるからです。
たとえば「営業リスト作成」は、作るまでは時間がかかるものの一度作ってしまえば、数か月から1年程度、営業先開拓のための重要な資源になります。ムダな業務と思わずに、質の高いリスト作りに取り組めば、作り直しのムダもなくなるはずです。
優先度で業務を3つに分類する
棚卸しした結果見えてきた業務は3つに分類しましょう。「すぐやるべきこと」「可能ならやりたいこと」「やらなくてもいいことに分類する」の3つです。
例題:次のような業務があったら
- 「マーケティング部から依頼されたメルマガの原稿が5種類。多すぎる」
- 「部長がオフィスにいる時間にハンコをもらうため訪問件数が減った」
- 「過去に集めた名刺をから手作業で営業リストを作っている」
- 「Webを改善して、コンバージョンを増やしたい。でも3か月前から着手できない」
- 「アポが取れない。相当な件数にアプローチしているのに」
- 「毎週の営業進捗の社内会議のため、数字の整理を正確にしなくては」
- 「『導入してよかった』という既存客の声を集めたが営業ツールにする手が足りない」
これらを3種類に分類します。何が正解かは置かれている状況によって変わるため、あくまで分け方の見本として参考にしてください。
<解答例>
すぐやるべき…………5、7
可能なら ………………1、4
やらなくてもいい ……2、3、6
事例解説:分け方のコツ
たとえば「5=アポが取れない」ままでは放置できません。リストや、アプローチ方法を直ちに変える必要があります。アポ取りのロープレで改善するかもしれません。
また「7=新たなセールス資料の作成」は、新規営業の成約率向上が見込めるので優先度が高いでしょう。人手が足りないなら、マネージャに相談して一時的にヘルプをアサインしてもらうべきです。
「可能なら」「やらなくてもいい」の削減は躊躇や反対意見もあるはず。しかし新規営業の時間を確保し、売上を伸ばすためには、目的に直結していないことを捨てるのは本質的に重要です。
「3=手作業でリストを作っている」を「やらなくてもいい」に分類したのは、必ずしも本人でやる必要がない、もっと効率的な方法があるからです。営業リストは絶対的に必要なものですが、営業が手作りすれば売れるわけではありません。典型的な「やり方を変えて効率化すべき」事例です。
決めたことを実行に移す
変革する、削減すると決めた内容を実行に移さなくては意味がありません。
忙しさに追われてしまう前に、自分が決めた新たな期日を手帳に落し込みましょう。この段階で書き留めておかないものは、ほぼまちがいなく忘れ去られます。大きな課題なら半年、1年先の期日でもかまいません。行動に起こすためにも、記録しておくことを強くおすすめします。
上述の「アポが取れなくて困っている」ならば、すぐにロープレの日付を落とし込み、実行するのです。
営業効率化の手法
営業に直結する活動にも、効率化の方法がさまざま開発されています。営業に使える時間が増えたら、ぜひ営業活動の中身にもメスを入れてさらなる効率アップを実現しましょう。
営業準備の効率化
営業支援システム(SFA)の導入は即効性があります。
顧客が多くなってきたら、エクセルなどで管理されていたものを、そろそろシステム化したいところです。顧客管理を一元化、統一化することで「顧客に前回誰がアプローチしたか」なども一目で分かります。マネージャが数字の管理、予測を行うのにも便利で、日報提出の手間も軽減されます。
見込み客の確度(濃さ)もタイムリーに把握でき、見込み度の低い方とのやりとりに時間がかかることを防ぐことにもなります。
オンライン商談の徹底
コロナ以降にWeb会議、オンライン商談が急速に浸透しました。そのため多くの営業パーソンが移動時間のムダを減らし、恩恵を受けているでしょう。
しかし、相手が訪問を望む場合や、高額商材などで訪問により大きく成果が変わる場合もあるので、大切なのは使い分け。「移動に1時間以上かかる場合は原則すべてオンライン」など、ガイドラインを定めるのも有効です。
アポ獲得や顧客管理の外部委託
効果的に外部のパワーを活用しましょう。
「人手を増やしてくれ」と多くの営業が声を上げてもなかなか実現しませんが、外部委託なら変動費なので承認のハードルは低いのではないでしょうか。見込み客へのテレアポ、MAツールの活用による顧客分析などは外部のプロに任せ、自社の営業担当が直接的な業務に専念する環境を整えられます。
事務作業の電子化、簡素化
たとえば契約書は、電子契約に置き換えれば一気に効率化が進みます。
客先に契約書にハンコを押してもらい郵送してもらう。受け取ったら、今度は上司のハンコをもらって、返送する。そのために在宅勤務中の上司の出社日を確認して…などはムダの極みながら、実際に起きている話です。
またビジネスチャット、SMS活用も組織によって活用度に大きく差がついているのが実態。10年前はIT業界ならではのものでしたが、SlackやChatWorkで社外とコミュニケーションを取るのが当然と考える層は広がっています。
「オンライン商談を依頼するのは相手に失礼」の考えはコロナ禍以降にほぼなくなったでしょう。同様に、「便利さ」が市民権を得るには少し時間がかかりますが、簡素化する意識は常にもっておきましょう。
効率化の先に顧客との対話時間は増える
今一度、忘れてはならないのは「なんのために営業業務を効率化するか」です。
一つの答えは営業社員が、最も根幹である顧客とのコミュニケーションや、顧客の課題解決に時間を割くためです。そのことで組織としての売上も伸びていくでしょう。
裏を返せば、移動時間がかかり、訪問が非効率でも顧客とのコミュニケーションを優先すべきときもあります。それほどに「顧客第一主義」は重要だという指摘もあります。
「削減ありき」「効率化がすべて」ではありません。その先にある「より売れる営業組織になる」ことを共通の目標として、改革を進めるとよいのではないでしょうか。
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